逸品館オーディオマガジン 2012年2月

---------------------オーディオは生演奏を超えられる---------------------

オーディオは生演奏を超えられる。れを実現する真空管プリアンプEAR 912のお話をしたいと思います。

EARとの出会いは、今から約15年前に遡ります。当時はAIRBOWを樹立する前で、CECのCDプレーヤーの改造とオリジナル真空管アンプの製作に力を注いぎ、真空管アンプには並々ならぬ興味をいただいていました。その頃に聞いて、感銘を受けたEARのアンプがプリメインアンプの859とプリアンプの834Lです。

当時研究と勉強のため、新品や中古を含めて数多くの真空管アンプを聞きましたが、音の「暖かさ」が「高域の丸さ」という欠点の裏返しであったり、低音が出なかったり、高域特性が悪かったり、真空管アンプの基本性能はトランジスターに劣るものがほとんどでした。トランジスターアンプは、真空管を超える音響性能が認められて世に出たので、それは当然と言えば当然のことです。

しかし、EARはトランジスターアンプ並の周波数特性と真空管ならではの「スィートな音質」が見事にマッチした、素晴らしい音質に仕上げられていました。真空管でしか出ない音がそこにはありました。だからこそ、今でも真空管アンプが残っているのです。当時にEARをテストしたページがWebに残っていましたので、リンクを張っておきます。
http://www.mmjp.or.jp/ippinkan/newpage124.htm

話は少し変わりますが、真空管アンプの「音質」の決め手はどこにあるかご存じでしょうか?

それは「真空管」と「出力トランス」の「響きのマッチング」にあります。音の良い真空管アンプを作るためには「良い響きを持つ真空管」と「その真空管の響きを生かせる出力トランス」が必要です。どんなに素性の良い球でも「マッチした出力トランス」というパートナーなしでは、良い音が出せません。


過去に聞いた真空管アンプでの出色の音質を持っていたEAR 859には、それまで私が見たこともない真空管が使われていました。それが出力管の「EL519」です。そんな名もない球から高音質をひい出すことを可能としているのが、「EARの自社トランス」です。トランスだけではなく、あらゆるアナログ回路から素晴らしい音を作り出せるマイスターとして、EARの設計者「パラビチーニ」は、広く世界でその実力を認められていますが、特に真空管の響きを生かせる音の良いトランスを作れる技術力の高さが重要です。

「真空管アンプ EAR 日本法人設立のご挨拶」
http://www.ustream.tv/recorded/16304881

話を本題に進めましょう。真空管アンプの音の良さの秘密は、トランジスターアンプで乏しい「響きの豊かさ」を持つことです。真空管とトランスが生み出す「美しい響き」が、音の美しさと音楽の情緒をより深めるのです。ではなぜアンプの生み出す「響き」が音を良くできるのでしょう。それは、次のように考えていただけると分かりやすいと思います。

ギターを例に挙げて説明しましょう。ギターは「弦」と「胴」で構成されます。ギターには多くの種類がありますが「弦」は、それよりずっと種類が少なく消耗品なので安価です。同じ弦を使っていても、高級なギターはよい音で鳴り、安物はそれなりの音しか出ません。ギターの音は「胴の響きの美しさ」で決まるのです。

オーディオ機器に置き換えるとき「弦」を入力される音楽信号、「胴」を真空管式アナログ回路と考えていただければ、真空管アンプが入力された音楽信号よりも「良い音を出す」理由がおわかりいただけると思います。つまり、真空管やトランスがギターの「胴」のように美しく響いて、音をさらに美しくし、音楽の情緒を深めているのです。

私が感動さえ覚えた真空管プリアンプのEAR 912は「素晴らしい楽器」です。一切の違和感と不自然さを感じさせず、まるでソース(音源)がより良くなったように、それを使うことで入力された信号以上の音が取り出せます。
http://www.ippinkan.com/ear_912.htm
その様子をUstreamで実演しました。
https://www.youtube.com/watch?v=fcSTzf1f_n4&playnext=1&list=PLF2ED823E438CCE85&feature=results_video

そしてオーディオ機器が発生する「響き」を取り入れ、デジタルソースの音を芳醇なアナログソースのサウンドに変えてしまうのが、AIRBOWの最新デジタル機器です。


逸品館が設立したオリジナルブランドAIRBOWは設立時、目の前にある「原音」をそのまま再生することが「音楽」を正しく伝えることだと考えていました。当時私が師事した指揮者から「原音忠実」が何よりも大切で、それを改変してはならないと教え込まれたのも大きく影響しています。とにかく、これまでのオーディオ機器を大きく超える「原音忠実再生」を目指しました。しかし、完成した世界最高峰の「原音追求再現オーディオ」は、私にソフトの限界を思い知らしめました。なぜなら、究極の原音追求には究極の録音が必要になりますが、そのような完璧なソフトなどこの世にほとんど存在しなかったからです。完成した超高精度のオーディオ機器で聞くと、所有する大半のソフトが「ゴミ」でした。

それを少し説明します。オーディオ機器の再生音を原音に限りなく近づけると、録音に使われたマイクの癖や位置関係、マスタリング時の編集なども克明に再現されるようになります。超高精度なオーディオ機器を使うと、通常は気づかない小さな「録音の瑕疵」が如実に再生されてしまいます。オーディオ用語で「モニター的」とは、「音は良いけれど音楽が楽しめないつまらない音」の意味だと思いますが、ほとんどのソフトの音がそうなります。原音を追求しすぎた結果、出てくる音がシビアすぎて、そこに「命」が感じられなくなったのです。

 

なかでも最悪は「クラシック」と「J-POP」でした。J-POPが悪いのは、再生機器をヘッドホンステレオやラジカセに合わせたマスタリングを行っているからだと容易に想像できると思いますが、実はクラシックもそれと似たマスタリングがされています。また、クラシックでは「演奏の瑕疵(ミス)」の修正を容易にするため、全体の音を取らず「楽器各々の音」を個別に収録し、それを重ねるようにして作ります。マルチトラックと呼ばれるこの方法が、さらに録音を悪いものにしています。なぜなら、レベルの低い機器では聞こえない「となりの楽器の音」が高性能なオーディオ機器では聞こえてしまうため、音像(音場)が幾重にも重なり、音がごちゃごちゃの団子になってしまうからです。

 

これに対し「古いクラシック」はまともに聞けます。たとえば、歴史的なチェロ名演奏者とされる「パブロ・カザルス」や、やはり歴史的な名指揮者とされる「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー」、さらに古くは「ディニュ・リパッティ−」のピアノなど、1950年前後に多く輩出された名演奏家達が残した録音は、少ない数のマイク(モノラルなら一本のマイク)で収録されているからです。高性能なオーディオ機器でこれらのディスクを再現すると、サラウンドのように音が大きく広がり、場の空気が見えるほどの細かい音までしっかり聞き取れます。マイクの質も悪くモノラルで最新のデジタル録音の音質とはほど遠いこれらの音源も、AIRBOWで再現すると驚くほど生々しく再現されますが、AIRBOW以外の最新HiFiオーディオ機器では、音が広がらず楽器の音が塊になった「聞くに堪えない悪い音」になってしまうことがあります。理想的ではないあらゆるソフトを「音楽として再生するため」、高度なオーディオ機器は「音質」と「音楽性」の矛盾を解決する能力が求められるのです。

現在発売しているAIRBOW製品は、この命題を高いレベルでバランスさせていますが、お客様のお好みや音楽のジャンルに合わせて、「音楽性を犠牲にしない範囲で可能な限り高品位なサウンドを得るための製品(EsotericベースのAIRBOWカスタム機器がそれに相当します)」と「音質を犠牲にしない範囲で可能な限り音楽の雰囲気を色濃く伝えるための製品(Vintageと名付けたAIRBOWの製品群をそういう音に仕上げています)」の二つに作り分けています。

 

そして最新モデルのSA11S3/PM11S3 Ultimateは、一つの機器でこれらすべてをバランスさせるように作りました。音質と音楽性という併存しそうで相反するこの命題に真っ向から挑み、それをほぼ解決したのです。この2機種は、最高級のHiFiオーディオに求められる「音の細かさ=聞こえなかった音が聞き取れる能力」、「周波数レンジの広さ=低い音から高い音までハッキリ再生する能力」を限界まで高めると同時に、HiFiを追求した製品が苦手とする「音の広がり感=音場の立体感」や「音の硬さ=音が団子になってほぐれない」という難問を解決します。

オーディオで最も難しいと考えられる「音質と音楽性」の矛盾を解決するためのヒントは「人間の脳の働き=人間の聴覚の能力」にありました。人間は「特徴的な音を分離して聞き分ける」ことが非常に得意です。カクテルパーティー効果と呼ばれるこの人間の能力は、多くの会話の中から
特定の人物の声を抽出して聞き取ることを可能とします。そのために重要なのが人間の「記憶」と「パターン認識能力」です。視覚(目)と同じように聴覚(耳)も「記憶」と聞こえる音を比較しながら、素早く「聞くべき音」を探し出し、その音を特定します。また、「聞き取った音を記憶情報に基づいて脳内で補間修正」して、より原音に近いイメージで音を聞き取る能力も持っています。夢の中でも「音」を感じますが、それこそ私達が聞いている音は「耳ではなく脳が作り出している」という証明です。

測定器や音響理論ではその存在が無視されている「脳」という高度な生体コンピューターを有する人間(あるいはほ乳類)には、独特な音の聞き分け方が存在します。SA11S3/UltimateとPM11S3/Ultimateでアナログ時代に録音されたソフトを再生すると、最上級のアナログシステムで音楽を聞いている雰囲気が味わえますが、それは人間の感覚合わせた音作りを行っているからです。原音を原音のまま再現するのではなく、原音をより「人間がそれらしく聞き取れるように」すこしテイスト(味付け)を加えています。このテイストのヒントは、前回のメルマガでご紹介したEAR 912から得られました。入力される音に「響き」を付けくわえることで、音がよりリッチになります。EAR 912は真空管とトランスの響きを「あたかも楽器の共鳴体」のように利用して、録音時に失われた「響き」を補います。SA/PM11S3 Ultimateもトランジスター方式でありながら、真空管アンプのような豊かな「響き」を生み出すのです。特に最近何かと話題になる、CDプレーヤーよりも響きの乏しいPC・ネットワーク・オーディオにおいてそのテイストは非常に有効です。

 

豊富な現場の経験と妥協しないの音作りから、音質改善のヒントを人間の感性や楽器そのものに求めたAIRBOWならではのサウンドがSA/PM11S3 Ultimateには凝縮しています。このセットで聞くアナログ時代の演奏は、本当に心地よく素晴らしいものです。

しかし、SA/PM11S3/Ultimateにも限界があります。それは「電子的に作り出された音」に弱いことです。高音に響きを付けくわえると、電子楽器の低音がやや膨張し止まりにくくなります。バシッ!と止まらなければならない音が、少しふわふわしてしまうのです。これは、物理的な響きにより音を発生している「アコースティック楽器」と、単純に電気的しか音を作りださない「電子楽器」のちがいです。アンプやプレーヤーで作れる響きは、あくまでも「自然の物理現象を模したもの」であって、回路が作り出す電気的な音ではないからです。EAR 912やSA/PM11S3 Ultimateが作り出す美しい響きも、電気楽器の再生では時として単なる「付帯音」に過ぎないのです。
http://www.ippinkan.com/bargain/integrated_amp_airbow.htm#PM11S3
同じAIRBOWでも電子楽器を主体に聞く人には、響きの発生を抑えているEsotericベースのAIRBOWカスタムモデルがお薦めです。
http://www.ippinkan.com/esoteric/esoteric_page1.htm

この二つのコンポで「同じソフト」を聞き比べていただければ、私が言いたいこと意図することが明確におわかりいただけると思います。

今回取り上げた「音質と音楽性の両立」は、オーディオの永遠のテーマだと思います。先ほどはSA/PM11S3 UltimateとEsotericカスタムモデルの比較で、それが分かると書きました。しかし、それをもっと簡単で低価格で体験していただくためのケーブルを作りました。それがAIRBOW MSU-Copper VTです。正絹巻純銅単線を使ったこのシールドケーブルは、単線を使うことで中音を太く高音と低音をごくなだらかに減衰させ、音楽再生に理想的な「かまぼこ形」のエネルギーバランスを作り出します。さらに、絹と銅の響きを生かして「失われた響きの再生」も行います。このケーブルをお使いになると電子楽器の細やかさは若干失われるかも知れませんが、アコースティックな音源は驚くほど「美しい響きを持つ良い音」に変化します。特に人間の声の生々しさは、驚くほど大きく向上します。あえて、音質を追わないことで見えてくるものを見付けられるケーブル。音質の呪縛を逃れ、音楽性という言葉の意味に気付き始めたとき、本当の意味での「オーディオ」が始まるのだと思います。


そしてその能力が卓越した領域に達したとき、オーディオの音は生演奏を確実に超えられます。

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