逸品館 イベントリポート

5月21日〜23日に東京有楽町、交通会館で開催されるハイエンドショウ東京

合同ブース「Cルーム」へ逸品館が出展しました。

予定していたデモンストレーションは下記表の通りですが、実施した実際の

デモンストレーションとは、開催時間により一部内容が異なります。

ハイエンドショウ東京2010Springは、ほぼ前年と 同じご来場者数に達し無事終了いたしました。不況の影響で出展社が淘汰され、「力(勢い)のあるメーカー」だけが残ったためか?全体的なデモンストレーションのグレードが向上し、以前にも増してスムースな進行が実現したように感じられました。

逸品館のブースにも多くのご来客を賜りましたこと心からお礼申し上げます。逸品館のブースのデモンストレーションは、事前のご案内通り「My Sound」と 「Future Sound」の2つを交互に行いました。

「Future Sound」では、今話題の 「PCオーディオ」を取り上げましたが、さすがに売り込み中の技術だけあって、 今回出展した半数近くの出展社が何らかの形でPCオーディオに絡んだデモを行っていました。空き時間にいくつかのPCオーディオ関係のデモンストレーションを拝見しましたが、「総合的な解説レベル」が不足しがちで、果たしてあの説明でお客様がご納得なさるのだろうか?と感じることが少なくなかったです。

近年あまりにも速い速度で技術が進歩し続けるため、最先端を担う一部の人間でなければ「デジタル技術についての総括的な説明」ができなくなっています。それとくらべるとオーディオの技術解説は、簡単そうに見えるかも知れません。しかし、オーディオではデジタル技術のみならず人間の感性まで深く関わるため、解説はPCよりも遥かに難しいのです。

例えばアナログ全盛時代のオーディオなら、先端技術を深く理解しなくても面白い解説はできました。しかし、デジタルが導入され、さらに技術がPCにまで及ぶようになったために、最先端技術やデジタル理論への理解も同時に深めなければ、オーディオの真髄をしっかり説明することができなくなってしまったのです。

現在のオーディオ評論家は、「文系」である「音楽(芸術)」への深い理解と同時に、「理系」 である「デジタル理論(技術)」への深い理解が求められます。ところが古くからの解説者は「文系=音楽」に卓越していますが、「理系=デジタル理論」 にはついて行けず、「理系=デジタル理論」の説明に優れたPC環境で育った技術者は、逆に「文系=音楽」に対する理解が甘いなど、なかなか上手く行かないのが実情です。

今やオーディオを「総括的に説明」するためには、以前にも増して多岐にわたる知識と理解力が必要とされてい ます。本来であればその能力を持つ人だけが「解説者、評論家」となるべきです が、残念ながらその点で今回のデモでは「説明員」・「評論家」の理解が足りな かったように感じられました。中でもPCオーディオのデモンストレーションでは、解説の内容を「経験したことだけ」に留めれば良いのに、それを無理やりに理論説明にこじつけてしまい、結果として論点が不明瞭で技術的には間違いだらけの理解不能な解説に陥ってしまったケースが 少なからず見受けられました。

私はそういう点に注意しながら 「分かること」と「分からないこと」を明確にし「PCオーディオ」の解説を行 ったつもりですが、果たしてどうだったのでしょうか? では状況説明はここまでにして、逸品館のデモンストレーション「内容」に話を進めしょう。

My Sound (1)
ケーブル プレーヤー アンプ スピーカー
電源 デンゲン :SIN AIRBOW AIRBOW TERA Focal
LINE:SIN SA15S2/Master PM15S2/Master 1028Be
SP:SCR     電源 デンゲン ケーブル 交換 コウカン
電源:EVIDENCE      
LINE:SIN
SP:SCR     B2.27MK2 追加 ツイカ
電源:EVIDENCE AIRBOW AIRBOW TERA Focal
LINE:SIN X05/Ultimate DIGITAL DOMAIN Ultpia-Scala
SP:SIN   B1a(BTL) Antelope Audio
      OCX 追加 ツイカ
AIRBOW
      CLT-3 追加 ツイカ
  AIRBOW  
UX1SE/LTD Antelope Audio
      OCX追加
       
Real-Sound
      Apeq2-Pro追加
My Sound (2)
ケーブル プレーヤー アンプ スピーカー
電源:SIN AIRBOW AIRBOW TERA Stirling 
LINE:SIN SA15S2/Master PM15S2/Master LS-3/5a
SP:SCR     ジャンパー交換
電源:SIN     SIN-Jumper
LINE:SIN
SP:SCR     Evidence-Jumper
電源:EVIDENCE AIRBOW AIRBOW TERA Vienna Acoustics
LINE:SIN SA10/Ultimate DIGITAL DOMAIN THE MUSIC
SP:SIN   B1a(BTL) Antelope Audio
      OCX 追加 ツイカ
AIRBOW
      CLT-3 追加 ツイカ
  AIRBOW  
UX1SE/LTD Antelope Audio
      OCX追加
       
Real-Sound
      Apeq2-Pro追加

Future Sound (1)
ケーブル プレーヤー アンプ スピーカー
電源:SIN PC(USB) AIRBOW Focal
LINE:SIN RATOC AV8003/Special 1028Be
SP:SCR RAL-2496UT1 MM8003/Special  
  PC(LAN)    
 
       
  UD8004/Special    
CD
     
  アップサンプリングCD    
  96kHz/24bit(SACD)    
       
 
       
電源:EVIDENCE UX1SE/LTD AIRBOW Focal
LINE:SIN With OCX TERA/Limited Scala
SP:SIN   Digital Domain B1a With CLT-3
Future Sound (2)
ケーブル プレーヤー アンプ スピーカー
電源:SIN PC(USB) AIRBOW PMC
LINE:SIN RATOC AV8003/Special FACT.8
SP:SCR RAL-2496UT1 MM8003/Special  
  PC(LAN)    
 
       
  UD8004/Special    
CD
     
  アップサンプリングCD    
  96kHz/24bit(SACD)    
       
 
       
電源:EVIDENCE UX1SE/LTD AIRBOW Vienna Acoustics
LINE:SIN With OCX TERA/Limited THE MUSIC
SP:SIN   Digital Domain B1a With CLT-3

Future Sound(1) 詳細と動画

「Future Sound」は、PC(HDD)に収録された音楽ファイルを外部DACで再生する時、接続方法で音が変わる説明とPC内部で音源をアップサンプリングすると音が良くなる実演から始めました。

CDからPCに音楽データーをWAVもしくはWMAのロスレスで取り込んだファイルをフリーのPCプレーヤーソフト「Win Amp」で再生。音声データーをUSBからデジタル出力してRatok RAL-2496UT1でS/PDIFに変換し、それをAV8003/Specialに入力する方法で音を比べます。接続ケーブルは次の製品を使いました。USBケーブル・Wireworld STB、同軸デジタルケーブル・AET SIN DG75/EVO。スピーカーケーブルは、AET HINクラスです。

ソースは、矢野顕子さんのCD/SACDハイブリッドソフト「ピアノアキコ。」から1曲目の「中央線」を使いました。

ノートパソコン

USB トランスポーター

AVプリアンプ

AVパワーアンプ

スピーカー

GATEWAY 7430JP

RATOC
RAL−2496UT1

 AIRBOW
AV8003 Special

  AIRBOW
MM8003 Special

Focal
1028Be

CDの「生データー」をPC-USB-RAL-2496UT1-AV8003/Specialの接続で再生するだけで、オーディオイベントに十分使える音質で音楽が再現できました。

次にCDを生データの「44.1kHz/16bit」でPCに取り込んでから、Windows Media Encoderで「88.2kHz/24bit」にアップサンプリングしたものに切り替えて同じ曲を再生します。

すると、どうでしょう?嘘のように高域の濁りやもやつきが取れて、見晴らしが良くなりストレスなく音が広がるようになります。一音一音の輝きや音色の良さも改善し、まるで違うディスクを聴いているようです。

次に接続をLANに切り替えます。プレーヤーソフトは変えず、PC(HDD)からLANでバッファローの安物の4出力スイッチングハブ、ハブからAV8003/Specialへと接続を買えます。

このハブは音質を少しでも良くしようと内部のコンデンサーを高周波用の高級品に変えてみましたが、音質にはさほど大きな差はありませんでした。またHUBまでのLANケーブルは、市販品の高級ケーブルと高級端子を使ったカテゴリー7を使い、HUBからAV8003/SpecialまではAudioquestのオーディオ用LANケーブル(RJ-45G)を使っています。この接続方法は、ハイエンドショウ2009Springで訴求した「DACに最も近いケーブルが音質を大きく左右する」という経験から、最も音の良いAudioquestをAVアンプ側に使いました。ちなみにRJ-45Gは、カテゴリー5のケーブルですがPC-HUBを繋いでいるカテゴリー7のケーブルより明らかに高音質です。

また話がわき道に逸れますが、LANケーブルでも音が変わることが分かったので市販のLANケーブルを何本か購入テストしましたが、平型ケーブルが全般的に透明度と解像度が高く、丸型ケーブルは広がりがありますがノイズが多いのか?音が曇る傾向が見られ、総合的には平型が優位に感じられました。とにかくLANケーブルで
も音が大きく変わります。デジタル伝送を理屈で考えた場合、それはとても不思議なことです。

PC(HDD)からの接続をUSBからLANに変えると高域の見通しが良くなり、霧が晴れたように音が良くなります。その変化はCDのデーターをアップサンプリングして得られる改善と方向はよく似ていますが、結果はさらに大きなものです。このデモンストレーションからPC(HDD)と外部DACは接続方式によって音質が大きく変わることが確認できました。その理由ですが、LAN接続は通信スピードが速く双方向で「ベリファイ(検証)」を行いながらデーターをやり取りするのに対し、PC-DAC間のUSB接続は規格がきちんと定められておらず、中には一方通行のケー
ス(ベリファイが行われない)すら存在するなど、データーの扱いがLANよりも「不安定」であることが上げられます。またLANでは、データーのやり取りの間に「メモリーバッファ」が入っている(LANケーブルを抜いても、1秒程度音楽が流れ続けることからメモリーバッファの存在が確認できます)ため、常に安定したデーターがDACへ送られる点も音質に有利に働いていると想像できます。

Brainstorm DCD-8 ジッターキャンセラーを使ったUSB出力の音質改善方法はこちら

とにかく現時点でのPCと外部DACの接続は、LANが最も有利でFire Wire(IE1394)がほぼそれに準じます。USBは、絶対ではありませんがそれらより明らかに劣ることが多いようです。結論として可能であればLAN(もしくはIE1394)を使うことが安心ですが、USB規格も今後の進歩(現在オーディオではまだVer1.1)で音質も改善される可能性があり、どれが絶対とは言えない状況です。このデモンストレーションは、You Tubeでご観頂けます。

続いて矢野顕子さんの(生)ディスクをAirbow UD8004/SpecialにセットしSACDを再生、7.1ch Direct(アナログ)でAV8003/Specialに入力してPC(HDD)-デジタル接続の音と聞き比べました。データーがSACDに変わるのでもちろん音はさらに良くなりますが、PC(HDD)では寂しかった「響きの多さ」、「音色の美しさ」、「表現の艶やかさ」などが付け加わることが感じられます。これは、CDプレーヤーにはCDプレーヤー独自の音作りがあり、PC(HDD)ではそれがなくなるため、「音楽の雰囲気」があっさりしてしまう?のではないかと考えています。

 

会場でも説明しましたが、メディアがレコードからCDに変わったとき「雰囲気が薄くなった」のはレコードプレーヤーに避けられない歪み(例えばクロストークの発生)がCDでキャンセルされてしまったため、レコードプレーヤーが持っていた音楽再現の雰囲気の濃さや前後方向への広がりが失われたのだと考えています。

一般的に販売されているパッケージメディアに収録されている音楽は、マイクが取られたそのままではなく、一般的な再生機器(昔はレコードプレーヤー、今はCDプレーヤー)に合わせてレコーディング(ミキシング)エンジニアが加工(エコー処理やパンニング)などを最適化しているため、彼らが想定した再生機で再生しない場合には、意図した「音(音楽)」として再現されないことがあるからです。

一部のオーディオメーカーや評論家、あるいはオーディオマニアは「原音忠実再生」にこだわります。昔は私もそう考えていましたが、最近はデジタルの進歩によりオーディオは「生音をこえる音楽性を生み出す(生よりも良い音で音楽を聞く)ことが可能」だと考えています。従って、CDのデーターがそのままPC(HDD)に取り込まれているか?やDACにそのままのデーターが送り込まれているか?にこだわるのはナンセンスであると考えています。なぜなら「失われた音」は、「最新のデジタル技術」で「復元」が可能だからです。その結果、「録音された生音よりも再生される音が良くなる」ことは充分に考えられます。

話をデモンストレーションの内容に戻します。PC(HDD)とSACDの比較に続き、UD8004/SpecialでBDを再生し、メディアのフォーマットに関わらずAirbow機器なら充分に音楽を楽しめることをデモンストレーションして「Future Sound」の主題は終了します。

最後にシステムを持ち込んだ最高の機器に変えDVD(Double Mellow 付属DVDからStranger)を再生します。
Airbow UX1SE/Limited(With Antelope Audio OCX)、Airbow Tera CryoLimited、Digital Domain B1a(BTL*2)、Focal Scala Utopia

その圧倒的な高音質と素晴らしいボーカルに私は言葉を失います。最高のオーディオには音楽のジャンルも、メディア(ディスク)のフォーマットも、時と場所も関係ありません。そこにあるのは「リアルな感動に出会えた喜び」ただそれだけです。それを聞きながら、私自身も音楽とオーディオに巡り会えた喜びに感謝しながら、短く長い30分の「Future Sound」のデモンストレーションは終了しました。