今回のテストにAIRBOW PS3001/KAIを使ったのは、どちらにも音色が変えられるという機能が搭載されていたからだ。プレーヤーにDV15/Black Specialを使ったのは、CDとSACDの比較をするためである。
まず始めに、矢野顕子/スーパーフォークソング(CD)から「中央線」を聞いてみた。接続には、AIRBOWオリジナルのHIN−LINE−QUAD2を使い、PS3001/KAIとは「7.1chダイレクト」で繋いでいる。
中央線 (CD → 7.1ch)
ホールトーンが豊かでピアノとボーカルの分離はハッキリしている。
中央線 (CD → RMS−1000/Ensemble → 7.1ch)
エコーの透明感が増す。
ボーカルのニュアンスが細かくなる。
空間の透明度は大きく向上し、音場の見通しがグンと良くなる。
声の明瞭度と繊細さが増し、息使いがハッキリ聞こえるようになる。
全体として、録音が良くなったように聞こえる。
明確な音質改善効果がある。
空間のスケール感は、RMS−1000を使わないときとあまり変わらないが、音間明瞭になった分、音源が少し近くに感じられるようだ。
中央線 (CD → RMS−1000/Session → 7.1ch)
声とピアノの関係が濃密になる。
小さなホールで演奏しているように、歌手が非常に身近に感じられるようになる。
明瞭感は、ensembleも高かったので音質改善効果は甲乙つけがたいが、このソフトにはバランスはこっちの方が遥かに良い。
空間を満たすピアノの響きがかなり濃くなる。聴感的には、2倍くらい?濃密になった感じだ。
ボーカルが身近に聞こえ、自分一人のために歌ってくれているような雰囲気がでてとても心地よい。元には戻れない。
中央線 (CD → 7.1ch) RMS−1000を外して元の状態に戻す。
音源がやや遠くなり、声がちょっと曇ったような感じになる。
空間に薄いベールがかかったように、ソフトフォーカスになる。
悪くはないが、直接音と間接音の分離が低下し、音が混ざってくるようだ。

次に演奏したソフトは、J.S.バッハ、ヴァイオリン協奏曲集/ヒラリー ハーン、ロサンゼルス室内管弦楽団。
バッハ、バイオリン協奏曲 (CD → 7.1ch)
ステージが近く、全体的に音が混じってしまっている。
音は悪くないが、マルチマイク録音の弊害?で音場がどうしても前後に平面的になってしまう。
バイオリンの音色がやや単調に感じられる。
バッハ、バイオリン協奏曲 (CD → RMS−1000/Ensemble → 7.1ch)
音の分離が向上し、高域の透明感が改善する。
前後への広がりが少し大きくなる程度だが、楽器の前後関係は大幅に改善し、各楽音の空間の分離が飛躍的に向上し、それぞれの楽器が独自の空間を形成していることが感じられるようになる。
CDがSACDになった!とはいわないが、通常のCDが優秀録音版になったくらいの差はある。体感的には、通常のCDとVictorが発売しているxrcdくらいの差はある。
バッハ、バイオリン協奏曲 (CD → RMS−1000/Session → 7.1ch)
前後方向への広がりがEnsembleよりも平坦になる。
高域の透明感は改善するが、音の広がり(立体感)の改善は、Ensembleほどには感じられない。
それでも、各楽音の分離感は十分高くなる。
高域がやや強く、きつい感じになるが、音のエッジが持ち上がっている嫌らしい感じは全くない。
RMS−1000は、非常にうまく機能していると感じられる。
バッハ、バイオリン協奏曲 (CD → 7.1ch)
RMS−1000を外して元に戻すと空間がべったりとして広がりと分離が低下する。
CDソフトを出来の悪いCD−Rにコピーしたときに音が悪くなる感じとそっくりだ。
色彩感や響きの総量は、変わっていないかもしれないが、RMS−1000を通すことで明らかにそれらの分離や関係が整理され
各楽器の関係や演奏の状況が聞き取りやすくなっていたことがわかる。
RMS−1000を使うと、もつれた音がほぐれるようなイメージで空間の見通しと音の分離が改善する。
ここまでのテストでは、RMS−1000の効果はかなり大きい事が確認できた。

次にRMS−1000を外して、PS3001/KAIの各入力による音色の違いを比較してみた。ソフトは引き続き、J.S.バッハ、ヴァイオリン協奏曲集/ヒラリー ハーン、ロサンゼルス室内管弦楽団を使用する。
バッハ、バイオリン協奏曲 同軸DIGITAL入力 (PURE−DIRECT−OFF)
音源の位置がやや遠くなるが、RMS−1000を通したときと同じように各楽器の分離が向上し、ポリフォニックの構造が感じられるようになる。
繊細さでは、RMS−1000+7.1ch入力がやや上か?
高域の透明感、空気感もRMS−1000+7.1chの方がよいが、PS3001/KAIにデジタルで入力した音質も全体的な雰囲気は、RMS−1000+7.1chの感覚に非常に近い。
DV15/BlackSpecialからアナログで7.1chに入力したときよりも音質は明らかに向上した感じがする。
バッハ、バイオリン協奏曲 同軸DIGITAL入力 (PURE−DIRECT−ON)
一音、一音の質は向上し、明瞭度も高まるが、楽器の分離や立体感は後退する。
前後の奥行きがほとんどなくなり、楽器が横一列に並んでしまう。
ありがちな日本製・高級コンポの音になり、音は良くても音楽を楽しめるとは言い難くなる。
高域も刺すような感じが強くなり過ぎ、弦がきつくなった。
聞いていてうるさいと感じる状況で、このソフトには好ましくない。
バッハ、バイオリン協奏曲 CD/アナログ入力
中低域の響きが大幅に増す。
空間の透明感、分離感は後退するが、それと引き合えに柔らかさや厚みが出てくる。
バイオリンの中音部は、この接続が一番美しい。
空間と分離感は、やや曖昧で濁っているが、前後方向へも左右方向へも十分に広がっている。
PMC IB1S から良くできたTANNOYの様な音が出てくる。適度な混ざり具合と、リッチな響きが心地よい。
音質改善効果は、RMS−1000+7.1chが最も高かった。デジタル入力に切り替えると、RMS−1000ほど音質を改善する性能は高くないが、このソフトでは音質が確実に向上したように感じられた。
音源をリマスターして聞きやすくする方向性は,PS3001/KAIでも十分に感じられるし、
納得して使える水準に達していることが確認できた。

RMS−1000の周波数特性(37Hz−3dB)では、データー上の高域限界が100KHzのSACDやDVDオーディオの音質は損なわれることになる。実際にはどのように聞こえるのか?確認してみることにした。使用したソフトは、矢野顕子/ピヤノアキコ(SACD) 一曲目「中央線」。この曲のマスターは、矢野顕子/スーパーフォークソング(CD)と同一のものが使われているため、かなり正確な比較になると思われる。
中央線 (SACD → 7.1ch)
CDと比べると、霧が晴れたかのように見通しが良くなる。
SACDの方が、CDよりも空気感を含めた情報量は豊富。空間の広がりも自然。声の質感がCDより高くきめが細かく、艶っぽい。
SACDでは、CDで聞こえにくかったボーカルの微細な表情まで感じ取れるようになるが、RMS−1000/Sessionで聴いたCDと大差があるというほどではない。
SACDを100とすると、CD→RMS−1000/Session→7.1chの音質でも70以上のクオリティーは感じられる。RMS−1000を外すと、50程度に低下するように感じられる。
中央線 (SACD → RMS−1000/Session → 7.1ch)
空間の広がりはやや改善するが、それと引き替えに音質は明らかにダウンする。xrcdが通常のcdになった感じ。
バランスや音色は悪くないが、情報が明らかに少なくなる。
声の表情の繊細さ、ピアノの響きの透明感などが損なわれる。
音楽としても、表現がややこじんまりとし、弱々しくなる。
SACDをダイレクトで繋ぐよりも、音が悪くなったように感じられた。音質は70〜80程度だろうか?
中央線 (CD → RMS−1000/Session → 7.1ch)
SACDよりも最初に聞いた、CD+RMS−1000/Sessionの方が良かったように感じたので、念のためソフトをCDに代えて聞き直してみる。
音の密度感、情報量は,SACDと大差がないが、全体的なバランスはsacdよりも良くなり、音楽としてはこちらの方のバランスがよい。
好み程度の差なのかもしれないが、私には、CD+RMS−1000/Sessionの方が、SACD−7.1chよりも好ましく感じられるほどだ。

まとめ
RMS−1000は確実に音質を改善し、通常録音のCDソフトをSACD並に!とは行かないものの、xrcd並の音質に改善できるだけの効果は確認できた。
RMS−1000と同じくらいの高価なインターコネクトケーブルを使えば、響きはほぼ納得できるくらい、調整することは可能だが、損なわれている音をここまで大きく修復することはできないだろう(インターコネクトケーブルでも音を修復することはできるが、RMS−1000ほどではない。しかし、WIRE−WORLDのスピーカーケーブルを使えば、RMS−1000よりもずっと音を良くできるのは不思議だ)。
その癖の感じられない完璧にチューニングされた改善効果と、2種類の相反する効果を両立することなどから、その販売価格を考慮しても、高価なケーブルを購入するのと同等以上(個人的には、RMS−1000の価値が高いと思う)の価値をRMS−1000は持っていると考えられる。
CDとAMPの間に挿入して音を良くするアクセサリーは、ケーブルだけでなく、トランスなどの様々な種類が発売されてきたがRMS−1000は、それらのすべてての長所を兼ね備えているように感じられる。RMS−1000は、何も損なわず、それどころか失われた情報まで復元し、さらに2種類の空間(音源位置)の調整まで可能になる。
見かけこそ、高級とは言い難いが、その音質と秘められた情熱は、敬服に値する。
音楽は外観ではなく、中身だということを改めて教えられる、オーディオ製品として「逸品」の称号を授けたい。そして、つくづくRMS−1000は、不思議な機械だと思う。