AMPZILLA 2000SE SECOND EDITION  新型 アンプジラ2000 SON OF AMPZILLA 音質 比較 評価

AMPZILLA TOP      Amozilla 2000

「巨人」、「復活」からセカンドエディションへ!

独特の音調で外観の無骨さを物ともしない人気を誇った、Ampzilla 2000がマイナーチェンジしセカンドエディション(Second Edition)へと進化を遂げました。

逸品館では、いち早く3号館に設置している「Ampzilla 2000」とエレクトリから「試聴機」として届いた「Ampzilla 2000 Second Edition」の比較を実施しました。

ampzilla 2000 SE 主な仕様 (太字は、新型での変更点)

■定格出力:Mono 300W(8Ω/20Hz〜20kHz)、500W(4Ω/20Hz〜20kHz)
■入力インピーダンス/感度:1V R.M.S.(50kΩ/300W/8ΩBalanced),±1V R.M.S.(±70kΩ/300W/8ΩUnbalanced)、バランス/アンバランス入力切替スイッチ付属
■周波数特性:8Ω/20Hz〜20kHz(±0.2dB以内)4Ω/20Hz〜20kHz(±0.3dB以内)
■定格出力帯域幅:20〜20kHz
■SN比(A加重):−130dB以下(フルパワー/ショートインプット時)
■全高調波歪率/混変調歪率:0.05%以下(4〜16Ω/20Hz〜20kHz)
■ダンピングファクター:250以上(20Hz)
■電源:100V(50/60Hz)、10A(UL/CSA規格)
■プロテクション:サーキットブレーカー付パワースイッチ、インジケータ付4DCパワーサプライフューズ、ピーククリップインジケータLED、サーマルLED
■シャーシ:#14ゲージスチール、パウダーコート仕上
■外形寸法:267W×206H×400Dmm
■重量:24.1kg
■価格:1,500,000円(2台1組)(税別)

(説明文、主な仕様はエレクトリホームページより抜粋)

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新型と旧型の違い

S.S.T. INC.が発売するAMPZILLA 2000のSecond Editionの試聴機がエレクトリから届いた。

フロントパネルはヘヤーラインにブラックアルマイト仕上げが施され、ゴールドだったマークもシルバーに変更されている。見た目は、断然シックになり高級感が増している(ブルーパネルモデルとの比較ならそうだが、3号館にある特注のブラックパネル+ゴールドロゴはそれなりに格好が良い)。 フロントパネル(左が新型)

フロントパネルは、ザラザラした黒い塗装仕上げからヘヤーラインのブラックアルマイトへと変更されている。

 フロントパネルの仕上げ(左が新型)

放熱フィンは僅かに厚みが増し、角がもやや丸くなっている。

 放熱フィン(左が新型)

スピーカー端子は大型化され、Bi-Wireに対応するため2系統出力へと追加されている。

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電源ケーブルの太さは変わらず、絶縁体が艶ありからつや消しへと変わっているが同じ物のようである。電源ケーブルが直出しのままで交換できないのは変わらない。だたし、長さが1.2mから1.8mへと延長された。

 電源ケーブルとスピーカー端子(左が新型)

音質比較

試聴テスト

プリアンプ SST Ambrosia

CDプレーヤー EMT 986(新型)

スピーカー Zingali 1.12

新型(Second Edition)を試聴する前に、現在展示中のAmpzilla 2000を今一度じっくりと聞いてみることにした。

Ampzilla 2000 + Ambrosia 2000 の魅力は、弾力のある暖かい音質である。その音は、HiFiを目差す最新パワーアンプののトレンドと180度対極に位置している。3号館では、その音質を生かすために最新のHiFiケーブルを接続に使わず、比較的中庸な音質のケーブルをわざわざ使っている。

このセットで聞けば、CDがほとんどレコードに近い滑らかで暖かく、厚みのある音で楽しめる。音の細やかさはほどほどで、神経質なほど解像度は高くない。定位も目に見えるようなシャープさはないが、あるべき音があるべき空間から出てくる。音の広がり(音場の立体感)と音色の鮮やかさ、そして音楽の運動(躍動)がきちんと再現され、音楽に命が吹き込まれる。

そういう有機的なAmpzilla2000+Ambrosia2000の音質が、スピーカーにZingali 1.12、CDプレーヤーにEMT 986MK2を使うことで最大に引き出される。このセットで聞く音楽は本当に素晴らしい!

試聴は、3枚のディスクを使って行った。

ON THE BEACH

CHRIS REA

MAGNET / VDP-1119

国内盤CD

1986年にリリースされたかなり古い音源のPOPS。

この時代のPOPSは今ほど録音は良くないが、聞き込めば味がある。そういう「味わい」をどれだけ引き出せるか?

音ではなく音楽表現能力のチェックに選んだ。

Waltz For Debby

Bill Evans Trio

Victor / vicj-23517

国内盤CD

ビルエバンスと言えば、ワルツフォーデビィが出てくるくらい有名な一枚だが、私はこのソフトが好きになれない。ライブ盤と言われているが、そこにライブの生々しさはなく、編集によって作り上げられた架空の世界しか感じられないからだ。編集によって破壊された音楽が、装置で蘇るか?聞きたい。

BARTOK

Concerto For Orchestra

DUTOIT ・ MONTREAL

DECCA / 321-443-2

輸入盤CD

1988年にリリースされた、これもかなり古いクラシック(交響曲)。

初期のデジタル録音では、音色が単調になる、高音が硬いなどPOPS同様に今ほどは録音が良くない。音質にかかわらず、音楽の本質を再現できるか?新旧の違いを聞くために選んだ。

 

【On The Beach : Ampzilla 2000】

この時代のPOPSはデジタルがまだ発達する以前に作られているから、マスターもおそらくアナログだろう。エイティーズ時代の代表的なアーチストと言えば、スティービー・ワンダーやボズ・スキャッグスなども大好きで、それらはみな国内盤だけれどレコードを所有している。同時代の日本のPOPSでは、初期の山下達郎や桑名雅博などのレコードも持っている。しかし、聞いているのはもっぱら“便利なCD”だ。

この時代のPOPSは、シンプルで聞きやすい。音源も少なめだが、アナログらしいトゲトゲしさのない滑らかさと、ワイドレンジになりすぎない分厚い中域の厚みと、低域の弾力感が特徴に感じられる。ビンテッジサウンドらしい、「ゆとり」や「ため」が腹に響くようなサウンドに仕上げられている。

Ampzilla 2000は、グリスレアのドスの利いた声、ヴィンテッジの太いエレキの音が心地よく響かせる。独特の「美味しい余韻感」も“この組合せならでは”だ。

仕事をしながら聞いていても自然に耳に入り、体が軽くなるような、これからの季節にふさわしい「夏」を感じさせる音でクリスレアが鳴った。

【Waltz For Debby : Ampzilla 2000】

ビル・エバンスの中では最も著名で一番売れたアルバムがこの「ワルツ・フォー・デビー」ではないだろうか?しかし、シビアなシステムで聴くとこのソフトは「編集」で捏造されたものに感じられる。拍手の音やテーブルを転がるコインの音、食器が触れる金属的な音、それれはすべて「後付」で付け加えられた「わざとらしい音」に聞こえるからだ。ライブ録音とされている割には、各々の楽器の音にまとまりがなく、てんでバラバラに演奏しているように聞こえてしまう。

実際の演奏では、他の奏者の音を聞きながら「音がかぶらないように」慎重に音を選ぶ。しかし、マルチマイクで収録した音をミキシングしたり、スタジオの別ブースや異なる時間軸で行われた演奏を「編集でくっつける」と、演奏にまとまりがなくなり、そういうバラバラの音に聞こえてしまうのだ。

最近の多くのジャズもそうであるが、楽器一台に一つのマイクを使いそれぞれを別な空間、もしくは別なスタジオで収録し、マスタリング時に「混ぜる」という作業を行うと、このような問題が必ず生じる。

なぜそのようなことをするのか?それは「コスト」の為に他ならない。

楽団を同じスタジオ(ホール)に集合させ、行われた演奏を少ないマイクで収録すると(ライブは、当然そのように収録されることが多い)「場の雰囲気」が非常に濃厚に再現されるソフトに仕上がる。しかし、間違いが許されるライブならまだしも、スタジオでの演奏に「ミス」は許されない。

残念ながら多くの聴衆は(ソフトを買う人達)は、演奏の良さよりもそう言う「些細な傷」に耳を奪われ「その演奏(ソフト)は悪い」という誤った烙印を押してしまう。残念なことに「レコード評論家」ですら、その程度の見識しか持たない人達が多く始末に困る(オーディオ評論家も同じレベル)。従って演奏の一体感が破壊されたとしても、「完成品」には「傷がない」ことが何よりも優先される。

一人のミス(傷)のため、全員が最初から延々と演奏をやり直す続けることは、莫大な費用が掛かる。それを避けるために、可能な限り各々の楽器の音だけを収録し、ミスや問題が見つかれば「問題の音だけを編集で差し替える方法」で今のソフトは作られている。結果として、演奏の持つ「流れや雰囲気」は破壊されてしまう。異論はあるだろうが、これは動かすことの出来ない事実である。

Ampzilla 2000 + Ambrosia 2000がすごいのは、そんな「編集されたソフト」にも関わらず、まるで「生演奏を聴いているような雰囲気」で再現してしまうところにある。

確かに、一つ一つの音だけを分析的に聞いてみれば、生の音とは少なからず相違点があるし(アタックの鮮鋭度が薄く、高調波成分が明らかに少ない)、最新HiFiアンプに比べると「解像度」も低い。しかし、それがどうしたというのだ!?目の前で鳴っている「音楽」は、私が「そう言う音で聞きたい」と願うそのものであるし、存在するはずのない「演奏の一体感」や「場の雰囲気の濃さ」まで見事に再現される。それらはすべて、Ampzilla 2000 + Ambrosia 2000が作り出した幻なのだが、そういう「不自然さ」は全く感じられない!

命のない音楽に後を吹き込む力。音楽に生命力を与える力。それが鬼才ボンジョルノがAmpzilla 2000 + Ambrosia 2000に与えたかけがえのない能力なのだ。最新製品には“絶対にない”その素晴らしさを、このソフトを聞いて再認識することが出来た。

【BARTOK : Ampzilla 2000】

シャルル・デュトワが振るモントリオール・オーケストラからは、透明で理知的な音が出る。その曖昧さのない音は、バルトークのような「温度感の低い音楽」と融合すると、時として「氷のように冷たく」感じられることがある。今回は、「Ampzilla 2000 + Ambrosia 2000」の持ち味を確かめるため、あえてこの難しいソフトを選んでみた。

実際に生で交響曲を聴いたことがある方ならご存じだと思うが、生演奏の音はCDのそれと比べても細やかではないし、音にも濁りが感じられる。良い意味では、その濁りが「空気感」として好意的に受け取れる。ミネラル分が水をまろやかにし、料理の旨みを引き出すのと似ている。

多くのオーディオセットで聞くこのソフトは、緊張し張り詰めた空気の中で難解なバルトークが理知的に演奏されているように感じられる。しかし、Ampzilla 2000 + Ambrosia 2000でそれを聞くと、最高のコンサートホールのS席に座り、目を閉じてリラックスしながら演奏に身を委ねているように聞ける。

バルトークが理知的なだけではなく、静かで深い優しさや温かさで満ち溢れているのが聞こえてくる。軟らかく、空気感に満ち、楽器の音色が鮮やかで、本当に最高の生演奏を聴いている雰囲気に近い。もう、オーディオ的なことは全くどうでも良くなってしまう。目の前で鳴っているのは「音楽」そのもので、それ以上でもそれ以下でもない。

子供のための音楽教則本「ミクロ・コスモス」を書き残し、音楽(音学)を心の底から愛したベラ・バルトークの情熱が聞こえてくる。このソフトをこんな情熱的な音で聞かせてくれるのは、世界広しといえどもこのセット以外にはない。ジャンルを問わず、このセットで「鳴らせない音楽はない」と確信するほど素晴らしい音だった。

【On The Beach : Ampzilla 2000 Second Edition】

届いた試聴機を冷えた状態で音出しして聞いてみた。今まで聞いていた音とは明らかに違うシャープな音に戸惑った。この段階の音は、一般的によくある解像度が高いけれとあっさりとした硬い音。この音は、私が惚れたAmpzillaの音ではない。どこにでもありがちな高級パワーアンプの音だ。そこから約1時間ほどのウォーミングアップを行うと、音は若干柔らかさと深みを増した。しかし、それでも私が欲しい音ではなかった。

3号館に設置しているAmpzilla 2000は常に通電したままにしてあるので、その違いも相当あるはずだからとにかく届けられた“新型”を「一晩」ウォーミングアップすることにした。

翌日、気持ちを新たにして試聴を開始する。

するとどうだろう?Ampzillaらしい有機的な広がりと、中低域の厚みは昨日とは比べものにならない。試聴機がこれまで、どれくらい通電されていたかは定かではないが、ウォーミングアップ前後での音の差はかなり大きい。

低音もスッキリとしているし、高音も綺麗に伸びている。金属の澄み切った音がより際立っている。しかし、私が好きなAmpzilla 2000よりも、Second Editionは全体的に音があっさりしている。独特の音の厚みは少し後退した。ボーカルもネットリとし、行き過ぎたまでの「分厚さ」は薄められてかなり“普通の音”に近づいた。

ギターの音も澄み切って美しいが、ヴィンテッジらしい「濁りと厚み」は、薄くなる。私の好みを言わせてもらうなら、現在の組合せとのマッチングを考えれば、Second Editionよりも初代オリジナルのサウンドよりしっくりとくる。

それでも、他メーカーのアンプにはない、Ampzilla独自の世界は残っているし、今の組合せのスピーカーケーブルや電源系、ラインケーブルは初代Ampzillaの良さを引き出すために選んだものだから、Second Editionの持ち味を生かすためには、少しセッティングを変えた方が良さそうだ。

【Waltz For Debby : Ampzilla 2000 Second Edition】

この曲で初代とSEを聞き比べた印象も、クリスレアで感じたものとほぼ同じで一つ一つの音はハッキリとし、シンバルの音も鮮明になったが、曲全体のまとまりや雰囲気の濃さは、薄くなっている。

楽器の音色はより美しく、繊細な部分までハッキリと描かれるのだが、そこからのプラスアルファが少なく、良い音から先に踏み込んで行こうとすると、平常心に引き戻されるような、少し覚めた感覚の音になっている。

ここでAmbrosia 2000とAmpzilla 2000 SEの接続をバランスからRCAに変更する。

多くの場合バランス接続が音質的に有利であると考えられているが、私はそうは思わない。アンバランスの方が多くの場合、透明度が高く前後左右方向への音の広がりにも優れていると感じることが多いからだ。

ただし、Ambrosia2000とAmpzilla 2000接続は、例外的にバランスで行っている。なぜなら、バランスとアンバランスで比較試聴を行った結果、音質にほとんど差が感じられなかったからだ。

SEは違うかも知れないと考え、少しでも音質を私の好みに近づけようと接続をRCAに変更した。

音はかなりAmpzilla 2000に近づいたが、それでも音が出た瞬間に体ごと持って行かれるような、何とも言えない濃密さは薄まり、良い意味でも悪い意味でも「現代的」な音に近づいたようだ。

【BARTOK : Ampzilla 2000 Second Edition】

接続をRCAのままにしてデュトワを聞く。

前後・左右の方向への音の広がりが薄くなっているのが聞き取れる。音場は広がってはいるのだが、音の密度がやや薄く、多くのコンポで聞く標準的な音場に近くなっている。

ティンパニーの低音、管楽器の音、弦楽器の音は、克明さを増し「鑑賞に値する音質」へと明らかなグレードアップを遂げている。しかし、その演奏からは「バルトークの冷たさ」や「理知的なイメージ」が強く感じられ2000が持っていた「南国的な陽気さ」は薄まっている。

しかし、演奏が進むにつれてSEでしか感じ取れない「深さ」が聞き取れるようになる。本物の生演奏の「雰囲気」に近いのは、間違いなくSEの音だ。クリスレアやビル・エバンスでは、演奏やソフトの録音状況がSEの持つ高い性能を生かせるまでに達していなかったのだろう。それは疑いようのない事実である。

私がAmpzilla 2000とSEの比較にそれらのソフトを使った意図は、まさにそこにある。音楽的に不十分なソフト、録音が未熟なソフトでも「どれくらい音楽的に聞かせてくれるか?」、それこそが新旧でチェックしたかったポイントであるからだ。

新型のSEは、高性能なパワーアンプだ。音は良いし、解像度も高い。トランジスターアンプらしい高性能アンプである。それに対し、Ampzilla 2000は、音に濁りが感じられ解像度も低い。しかし、まるで真空管アンプのように「音楽的な味わいを色濃く」付け加えてくれる。新型になってその部分は音質の向上とトレードで薄くなっている。

デュトワに関しては、新型のSEで聞けるのが、本物に近いだろう。聴衆に媚びた、優しく分かりやすくノリの良い演奏ではなく、凛とした気品の高さを感じる演奏と、一糸乱れぬオーケストラレーションの美しさ。それこそが完成された「交響曲」だけが持つ、至高の味わいである。しかし、それとトレード的にSEは、クリスレアやビル・エバンスは、ソフトの至らなさを露わにしてしまった。

ポップな味が濃い旧型か、より本格的に音楽を鳴らす新型か?悩ましい選択だと思う。可能であれば、旧型の満ち味を完全に残したままソフィスケイトされれば申し分はなかったのだが、それは叶わなかった。とは言え、新旧の差は絶望的にまで大きいものではないから、今後の鳴らし込み(エイジング)や電源タップ、接続ケーブルなどの工夫によって充分に吸収可能だと思われる。もちろん。今なら!お買得な旧型も選んでご購入頂ける。

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2009年7月 清原 裕介