逸品館メルマガ バックナンバー 077

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逸品館ショッピングカートメルマガ 2008.3.23

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皆様こんにちは。逸品館の近くには、お寺が沢山あって3月21日のお彼岸は、多くの人手で賑わいます。誰でも知っている「お彼岸」ですが、その語彙はご存じでいらっしゃいますか?私たちが住んでいる煩悩に満ちた世界「此岸(しがん)」に対して、煩悩を脱し悟りを開いた境地が「彼岸(ひがん)」だそうです。この「彼岸」の季節に行われる仏事が「彼岸会(ひがんえ)」で春分・秋分を中日とし、前後各3日を合わせた7日間行われます。暑さ寒さも彼岸まで。春と言うには暖かく初夏の風すら感じるこの季節。AVライフを明るく楽しみましょう!

今日の話題は、「オーディオの未来」です。メディアは、盛んにオーディオ復活と騒いでいますが、それはいつもの「彼らなりの煽り」で実際のオーディオ市場は年々縮小傾向にあります。特に高額品(10万円以上〜)のクラスでその傾向が強く、AKAI、AIWA、NAKAMICHI、SANSUIを始めとして、泡沫のように現れては消える海外メーカーなど一世を風靡しながらすでに市場からは消えてしまったメーカーを挙げれば枚挙に暇がないほどです。この傾向はこれからも続いて、ついにはオーディオという文化が時代の中に消えてしまうのでしょうか?(逸品館のオーディオの売り上げは、毎年少しずつ伸びているのでご安心下さい。)では、その未来を私なりに予想したいと思います。

近未来のオーディオ像として高級オーディオ・メーカー"LINN"が他社に先駆けて発売したのが、超高級ネットワーク対応デジタルプレーヤー「DSシリーズ」です。この製品は、ディスクプレーヤー部を持たずネットワークを介して取り込んだ「ミュージックデーター」をHDD(ハードディスク)に取り込みそれを再生するという今までになくパソコンに近い構成になっているオーディオ製品です。i-podの大型/高級品と言えばわかりやすいかも知れません。この製品の発売に伴い、今後LINNはCDプレーヤー(ディスクプレーヤー)の開発を打ち切ると発表しています。LINNの描く未来のオーディオ像にCDは存在せず、彼らは音楽ソフトは、すべて、ネットワークに吸収されてしまうと考えているようです。果たしてそうなるでしょうか?確かにその考えは一理あると思います。しかし私の考えは、違っています。


最近、逸品館の掲示板で同じタイトルのソフトなら「CDを買うか?レコードを買うか?」どちらにすればいいだろうか?というご質問を受け、即座に「私なら両方買う」と答えました。今私の手元には、サザン・オールスターズ"KillerStreet"のCD、DVD、レコード!の3種類のソフトがあります。最近のJ-POPでレコードが発売されているのも意外でしたが、2枚組で¥5,800(税込)という価格もまた驚きでした。

Amazonから見たこともないような大きな箱が届き、封を切ると中から美しいジャケットのレコードが現れました。実は、そのレコードは聞いていません。立派な姿を見てしまったら!封を切るのが惜しくなったからです。そのジャケットの印刷を見ているだけで、その中にサザンの曲がレコードで入っていると想像するだけで、なんだか楽しい気持ちになれます。購入したときの「嬉しい気持ち」、「ワクワク感」は、残念ながらネットで音楽データーをダウンロードしても味わえません。音楽を楽しむ方法は、音を出すことだけではないのです。

旧来のレコードマニアは、聞くためのものと保存するためのものと2枚のレコードを買ったと聞きます。レコードから、今は亡き五味康助(ごみやすすけ)氏を思い出して、氏の著書である「五味オーディオ教室」を久しぶりに本棚から出して目を通してみました。

するとどうでしょう?そこには、最近のメルマガで私が盛んに「話題」にしている脳による補完の問題や中低音の重要性について、五味氏なりの切り口で明快に記述されていたではありませんか!この本を私は過去に読んだはずなのに、一体何を覚えていて、何を忘れていたのでしょう?自分自身の不勉強さに思わず一人赤面してしまいました。今も昔も、音楽の楽しみ方、オーディオとの付き合い方は何一つ変わっていないことを思い知らされました。家に持って帰って、この本をもう一度ゆっくり読んでみようと思います。

さて、話は変わりますが世界を代表する日本人の芸術家、岡本太郎氏を皆様もご存じだと思います。大阪の万博公園には、氏の代表的な作品である「太陽の塔」があります。私は、小学生の頃大阪万博でこの「太陽の塔」を見ましたが、何の感慨もなく「けったいなものをつくるひとがいるんだ〜」と子供ながらに感じたことだけをハッキリと覚えています。それとなぜか金色の「太陽の塔の顔」が、やたらとキラキラ輝いていたことも印象的に残っています。

最近、この岡本太郎さんが亡くなられたことを切っ掛けとしてインターネットなどのメディアが彼の作品を取りあげ始めました。カラー映像や解説を交えながら紹介された彼の作品は、当時の私には見えなかったすごい輝きを放っていました。この年になって始めて彼の作品の素晴らしさに気付いたのです。あの圧倒的なエネルギー!圧倒的な生命力!時を超越する情熱。なんて素晴らしい作品なのでしょう。なんて熱い深い愛情に溢れた作品なのでしょう。

そのニュースに触れたことで、私の中で深い眠りについていた「太陽の塔」が目覚めました。突然目の前に小学生の私が見た「太陽の塔」の輝きがひときわ鮮やかに蘇り、内側から私を照らし始めたのです。その時私は、ああこれが芸術の力!人間の情熱の力なのだ!と確信しました。どんなに深く記憶の奥底に眠っていても、本物は決して色あせることはないのです。オーディオを通じ、音楽に深く触れ、人生経験を積んだことで、今やっとそれを輝かせることができるようになれたのです。

今、私はZINGALIやELIPSA、そしてSINFINIA、AMPZILLAという「イタリア製オーディオ」に太陽の塔と同じ溢れるほどの生命エネルギーを感じています。しかしそれは、それらの製品が優れているだけでなく、私の中の「何か」が変わったことも影響しているのかも知れません。「此岸」=「彼岸」ではありませんが、オーディオ的な某脳から少し脱して、より深く音楽を感じることができるようになってきたのかも知れません。

再び五味康助氏の話に戻りますが、彼は著書の中の小見出しにこう記しています。「音色を作り出すのは器械ではなく、聴く人の音楽的教養に裏付けられた"生活"である」と。その通りです。「五味オーディオ教室」は、そのほかにも「オーディオの問題点」そして「オーディオの未来」が実に正確に予言されています。

LINNのDSシリーズの存在は、インターネットと同じだと私は思います。データーストリームに載せて広く速く発信された音楽を聞いて感動できるという意味では大きな価値があるでしょう、しかし、音楽をもっと深く知りたい、それらを所有したい、という計り知れない人間の欲望を満たしてくれません。翻ってレコードはどうでしょう?CDは?DVDは?確かにCD/DVDには、レコードほどの圧倒的な存在感はありません。しかし、それでもインターネット上の架空のデーターとは違って、ジャケットを見て同封された冊子を読めば、それは人間の五感にもっと深く触れてきます。単なるデーターでは、なし得ないことがあるのです。

私は、インターネットを否定したいわけではありません。岡本太郎氏の偉大さを私に気付かせてくれたのは、他でもないインターネットだからです。しかし、インターネットで得られる「感動」は、太陽の塔から得られるほどの深さはありません。インターネットの情報は、量は多いけれど質はまだまだです。人間は、五感で世界を感じながら生きている動物です。それは、たった数十年で変わることではありません。私が今、もしもう一度「太陽の塔」とあのピカピカの顔を「直接見たら!」インターネットから得られる何倍も、何十倍、いや何百倍もの「感動」を味わえるでしょう。あるいは、色あせたそれを見た「失望」かも知れませんが、心は間違いなく大きく動くでしょう。それがインターネットにはない「現
実」の力なのです。

ステレオ。ただの工業製品でありながら「太陽の塔」と同じ高い芸術性を持つ不思議なもの。レコード。聞かなくても楽しくなる不思議な音楽の缶詰。オーディオがそういう「感動」を失わない限り、オーディオの未来は不滅です。でもオーディオがそういう「現実の感動」の力を失ったら?別なものに取って代わられるでしょう。オーディオだけではありません。私たちの周りから、そういう「現実の感動」・「本物の感動」を与えてくれるものや機会がどんどん失われています。何でも「お金」に換算しないと気がすまないメディアが情けない。人間の本質、人生の本質は、そんなところにはないからです。

オーディオ・メーカーや専門店もまた然り。利益を追うのは、当然としても「本物の感動」を伝えることができない、語ることができなければ、未来はありません。逸品館は、「本物の感動」をオーディやホームシアターを通じて一人でも多くのお客様に伝えたいと考えています。私と私の仲間達は、自分が心の底から惚れ込むことができる仕事に巡り会えた喜びに感謝しながら、この仕事に命をかけています。

私たちの人生は、自然や宇宙の存在と比べれば取るに足らない一瞬のものです。どんなにお金を貯めても、どんなに大きな土地を持っても、どんな高価なものを買っても、宇宙の大きさから比べれば「塵」ですらありません。私たちが生まれ、そして死んで行くとき、何が残るのか?何を残せばよいのか?どう生きればよいのか?それを「太陽の塔」は、強く静かに伝えているように思うのです。

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