【部屋の音を整えよう】3. フラッタエコー(定在波)を取り除こう

ルームチューンの基礎知識

■定在波(フラッタエコー)が一番大きい問題になっている

鏡を並行に置くと像が繰り返し反射して、無限に続く像ができます。音も同じです。
並行する2つの平面の間で発生した音は、反射を繰り返しながらなかなか減衰せず、残響を生じます。
この残響音は、オーディオルームの音を最も悪くする大敵で「フラッターエコー(定在波)」と呼ばれます。

フラッターエコーが発生する場所で手を叩くと、「キンキン」あるいは「ギンギン」というカン高い音や、耳障りな圧迫感が生じます。
フラッターエコーが発生すると、スピーカーの音が広がりにくくなり(平面的になる)、音量を上げると空間が混濁して、音が混じり合ってしまいます(音がごちゃごちゃになって、うるさく感じられる)。リスニングルームに音が広がらない。音量を上げるとうるさく感じる。このような問題はすべてフラッターエコーが原因です。

フラッターエコーは並行する大きな2面の間前後左右の壁の間で発生する フラッターエコーは天井と床の間や壁のコーナーでも発生する

■定在波(フラッタエコー)を抑制する方法

平行面の間で「音が往復を繰り返す(フラッタエコー)」を抑制するには、両側あるいは片側で反射を抑えれば解決します。

部屋にある平行面は、壁と壁、床と天井の二つですが、まず床と天井への対策を考えます。
天井を吸音するのは難しいので、吸音性の高いカーペットをスピーカーの前に敷くのが簡単です。横幅が「スピーカーの設置幅よりも大きく(1~2倍)」、縦(奥行き)が約1-2m程度の大きさのカーペットを敷くのが効果的です。カーペットよりも音の良いのがムートンです。スピーカーの直前にムートンを敷くと、透明感と広がり感の改善に大きな効果があります。

次に壁と壁の間で発生するフラッターエコーを低減する方法ですが、カーテンを設置するのが最も簡単です。カーテンレールをWにして、「厚手」と「薄手」の設置できるようにしておけば、それぞれのカーテンの開け閉めでルーム・コースティックを微調整でき便利です。リビングとシアターを兼用にする場合には、「遮光カーテン(光を通さず、光を反射しないカーテン)」を取り付けると、映像も音も良い環境が作り出せます。

■天井への対策

天井のコーナーでは、壁を伝わって来た音同士が逃げ場を失うようにぶつかり合って、フラッターエコーに近い圧迫感のある耳障りな音を発生(下図④)します。

天井や壁への対策には、AIRBOWのルームアコースティックアクセサリー「もや取り君」をお薦めします。この製品は、小型軽量で最大の効果を発揮しつつ「低価格を実現する」ために、私が長年研究を重ねた上で生み出した、画期的な音響チューニング材です。部屋の外観を大きく損ねることなく、大型で高価な吸音材を超える効果を発揮します。

この製品の最も大きなポイントは「吸音材に音を通すための穴」を開けていることです。サイズと形状、場所を研究して決定されたこの「穴」から吸音材の背後に回り込んだ音は、「打ち消し合い(サイレンサー)」効果により消したい周波数が効果的に低減され、サイズを超えた大きな効果を発揮します(意匠登録済み)。また素材が軽いので、付属のピンで壁や天井に簡単に取り付けられ、取り外しも簡単なので賃貸物件でもご使用いただけると思います。

プレミアムは、表面に反射体(厚紙)を貼り付け、反射と吸音を両立させたピュアオーディオ(ステレオ)向きの製品です。ピュアは、形状と表面反射を見直すことで、吸音効果を維持しながら価格を抑えたモデルです。三角形状のスマイルは、部屋のコーナー部や、壁面(天井)にすこし浮かした状態で取り付けることで、従来の同サイズの吸音材の数倍の効果が期待できます。

いずれの吸音材もAIRBOWらしく、できるだけ低価格で作っていますが、効果は抜群です。

■天井への対策

スピーカーから出た音は、壁や天井で反射すると共に、壁や天井を共振させます。
段ボール箱の表面を叩くと「ボコボコ」という低級な音がしますが、それは「素材が容易に共振する」からです。

段ボールや卵ケースを代替吸音材として使う安上がりのルームチューンが知られていますが、「強度の低い材質」を吸音材に使った場合、それらは音に共鳴して「素材の音」を盛大に発生します。

楽器の響きに、「段ボールの響き」が加わることを想像してください。
済みきった美しい音色で音楽を楽しめるはずがありません。

拳で叩いたとき、不明瞭な濁った音がするものを「吸音材や反射パネル」に使ってはなりません。
部屋の中にそのような「悪い音色」の反射物(薄い戸フスマ、フスマ、ベニヤの壁や天井など)が設置されている場合には、交換するかあるいは「表面の反射を低減する(布などで覆う)」と音場の透明感が驚くほど改善します。

壁紙も同じなので、布や紙などの天然素材が使われ、壁紙に触れたときに不愉快な音が発生しない壁紙を選びましょう。
表面が柔らかく、音を吸収する効果のある壁紙は、吸音効果が高くよい音響が得られやすいのでお薦めです。

防汚処理がされた硬いビニール系の壁紙は、反射が強くリスニングルームには向きません。

もや取り君 プレミアム(白)もや取り君 プレミアム(黒)もや取り君 ピュアもや取り君 スマイル
room-silencer-crossingroom silencer crossing_toparb-roomtri_03-6mai
22,500円(4枚/税別)22,500円(4枚/税別)14,000円(5枚/税別)16,800円(6枚/税別)
詳細説明詳細説明詳細説明詳細説明

もや取り君「プレミアム」・「ピュア」の使い方

 

もや取り君「スマイル」の使い方

 

KRIPTON(クリプトン)「Mystic White(ミスティックホワイト)」を壁に貼り付けても効果があります。

Mystic Whiteは、薄い特殊な不織布で、非常に細い繊維が組み合わされており、音響エネルギーを「繊維の滑り摩擦」に変換して効率的に吸収します。ミスティックホワイトを擦り合わせても、ほとんど音が出ませんが、それは効果的に音響エネルギーを吸収しているからです。

 
Kripton Mystic White メーカー希望小売価格 8,800円(2枚入り・税込)(商品詳細はこちら

ウールなどで作られた、タペストリーなどを壁に掛けても吸音効果が期待できます。
ただし、吸音措置が行き過ぎると音のメリハリが減少し音楽の躍動感が削がれる、低音過多になって音がもこもこするなどの問題が生じます。そのような場合には、吸音材を減らすか、カーテンを開けて吸音を減らしてください。

天井と床の間で発生するフラッターエコーを低減するために、床の上に絨毯を敷きます。
毛足が長く吸音性の高いカーペットが最適です。カーペットのサイズは、横幅が「スピーカーの設置幅よりも大きく」、縦(奥行き)は「1-2m程度の大きさ」が必要です。

天然素材では「羊毛」が使えます。特にムートンは「悪い音」を吸収し「艶のある音」を反射しますので、スピーカーの前に敷くだけでスピーカーの音が抜群に良くなります。カーペットを敷いた上で、スピーカーの直近に「ムートン」を敷けば、音場の透明感と広がり感の改善に大きな効果があります。

ムートンを中央に置くと、ボーカルの定位感が向上し、声に艶が出ます。
カーテンやカーペットを使ったフラッターエコー対策は、効果が高くさほどコストもかかりません。

■壁のコーナーからの反射を抑える方法

天井のコーナー部分では壁に反って流れる音が集まりぶつかり合って、コーナーを中心に(メガホンを想像して下さい)「圧迫感のある残響音」を発生させます。「天井のコーナー」からの残響を低減するには次のような方法が効果的です。


使用するルームチューニング材は、AIRBOW もや取り君「スマイル」がお薦めです。

天井のコーナー部分は、直径20mm前後・厚さ3~5mm程度の丸いフェルトを放射状に張り付けるとコーナーからの反射低減に大きな効果を発揮します。フェルトとフェルトの距離は15cm~20cm程度が最適で、それよりも細かい間隔で多く張りすぎると、逆に効果がなくなりますので注意してください。

AIRBOW「チューニング・サークル」

 
1,550円(6枚/税別)、3,000円(12枚/税別)、5,500円(24枚/税別) (詳細はこちら

AIRBOW Swing Chipも効果的です。

SWING-CHIP 
AIRBOW スイングチップ  (商品詳細はこちら

φ約10㎜の真鍮製のチップ。オーディオ機器や壁面などに貼り付けて、共鳴を止める効果があります。

スピーカーの配置

スピーカーの配置「高さ」と「壁から離す」ことが重要なポイントです。センタースピーカーは、可能な限り画面中央の高さ合わせたいのですが、サウンド透過型のスクリーンでないと無理です。けれど画像が4Kや8Kになると、サウンド透過型スクリーンの「生地の荒さ」が画質の問題になってきます。かといって、天井や床にセンタースピーカーを取り付けるのは止めるべきです。



できるだけ画面に近いところにセンタースピーカーを設置する

アトモスなどのスピーカーを壁や天井に埋め込むのもあまり良くありません。センタースピーカーを天井や床に設置した場合と共通する問題点は、「スピーカーと平面を繋げる」とその平面が「仮想バッフル」として働き、音が濁り音像が肥大する原因になるためです。スピーカーと壁や天井の間に僅か数㎝の隙間を空けるだけで、この問題は回避できます。天井にスピーカーを取り付ける場合には、できれば「アーム」で天井から離れているモデルをお選び下さい。無理な場合は、ユニットがむき出しになっているものではなく、きちんとしたボックスに入っている製品をお選び下さい。同様な理由で、フロントスピーカーを壁に作ったボックスに埋め込むのも悪い方法です。どうしてもそうしたい場合には、音質は期待できないのであまり高価なスピーカーを使ってもその能力は発揮できないとお考え下さい。

動画でスピーカー配置のポイントを詳しく説明しています。

センタースピーカーの選び方

ほとんどのメーカーは、ツィーターが中央にウーファーをその左右に配置した「横型」のセンタースピーカーをラインナップしています。それが「絶対にダメ」というわけではありませんが、ウーファーが1つの小型密閉型スピーカーが「理想」です。

その理由と、一般的なセンタースピーカーとの音の違いを比較した動画をご用意しました。

センタースピーカー選択・実演動画

音質のチェックは、片方のスピーカーだけで行う。

音のチェックを行うときは「左右を同時に鳴らすべきだ」と考えられていますが、これは間違いです。
その理由をこのページで説明すると長くなるので、とりあえず「音のチェックは左右、どちらか一本ずつを鳴らして、交互に行う」と覚えてください。

スピーカーセッティング実演動画