逸品館メルマガ バックナンバー 205

今回は4月にお送りしたメルマガの内容を書き換えてお送りいたします。オーディオは不思議です。興味は尽きることなく、際限なく楽しめます。

オーディオの開発やセッティング実験を繰り返せば返すほど、オーディオは「バイブレーション(振動)の正しい伝達がポイント」だと実感します。掲示板にも書いたのですが、ハイエンドショウのサブウーファーの実験で「聞こえない音」を誰もが聴き取れることに驚きます。このとき、サブウファーのユニットはゆらゆらと数ミリしか動いていませんが、このわずかなユニットの動き(振動)を大部屋に居合わせた誰もが関知できることは、人間の感覚の神業としか思えません。これほど小さな空気の動き(振動)ですら検知できる人間の聴覚を「欺く」オーディオには、測定限界値を遙かに超える繊細さが求められます。

オーディオで音楽を再生する基本原理は、ご存じのようにマイクが電気信号に変換した音を再び電器の力を借りて増幅することです。しかし、前述したように人間の聴覚は非常に敏感ですから、録音〜増幅の間に発生する「わずかな振動(共振)」の混入が再生音質に大きく影響することが考えられます。

オーディオアクセサリーにボード・インシュレーターというジャンルがあります。オーディオ機器を置く台や脚によって音質が変わるからです。回転系(可動部分)が音質に直接影響する、アナログプレーヤーやCDプレーヤーの音質が台や脚によって変わることは容易に想像できます。しかし最近、「AIRBOW NA7004/Specialとipod Touchの組み合わせ」を使ってAIRBOWから最近発売した「Metal Base」と他のインシュレーターの比較を行ったところ、回転系が皆無なのにも関わらず、CDプレーヤーと同じように「インシュレーターの使用」で音が大きく変わったことに驚きました。このように一見振動していないように見える機器も、中にある電線や増幅素子がわずかな振動の影響を受けているため、「置き方」で音が変わるのだと考えられます。同様の理由によるのか?アンプもインシュレーターで音が変わります。当然、振動が音に影響するスピーカーも台や脚で大きく音が変わります。

話を人間の感覚に戻します。音楽は「空気の振動」に人間の感情を置き換えて伝えるコミュニケーションです。わずかな顔色の違い、表情の違いから相手に気持ちを読み取れるように、私たちの聴覚は測定器でさえ捉えきれないわずかな空気の振動(音)からも、人の感情の変化を聞き取ります。この優れた音に対する人間の感覚を私は、「人間が言語を持つ前に使っていたうなり声によるコミュニケーションの名残(あるいは進化)」と考えています。

この音に対する感覚は非常に「利己的」で、鋭敏な部分と鈍感な部分がハッキリ分かれます。例えば冒頭に述べたサブウーファーの実験では、サブウーファーだけを鳴らしているとその音は誰にも聞こえません。実験を行っている私自身がサブウーファーのすぐ側でその音を聞こうとしても、全く聞こえないのですからそれは当然です。しかし、サブウーファーと関連する聞こえる音(可聴帯域の音)を加えて、サブウーファーのあるなしを行うと、聞こえる部分音はハッキリと変化します。つまり、私たちの聴覚は「類似する、あるいは一致する音」に対し、聞き取れない音を聞き取れるほどのものすごく高い感度を持っていると考えられるのです。


聞こえるはずのないサブウーファーの音を聞くためには、それと関連した「聞こえる音」が重要です。10mも先にあるわずか数ミリのユニットの動きを感じるために、それと関連した聞こえる音が発生していることがポイントなのです。これを逆説的に考えた場合、電子回路がスピーカーから出た音で共振することで発生する、測定できないほどのわずかな音が「聞こえる音」に大きな影響を与えることは、容易に想像できます。

今度は周波数でなく、時間軸上で考えてみましょう。私たちの聴覚は、連続する音の間隔が1/100を切ると「断続した二つの音」と認識できなくなります。つまり、一つの「濁った音」に聞こえるわけです。これを「距離」に置き換えると、音波の秒速340mの1/100ですから3.4mになります。これを人間が最も敏感な周波数1kHz(1000)で割ると、3.4mmになります。つまり、たった数ミリの場所からの反射音でも私たちの聞こえる音に大きな影響を与えることが考えられます。つまり、スピーカーをわずか数ミリ動かしても、「スピーカーの鳴り方(音質)」を大きく変わることが理解できるのです。逆にスピーカーから数十p離れた場所からの反射は「違う音」と認識されて、影響が小さいとも考えられます。

これを裏付ける事実として、これまでの経験でスピーカーを大きく動かすよりも少しだけ動かす方が「中高音の透明感の改善」には大きな効果があることが分かっています。数ミリというわずかな位置変更によるスピーカーの音質調整を完全に習得できれば、環境やスピーカーそのものが変化しても、常にある程度同じ音を出せるようになります。余談ですが逸品館のデモンストレーションがいつも「同じような音」なのは、スピーカーの設置位置の影響が非常に大きいのです(昨年、インターナショナル・オーディオ・ショウでロッキーインターナショナルのブースのセッティングを行いましたが、AIRBOW製品を全く使わなかったにも関わらずいつもと同じAIRBOWサウンドが出せたことに私が一番驚きました)。

音は人なり。同じ装置を使っても、使いこなす人の違いが「出てくる音」に反映します。楽器が演奏者の音を反映するのと同じように、オーディオも使い手さんの音を反映します。機器のセッティングは機器の買い換えよりも重要かもしれません。もし、雑誌や人の噂を信じても音が良くならないと感じられるなら、逸品館の推奨するセッティングをお試し下さい。

今の音響学や聴覚の研究では解明できないほど「恐るべき高い感度(鼓膜だけではなく音を皮膚でも感じているはずです)」を私たちは持っています。オーディオの音質を濁らせるのは、元の音に付随して発生するほんのわずかな共振です。再生時に避けられないこの「共振」を打ち消せば、音楽の感動は生に近づきます。もしこの「共振」をブースターとして使うことが出来れば、音楽の感動は生を超えるでしょう。これが私がオーディオが生を超えられると確信する理由なのです。

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