逸品館メルマガ バックナンバー 186

毎年恒例の「逸品館ダイレクトメール冬号」が完成しました。最近のご購入履歴などから5000名強のお客様に発送させて頂きましたが、ダイレクトメールはHPからダウンロードして頂けます。
http://www.ippinkan.com/z2007_pdf/new_page_2.htm

今週は、様々な機器をテストしました。HPにまとめるまでにはまだ少し時間がかかりそうなので、その概要と結果だけを簡単にご報告させて頂きます。

・真空管アンプテスト
Unison-Research S9(100万円/近日発売)、S6(48万円/近日発売)、Sinfonia
(60万円/マイナーチェンジ後モデル)
http://www.electori.co.jp/unison.html
QUAD II Classic Integrated Amplifier(85万円/好評発売中)
http://www.rocky-international.co.jp/


テスト結果抜粋


今回テストしたアンプは、Unison-Researchが「パラシングル」、QUADが「プッシュプル」とそれぞれの異なる方式の回路を持つ。回路の違い(真空管の動作の違い)が音質の違いを生んでいることは、これまでの経験から容易に想像できる。シングル駆動の真空管アンプは、一つの真空管で信号を増幅するため「信号の純度(透明感)」が高くなるが、その代償として低音がやせて感じることがある。Unison-Researchは中高域の透明感と鮮度を優先し「シングル駆動」を選択し、さらに低音を増強するため「複数の真空管をシングル駆動させる(パラシングル)」という方法を採った。それが中高音の透明度の高さ、鮮度の高さを生み出している。ただし、パラシングルはトランスの大きさの割に出力が出せない。だから、Unison-Researchのアンプは大きく、重いが、出力はそれほど大きくない。

対して「プッシュプル」を選択したQUADは、小さなトランスから強力な中低音が得られる。結果として小型軽量なボディーから、必要十分な出力とセパレートアンプのように厚みのある中低音が生み出せる。その代償として「高域に濁り」が生じやすくなるが、真空管を厳しく選別し、良質なトランスを使うことでシングル並みの透明感の高い中高域が得られるようになる。QUADはその点良くできている。コンパクトな外観に似合わない、本格的な真空管の音を出すアンプ。それがQUADだ。Unison-Researchにくらべ価格がやや高いのが難点かも知れないが、それは昇圧トランスを備える本格的なフォノステージが設けられているからでもある。QUADを購入したら、是非ともレコードを聴いて欲しい。アナログレコードと真空管アンプが奏でる音楽は、最新のデジタルでも敵わないビンテッジの味わいを持っているのだから。

 

・PMC Signatureモデル比較試聴

FB1i/Signature(45.5万円/ペア)
TB2i/Signature(24.5万円/ペア)
http://www.hibino-intersound.co.jp/information/2106.html

テスト結果抜粋

TB2i/SignatureとFB1i/Signatureの音は全然違う。同じ人が作ったとは到底考えられない。原因がTB2i/Signatureのエージング不足でなければ、異なる性格が与えられたと考えるべきかも知れない。FB1i/Signatureは、ディスクの音を包み隠さずすべて再現するPMC全製品に通じる「Professional Moniter」の音が与えられている。

それに対し、TB2i/Signatureには、PMCがコンシューマ・モデル(家庭用)として新発売した、FACTシリーズに驚くほどよく似た音作りが感じられる。高域をわずかにロールオフし、音楽表現を中低域にゆだねることで、FACT同様TB2i/Signatureはソフトの粗を暴かない。ソフトの粗探しをしなければならないモニタースピーカーの宿命で、市販のソフトを鳴らすと「音が良すぎてソフトの粗が出る」ことがある。PMCはそれを理解して、FACTにはあえて家庭用の性格を与えたのだ。

同じSignatureモデルでもLB1i/Signature、FB1i/Signatureはプロ用(モニター)で、TB2i/Signatureは家庭用、そう作り込まれたというイメージを持った。もしくは、TB2i/Signatureはニアフィールドモニターとして、近接した位置で聞くことを想定した音作りがなされているのだろう。少なくとも今回のテストではその性格は大きく違っていた。お薦めはFB1i/Signatureだが、TB2i/Signatureの難しさも捨てがたい。FB1i/Signatureはすぐにすべてが見えるだろうが、TB2i/Signatureの底は見えない。そういう感想を持った。

・PCオーディオ、ネットワークオーディオ関連機器
RATOK RAL-2496UT1、RAL-24192UT1
http://www.ratocsystems.com/products/audio.html
Antelope Audio Zodiac+(現在の扱いが変わり、今後値下げの可能性あり)
http://www.antelopeaudio.com/jp/products_zodiacplus.html
Luxman DA-200(14.8万円)
http://www.luxman.co.jp/presspro/da200.html
marantz NA7004(9.3万円)
http://www.marantz.jp/ce/news/press/2010/na7004.html
Olive 3HD(17万円)
http://www.noahcorporation.com/OLIVE/4HD.html

テスト結果抜粋

今回のテストはいろんな意味で大変興味深い結果が得られた。PCを音源とした場合、「PC本体」が最も音質を大きく左右することだ。特に古いPCではノイズが大きい、インタフェイスの素子が不安定(動作速度が遅い)、電源がプア、CPUの処理速度が遅い、などの原因で良い音が出ないようだ。PCオーディオで良い音を出したいとお考えなら「PCそのもの」を良くすることが最も重要なポイントになる。ビットパーフェクトだ、カーネルミキサーバイパスだと騒ぐよりも、ケーブルやPC本体の音質追求のほうが遙かに大切だ。

もう一つはRATOKから預かった音源とCDをリップした音源の「音質傾向の違いの大きさ」だ。RATOKの音源は「PC向けにマスタリングされた」と考えられ、PCで再生しても全く違和感のない「生々しい音」が再生さる。それに対し市販のCDをリップした音源では「CDプレーヤーの音」を超えることができなかった。音が細かくなっても、響きや広がりなど雰囲気が損なわれてしまうからだ。やはりPCにはPCで再生するために特化した「別マスタリングの音源」を用意すべきだと思われる。現在はまだそのような音源は多くないが、増えてくればCDと同じ品質でCDを超える音質で音楽を楽しむことは決して不可能ではないと思われる。音源については、今後に期待する。

次にメーカーそれぞれの機器の作り込みに対する「考え方の違い」が伺えたように思う。RATOKはPCの付属品としてコンパクトなボディーに必要十分の機能を納めている。音質も癖がなくデーターを淡々とアナログに変換している感じだ。

Antelope Audioは、OCXのメーカーらしく「アナログ的」な音作りが特徴で、USBではなくS/PDIF接続でその良さはより強く発揮される。透明感が高く滑らかなその音質は、レコードを彷彿とさせた。

Luxmanは老舗のオーディオメーカらしく、リッチな音を聞かせる。オーディオマニアがうならされるのは、間違いなくLuxman DA200だろう。アナログプリアンプとしての機能もおまけではなく、十分使える音質で「高級オーディオメーカーが作り上げた良品」という感じが、ひしひしと伝わった。言い換えるなら、老舗料理店の「お得なお昼ご飯」といった感じかもしれない。

maranztの音はカジュアルだ。良い意味で癖がない明るい音は、万人に好まれるはずだ。Luxmanが晩酌なら、marantzは午後の紅茶。iPODとの接続、HDDとの接続に加えインターネットラジオチューナの搭載など「PCとは切り離した存在」のプレーヤーだと言うことが、この製品の成り立ちを如実に物語る。PCマニアよりも音楽ファンにお薦めしたい。ネットワークプレーヤーの第一号機でこれほどまでの完成度に仕上げたら、次はどうするのか?それが心配になるほど素晴らしい製品だった。特に中低音の厚みがUSBバスパワー機器とは全く違うレベルで、本当に感心させられた。この音質なら、CDプレーヤーの代わりとして立派に通用する。

Oliveは完成度の高いプレーヤーだ。使い勝手、インターフェイス(GUI)は、非常に高度に煮詰められていて、説明書を読まなくてもほとんどの操作が可能だった。タッチパネルも使いやすく、PC+USBのプレーヤーとは全く次元が違い、完全にオーディオ機器の仲間に入れても差し支えはない製品だ。音質も高度に煮詰められていて、オーディオ的にも音楽的にも全く問題のない素晴らしい音を出す。唯一の問題は「音を変えること」ができないことだ。吊しの洋服のようにカスタマイズすることができない3HDは出る音をそのまま聞くしかない。それがOliveの提案するスタイルだ。それを「楽」と感じるか?「窮屈」と感じるかで、Oliveの評価は真っ二つに分かれるだろう。私は?良い製品だと思ったが、オーディオルームに導入するのは少し抵抗を感じる。車で言えばマニュアルにこだわるドライバーが、ATの車に乗るような感じである。良く出来すぎると、それはそれで愛
着が感じられなくなる。人間、特にマニアは強欲だ!

ディスクレス・オーディオのテストは項目が非常に多く、はっきりいって大変疲れる。それでも厭わずテストをするのは「未知の興味」がそこにあるからだ。面倒だけれど惹かれてしまう。ついつい意地になって手を出してしまう。悪女のような不思議な魔力がそこにある。それは「音を自由に弄りたい」、「機器を征服したい」というオーディオマニアの性なのだろう。

完全にオートマチックなOlive 3HD。適度にオーディオ的なLuxman DA200とmarantz NA7004。オーディオ機器より「PCのパーツ」に近いイメージのAntelope Audio Zodiac+やRATOK RALシリーズ。ディスクレス・オーディオの台頭は、最近やや沈滞気味で元気のなかった「オーディオ」に新しいエナジーを吹き込んでくれそうだ。

ハイエンドだけがもてはやされ機器の価格がうなぎ登りを続けたあげく、庶民が全く手の届かなくなってしまったオーディオ機器。その「1/10」程度の価格でディスクレス・オーディオは楽しめる。それは大変喜ばしいことだ。すくなくとも「安くてうまい!」物好きな逸品館にとっては「いらっしゃい!」の製品だ。

オーディオには簡単にいい音を出す以外にも、様々な角度からの楽しみがある。頭で考えてそれを現実にするのも良いだろう。人と違うアポローチでいい音を狙うのも良いだろう。最終目的は「納得(自己満足)」それしかない。だから、オーディは楽しくやりたい。今後もいち早くオーディオ、ホームシアターの情報発信に努めたいと思う。

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