オーディオ・メーカーや雑誌、ちょっとデジタルをかじった技術者は、「ジッター」が音質を損ねる原因だと考えている。ジッターを減らし音質を改善する目的で、内部の水晶発振子を高精度な製品に置き換えたり、「外部から良質なワードクロック」を導入するというテクニックが高級オーディオ機器には、こぞって採用されている。
しかし、それらでは「音は変わる」が根本的な好音質は得られないと私は考えているし、実際の実験でもそう言う結果が得られている。問題なのは「ジッター」ではなく、「ワードクロック発信に伴うノイズの発生」である。クロック発信回路に手を加え、ノイズの発生を抑えるとデジタル機器の音質は飛躍的に改善する。必要なコストは、高性能クロックや外部クロックを使う場合の1/100〜1/1000にしか過ぎない。まあ、私の意見はともかくとしてデジタルがオーディオに使われてずいぶん経つが、未だに「ジッタ−=悪者」とされているのは紛れもない事実である。
今回テストするHDMI接続では、その悪者ジッターは原理的に発生しない。HDMIやLANのように、PC間でデーターをやり取りするために作られた接続の規格では、データー通信は双方向で行われ「データーが確実に受け側に送られたのを、送り側が確認してから次のデーターを送る」ためデーターエラー(データーの欠落)も発生しない。つまり「理論上」は、送り側機と受け側機で音質と画質の差は生じないというのが「結論」である。しかし、現実にはケーブルで音も絵も変わる。それが「結果」である。
従来、私はHDMIはSP/DIF(通常の同軸接続)デジタルよりも音が悪いと説明してきた。しかし、エラーが発生しても訂正されることがなく、ゲーブルでシステムクロック(基準クロック信号)まで伝送するSP-DIF方式がHDMIよりも音が悪いのは、この説明からも絶対に納得できないことだ。それにもかかわらず、現実にはケーブルによって音が変わる。それはどういう事だろう?
すでに、過去のページでそれについての考察を述べているが、私がHDMIやLANケーブルで音が変わる原因と考えているのが「ケーブル内でのクロックの干渉によるノイズの発生」である。ケーブルが軟らかければ軟らかいほど、シールド性能が不十分であればあるほど、この「干渉ノイズ」は大きくなる。しかし、干渉で発生するノイズ(ビートノイズ)の周波数帯域は広く、HDMI入力基盤に施されている「高周波ノイズ対策」では、このビートノイズを充分に遮断できない。そのため、接続するHDMIケーブルが「ノイズ発生器」となって、アンプの音を損ねていると考える。事実、PC間のデジタル・データー転送のみでは、ケーブルによる音質差はそれほど大きいものではない。デジタルがアナログに変換されるAVアンプ(ディスプレイも同様)などでケーブルによる音質・画質の差が顕著になる傾向からも、この考察の正しさが裏付けられると考えている。
今回ケーブルを持参されたAIM電子の技術者にこの話をすると、彼は大変驚きケーブルで発生する干渉ノイズ(ビートノイズ)を実際に測定し、そのデーターを公開しているのは「NTT」だけだと内輪話を打ち明けてくれた。当然、AIM電子でもこのビートノイズの減少に留意し、新型ケーブルを設計したと言うことであるから、その性能には期待が持てる。
目下大好評のWireworldも、ケーブルの形状や使用されるマテリアルから判断して、すでにその部分に着目しているのだろうと想像する。また彼らのノウハウが正しいからこそ、的確に価格とケーブルの性能をマッチさせられるのだろう。
その点では、Audioquestは、若干の後れを取っているように思う。彼らが使う「丸型」のケーブルは、ビートノイズの点でフラット型よりも不利だからだ。しかし、「丸型」には丸型ならではの利点がある。それは、音が自然だと言うことだ。
各信号線が均等に隣接する丸型ケーブルに対し、フラットケーブルは隣接する信号線が固定される。そのため「構造固有のノイズ」が発生しやすいと考えられる。ノイズの総量は小さいが、個性的なノイズを発生しやすいのがフラット型と考える(前にも同じ事を書いている)。各々の信号線がきちんとシールドされ、ケーブルが変形しても信号線の形状に変化がない(信号線のインピーダンスが一定)。それが私が考える理想のHDMIケーブルである。
AIM電子のReference(R)Seriesは、導体に純銀を用い主要な信号線を個別にシールドしている。普及モデルの(FLS)Seriesでは、純銀めっきした導体を採用している点が違うが、強固なシールド構造は同じである。エントリーモデルだけが、高品位な通常のフラット型HDMIケーブルである。この構造と考え方は、Wireworldに非常に近いが、彼らはターゲットとしてWireworldのトップモデルSSH5-2を選んだと公言しているから、それを徹底的に研究したことは明らかだ。果たして性能はどうだろう?

音質テスト
◆DVDプレーヤー marantz BD8002 (生産完了モデル)

◆アンプ AIRBOW AV8003/Special + MM8003/Special

◆スピーカー Sonus
Faber Grand Piano Domus

テストソースには、リンダロンシュタットの「For Sentimental
Reasons」のCDを使った。またスピーカーにはすでに生産完了となった、Sonus
FaberのGrand Piano
Domusを使ったが、これは特価となったために最近このスピーカーに関する問い合わせや試聴が急に増えたためである。また、AIRBOWの波動ツィーター CLT-Theaterの有る無しによる音質テストも同時に行っている。
Wireworld
SHH5-2 (CLT-Theaterなし)
アンプとプレーヤーは6時間以上ウォーミングアップし、準備は万端だ。一聴して感じられるのは、高域の透明度の高さ。音場の見通しに優れ、個々の音が混じらない。空間は前後左右に大きく広がり、2本のスピーカーでもサラウンド的な音の広がりが充分に得られる。
Wireworld
SHH5-2 (CLT-Theaterあり)
出だしのフルートの「繊細さ」と「明瞭度」が大きく向上する。管の中を通過する空気の音まで分離して聞き取れるほどだ。リンダロンシュタットのボーカルの透明感は一層際立ち、細部のデリケートさまで余すことなく再現される。ピアノの音、オーケストラの弦楽器の音、ドラムの音が細部まで完全に分離し、空間のあるべき位置に濁りなく定位するようになる。曇っていたガラスを磨き上げたような、爽快な透明感と見通しの良さが実現する。どこまでも見通せるような広大で透き通った音場に各々の楽器(音源)がコンパクトに定位する。まるで最高のライブを見ているかのように。
AIM電子 FLSシリーズ
SHH5-2と比較すると高域の伸びやかさが明らかに不足する。アンプの音量は変えていないが、音が明らかに小さく感じられる。原因は音の立ち上がり部分「アタック」の再現性が低下し、音が丸くなったためだ。推測になるが、音質を損なうノイズの発生はSHH5-2の方が少なく、音質はSHH5-2が明らかに上である
AIM電子 Rシリーズ
FLSとの差はかなり大きい。空間の透明度が一気に上昇し、SHH5-2とほとんど遜色のない高い透明感と、音の滑らかさが得られる。ボーカルの色気や楽器の分離も優れている。しかし、それでもレンジ感(低音〜高音)は、SHH5-2の方が僅かに高い気がする。SHH5-2はかなり使い込んで、完全に音がなじんでいるから(R)とは、エージング差の影響があるかも知れない。しかし、この音質なら高音質HDMIケーブルの名に恥じないレベルには到達していると思う。
Audioquest HDMI-X
SHH5-2と比較すると解像度感は若干低下し、音場にもほんの少し濁りが生じるが、音質は最も暖かく自然で「ピュアオーディオ的な味わいの深さ」が感じられるようになる。楽器の響きが美しく音の余韻が長い。音源の調和に優れ、安心して身を委ねられるサウンドだ。盛り上がりの所で若干音がヒステリックになることがあるが、この価格ならそれは仕方ないだろう。映画やPOPSなどのハッキリしたサウンドが求められる場合には、SHH5-2がマッチするがクラシックなどを含めた音楽全般を楽しみたいと考えるならHDMI-Xは、価格も安く良い選択だと思う。価格は安いけれど、侮れないケーブルだ。