逸品館メルマガ バックナンバー 302

2013東京ハイエンドショウ秋の逸品館ブースは、お陰様で大盛況でした。今回は途中プログラムを変更するなど、かなりフレキシブルにデモンストレーションを行いましたが、概ねご好評頂けたと思います。今回のイベントでは従来よりも「響き」に重点を置いたデモンストレーションを行いました。その結果から、今後の音作りやお薦め製品を選ぶときのポイントを次のように考えています。

オーディオの基本は、元の音が最良で、なにも引かずにそれを再現することが成功すれば最高の音が出だせる、つまり「原音忠実再生」が最良の音だと考えられてきました。なにも引かず、何も足さないという考えから生まれたのが、振動は「させない」。ケーブルは「短く」。接点は「少なく」。というお決まりの方程式です。しかし、その方程式はすでに破綻しています。なぜならば、ケーブルで音が変わるなど理論では説明できない、理論とは矛盾する数々の謎があるからです。

そこで私は次のように考えました。機器で生じる歪み(付け足される音)は、ただ余計な雑音でしかないのでしょうか?

CDでは左右の信号は完全に分けられた状態で記録され、望めば左右のスピーカーへ左右の音を一切混じり合わせずに出力できます。これに対しレコードプレーヤーは一本の針で左右の信号を読み取るため、右から左へ、あるいは左から右へ、という左右信号の混じり(クロストーク)が避けられません。このクロストークのありなしによって、スピーカーから再現される音像はどのように変化するのでしょう?

モノラルがステレオになったとき「中央の音が薄くなる」という問題が発生しました。それはモノラルの時には左右のスピーカーからまったく同じ音が再生されるため、すべての音が中央に高密度で定位したのに対し、ステレオでは一部の音が左右に散る(広がる)事によって中央の密度が低下=中央の定位が散漫になってしまったのです。

これは本来「中央で合成されるべき音像」が「左右へ振り分けられた」ために起きた現象です。レコードプレーヤーでは先に書いた「クロストーク」の発生により、本来右からだけ再生される音が左からも再生される、あるいはその逆の現象が起きることで「中央の定位が濃くなる=中央の音像の密度が向上する」という、センター定位だけを考えると「プラス」の現象が起きていました。しかし、プレーヤーがレコードからCDに変わったことにより、クロストークは完全に排除され、結果として中央の音像が薄い、音場の前後方向への奥行きが浅い、などの不都合が生じたのです。つまり、レコードプレーヤーが発生していた「クロストークという歪み(作り出された音)」は、擬似的に定位を中央に寄せる優れた働きを持っていたのです。

スピーカーから実際に音を出しながらソフトの音質を確認する作業、マスタリング時には当然「レコードプレーヤーによるクロストークの発生」を考慮して作業が行われていました。レコードプレーヤーでの再生を基準に作られたマスターをCDで再生すると、中央定位が薄くなり、前後の奥行きが浅くなるのは当然です。逆説的に考えれば、レコードプレーヤーが発生していた「クロストーク(歪み)」は、ボーカルをより濃くするために「必要な音」だったと言えるのです。

これはほんの一例に過ぎません。真空管アンプが発生する歪みもレコードプレーヤーが発生するクロストークも、「発生してはならない雑音」ではなく、音楽をより楽しませてくれる「プラスの作用」を持っていたのです。

話はオーディオから離れます。高級な弦楽器とリーズナブルな弦楽器に使われる「弦」は、同じですが「胴」つまり「共鳴体の良否」でその音には大きな差が生まれます。なぜならば、すべての楽器は「単純な振動を複雑に共鳴させる」ことで良い音質を実現しているからです。

話をオーディオ機器に戻しましょう。オーディオ機器を「楽器」と同じと考えるならば、入力される信号に対しオーディオ機器を「楽器的に共振」させれば出力される音は入力される音よりも良くなると考えられます。「歪」を「音楽に変換して利用しよう」というエコリサイクルな考えです。

これらの考えから、当初「原音忠実再生がオーディオのゴール」と考えていた私も、最近では「原音忠実再生は、オーディオのスタートにすぎない」と考えるようになりました。原音忠実再生から一歩考えを進め、「オーディオ機器を楽器として考えて入力される音よりも出力される音をより良くする」こと。それが、逸品館の考える「新たなオーディオの目標」です。

今回のハイエンドショウでは、それを実演しています。新たなオーディオへのページを開いた、ハイエンドショウ・イベント録画は次のページからご覧頂けます。
http://bit.ly/1b2ump7

ステレオサウンド社のWebにもニュースが掲載されました。
http://www.stereosound.co.jp/review/article/2013/10/11/25400.html

よろしければご覧ください。

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