プライマー primare dvdi-10 一体型 DVDプレーヤー DVDレシーバー 音質 比較 評価 テスト 評判

Primare DVDI-10 DVDレシーバー

試聴 比較 音質 テストリポート

高級オーディオ製品で定評のあるスウェーデン“PRIMARE プライマー”社から、CD/SACD/DVDビデオ(DVDオーディオは非対応)プレーヤー、FM/AMチューナ、i−pod入力端子(接続ケーブル付属)を装備した出力75W/chのレシーバー“DVDI-10”が発売されました。

DVDI-10は最新デジタルアンプを2ch内蔵し、単独でのステレオ高音質再生を始め、1080p対応の高画質HDMI映像出力によるホームシアターユースまで幅広く対応する“万能一体型プレーヤー”です。

PREMARE DVDI-10 ¥340,000(税別) 生産完了しました

外観はPREMAREらしく、フロントパネルには肉厚のアルミが採用されスタイリッシュで美しく仕上げられています。

しかし、天板は2mm程度のアルミの曲げ加工品で実際の質感はあまり高くありません。スイッチ類も見た目は綺麗ですが、動作のがたつきがやや大きく作動音もチープで、見た目より安っぽい感じがするのが少し残念です。

写真写りは抜群です。フロント黒いパネルの左上部が“めくれた”ようになっているのは、傷つき防止のフィルムを剥がさずに撮影したためです。各部の“隙間”も一定で外観はとても上手く仕上がっていると思います。

リアパネル。写真写りが若干悪いですが、必要な入出力が簡潔にまとめられています。スピーカー端子は、Yラグ(スペードプラグ)やバナナプラグも使える“オーディオ水準”のパーツが奢られています。

電源のメインスイッチは、海外製品の多くがそうであるように“リアパネル”に設けられています。フロントのスイッチは電源のリモートスイッチで、主電源は切れません。

付属品
 
電源ケーブル、アンテナ i−pod接続ケーブル、リモコン
主な特徴と仕様 (輸入代理店ノアのHPより抜粋)

オール・イン・ワンのDVDレシーバー
スウェーデン、プライマー社から、CD/DVDマルチ・プレーヤー、アンプ、FM/AMチューナーを内蔵したオール・イン・ワンのDVDレシーバー、DVDI−10の登場です。DVDI−10は内蔵の最新デジタル・アンプによる高音質オーディオ再生はもちろん、HDMI出力を備えた充実したビデオ回路によりCDのピュア・オーディオ再生からDVDのホームシアター再生まで広範囲に対応します。

●高性能AVシステムをシンプルに実現

CDからDVDまで再生可能なマルチ・ディスク・プレーヤー、十分な出力を備えた最新のデジタル・パワーアンプ、HDMI出力も装備した高画質ビデオ回路、さらにFM/AMチューナーに至るまで内蔵して、すべてのオーディオ/ビジュアルに対応できるオール・イン・ワン・AVシステムをシンプルに実現できます

●オーディオ再生に威力を発揮する2.1チャンネル・システム

チャンネルあたり75Wの余裕のある出力パワーをもつ発熱の少ない高効率Dクラス動作のモジュラー・アンプ採用により、オール・イン・ワン・システムの限られたスペースに最適な高音質ステレオ・パワーアンプを内蔵しています。また、アクティブ・サブウーファーに接続できるサブ・ウーファー出力の装備により、スケール感あふれる2.1チャンネル・システムが簡単に構築できます。

●HDMI出力も装備した充実のビデオ回路設計

アナログ・デバイセズ製の高性能ビデオDACを採用した最新の映像処理回路によりDVDビデオ・ディスクの高解像度再生を実現しました。また、1,080pアップ・スケーリング対応のHDMI出力も装備して、最新のAV機器との高画質デジタル接続が可能です。

●AVコントロール・センターに匹敵する豊富な入出力

3系統アナログ入力、2系統アナログ出力、サブ・ウーファー出力、光/同軸デジタル出力、HDMI/コンポーネント/Sビデオ/コンポジット映像出力、3.5mm入出力ジャックなどの豊富な入出力端子を装備し、AVコントロール・センターとしても機能します。

●システム・アップが可能なプリアウトおよびデジタル出力

プリアウト端子からの出力を外部パワーアンプに接続してアンプの出力をアップしたり、デジタル出力をAVアンプに接続してマルチ・チャンネル再生を構築するなど、さまざまなシステム・アップが可能です。また、アナログ入力は内蔵のA/Dコンバーターによりデジタル信号に変換されてデジタル出力されますのでデジタル録音などに利用できます。

●iPodの高音質再生などのマルチメディア機能を搭載

付属の専用接続ケーブルによりiPodを接続してiPodの高音質再生やコントロール/充電が可能です。また、MP3やJPEG画像CD-ROMの再生にも対応しています。

●40局のプリセット・メモリーが可能なFM/AMチューナー

内蔵の高性能FM/AMデジタル・シンセサイザー・チューナーは40局のプリセット・メモリーが可能で、気軽に高音質FM/AM放送が楽しめます。

●優美なデザインと安全設計

トップパネルに操作ボタンを配置したプライマー独自の優美なシャーシー・デザインと過電流/過熱/DC保護回路による安全設計は、いつまでも快適に安心して使用できます。 

プリアンプ部
アナログ入力 3系統RCAライン入力(2.5Vrms/50kΩ)
3.5mmステレオ・ミニジャック(2.5Vrms/50kΩ)
アナログ出力 RCAプリ出力(100Ω)、サブ・ウーファー出力、
RCA録音出力(2.5Vrms/100Ω)
デジタル出力 TOSオプティカル、RCA同軸出力(75Ω)

DVDプレーヤー部
対応メディア CD、ビデオCD、スーパービデオCD、CD-R、CD-RW、
DVD-R、DVD+R、MP-3、JPEG
ビデオ信号 NTSC/PAL、垂直解像度500本以上
HDMI出力 480p/576p、720p、1080i、1080p
プログレッシブ出力 480p/576p
ビデオ出力 RCAコンポジット出力(CVBS)、Sビデオ出力、
コンポーネント出力(Y/PB /PR)、RGB(SCART端子)
ビデオS/N比 -75dB

アンプ部
方式 Dクラス動作アンプ
出力 2 x 75W (8Ω)
周波数特性 20Hz − 20kHz (+/-0.3dB)
歪率(THD+N) 0.1%以下 (20Hz-20kHz/10W)

チューナー部
FMチューナー 受信周波数帯域 76.0−91.0 MHz
実用感度 10dBuV(モノラル)、20dBuV(ステレオ)
AMチューナー 受信周波数帯域 520−1710 kHz
受信局プリセット数 40

全般仕様
消費電力 210W (アイドリング時)、 6W (スタンバイ時)
外形寸法 450(W)x110(H)x350(D)mm
重量 8kg
音質テスト 

試聴は、Vienna Acoustics T3Gとの組み合わせで行いました。

 CD PCM 44.1KHz/16Bit ANIPA

上松美香

UCCS-1088

1曲目のアルパの音は、高級オーディオとの組合せで聞き慣れているそれと比較するとやや苦しげで引きにくそうな印象を受ける。原因は、音の立ち上がりのシャープさが不足しているからだが、それはあくまでも高級オーディオとの比較でDVDI-10単体から出ていると音と考えると高い評価を与えられる。

2曲目はアタックが1曲目よりも弱められていることもあり、1曲目ほど苦しげな印象はない。むしろ軽快に感じられる。DVDI-10の良さは「楽器の音色」が美しいことで、これは私が今まで聞いた「デジタルアンプ」の常識を覆す。なぜなら国産品に搭載されているデジタルアンプのほとんどは「音色が単調=色彩がモノトーン」に感じられる物が多かったからだ。DVDI-10はそれらとは全く違って、音色が美しい。私に音色が美しいと感じさせた初めてのデジタルアンプだ。

3曲目ではリズムの軽快さは相変わらずだが、低音がやや痩せていることがわかる。実は、このテストに先立ってDVDI-10とVienna Acoustics T2Gの組合せで、NORDOSTのスピーカーケーブルテストを行った。その時には「低音の弱さ」は全く感じられなかった。筐体の軽さからも伺えるが、DVDI-10は電源が少し弱いのかも知れない。組み合わせるスピーカーは、T3Gよりも少し小型の製品を選んだ方が良さそうだ。とにかく、今回はT3Gとの組合せでテストを続けることにした。

アルバム一枚を聞いてみたが、DVDを搭載するにもかかわらず、良くできたCD/SACDレシーバーの水準に匹敵するサウンドを聞かせてくれた。DVDI-10の独自の魅力は音が“キュート”だと言うことだ。音色が明るく、色彩が豊かなので演奏を実に楽しく聞ける。まるで小型のオルゴールがなっているような、かわいらしい音がする。

特筆すべきは「透明感の高さ」。多くのレシーバーが小さな筐体にあらゆる回路を所狭しと搭載しなければならないこと「ノイズの遮断」が不十分となり、高域に濁りや曇りを生じている。その点DVDI-10は、PREMAREで培った高度なオーディオ設計技術が生かされ、嫌なノイズ感が全く感じられない澄みきった見通しの良い高域が再現される。「透明感」、「滑らかさ」、「繊細さ」に関しては、かなり高級なオーディオ製品に匹敵する高い実力を持っている。DVDプレーヤーを搭載しているレシーバーとしては、他に類のない高音質を実現しているのは間違いがない。

リスニングルームの環境が静かであればあるほど、DVDI-10の「透明感の高さ(S/Nの良さ)」が際立ってくる。音の影に隠れた小さな音が浮き上がるように再現され、音の広がり感、見通しの良さは抜群である。

 CD PCM 44.1KHz/16Bit DJ KAORI'S JMIX-2

DJ KAORI

UMCK-1272

アルパに続いてこのクラスの製品で最も良く聞かれると考えられるPOPSを試聴する。

1曲目出だしのエフェクト電子音の切れ味は抜群。シャープで前後左右への移動量も大きい。この音の出方なら、映画を観たときの迫力も抜群だろう。

ボーカルの表情はとても細やか。1枚目のソフトでも感じたことだが、音が重なったときの分解能が非常に高く、重なった音が混ざらず綺麗に分離する。例えば、伴奏とボーカルが異なる位置関係の空間にそれぞれが濁らずに定位する。このHiFi性能はDVDプレーヤーが付いていないと考えても、このクラスのレシーバーでは出色の存在だと感じられる。

しかし、その高域の素晴らしさの反面低音は明らかに少なく、中低音は痩せて聞こえる。音は弾けて楽しく、明瞭度も高く、広がりも素晴らしいのだが、低音のパンチ力だけは不足気味だ。ラウドネスやトーンコントロールが付いていれば、それらを使って低音をブーストできるのだが、残念ながらDVDI-10には一切のトーンコントロールが搭載されていない。レシーバとしての性格を考えると、この点にはやや疑問が残る。

DVDI-10の低音はあるところまではフラットに出て、そこから急になくなってしまう感じだ。試しに小型ブックシェルフスピーカーのSonusfaber Minima VintageやT3Gよりもやや小さめのトールボーイ型スピーカー Grand Piano Domusを繋いで聞いてみたが、やはり同じ印象だった。低音は出てくるが、そこからぐっと押し込まれるような圧迫感が足りない。だから耳に聞こえても、体に響かない。

スピーカーを変えても低音がやや不足するという印象は変わらなかったが、Minima Vintageとの組合せでは、色っぽいスィートな音を出し、Grand Piano Domusとの組合せでは、中域に厚みのある音が出た。同じソフトを異なる2種類のスピーカーで聞いたことで、DVDI-10はスピーカーをDVDI-10の音で鳴らすのではなく、スピーカーの持ち味を引き出す鳴ら仕方ができる製品だと分かった。

欠点として考えるなら、それは「スピーカーをコントロールする能力が不足する」とも言えるが、スピーカー本来の音を引き出すこういう鳴り方も悪くない。

 SACD DSD BACH CONCERTOS

HILARY HAHN

LOS ANGELES
CHEMBER ORCHESTRA

JEFFREY KAHANE

474 639-2

DVDI-10は、SACDに対応していないため、CDレイヤーが再生される。

音の粒子はさらに細かくなり、楽音は滑らかさを増す。バイオリンの音が流れるように流麗で、非常に心地よい。主旋律と副旋律、伴奏とコンサートマスターを務めるヒラリー・ハーンとの楽音の分離は見事。一切の濁りなく、ハーモニーが形成される。生演奏と比べると、その分離感は明らかに美しすぎるが、オーディオ的な着色として好ましく音楽の楽しさを際立たせる。

低音はやはり不足するが、アコースティックな音源の場合中高音が正確に再現されると人間は「頭の中で低音部を作ることができる」ために、POPSで感じたほど低音の痩せは問題とならない。これは、AIRBOW IMAGE11/KAI2のような小型スピーカーにも共通するが、低音から高音にかけて物理的に自然な倍音構造を持つアコースティック音源の場合、中高音が再現されれば低音は頭の中で作られる。一種の錯覚(錯聴)であるが、人間にはそれが錯覚だとは感じられないため、実際に低音が出ているように感じられるのだ。

これに対し、POPSなどに使われる電子音源はアコースティック楽器のような物理的倍音構造を持たない。そのため、脳は倍音構造から「元の音を想像する」という認識を行わず、頭の中で低音が作られない。従って電子音の場合、アンプやスピーカーの能力が足りなければ低音は出ているように感じられなくなってしまう。

過去にも何度か、この問題については言及している。人間は「思い込み」で情報を処理することが多く、錯覚を起こしやすい。錯覚については「視覚に起こるもの」がよく知られているが、聴覚でも触覚でも同様に錯覚による「偽情報」は様々に生じている。測定器はパソコンによる音響情報処理では錯覚は生じないため、しばしば人間の感覚と異なる結果が出てしまう。感覚とデーターが矛盾した場合、どちらを重要視するか?それは、考えるまでもない。なぜなら、測定データーは「人間の感覚をより詳細に分析するため」に用い、「物理学や数学を人間に無理矢理こじつけるため」に用いてはならないからである。本来はデーターと人間の感覚に矛盾が生じたら「データー取りの方法を見直す」べきであり、人間の感覚を疑うのは本末転倒である。オーディオにおいては、特にそうならないよう注意しなければならない。

このような難しい問題を書きながら、DVDI-10で音楽を聞いている。しかし流れる音楽は全く思考を妨げない。それどころか、難しい問題できしむ頭を潤滑するかのように緊張を解きほぐしてくれる。低音が少しくらい不足しようが問題ではない。心を落ち着かせ、気分を和らげる。そんな素晴らしい音がDVDI-10からは流れてくる。

アンプ内蔵か?セパレート方式か?音楽ファンにとってそんなことは問題ではない。こういう「心地よい音」を自室で聞くために、私たちは高級オーディオを求めるのだから。

Live at the Montreal Jazz Festival (Dol) [DVD] [Import] DVD VIDEO DOLBY DIGITAL 2.0 / 5.1ch LIVE AT MONTREAL
JAZZ FESTIVAL

Diana Krall

VERVE

B0003780-09
輸入盤

逸品館がDVDビデオの音楽ソースとして可能性に気付き始めた2000年頃から10年弱経過した。CDの衰退、ダウンロードの台頭が大きな原因なのは疑いようがないが、ここ数年でDVDビデオベースの音楽コンテンツは一気にその数を増やしている。今回テストに用いたDVDビデオソフトは、AMAZONからたった\1,532で購入したものである。

ライブの熱気が映像とともに収録され、全13曲は音質も非常によい。演奏の良さは、これほどの大舞台であるから当然のことだ。レーベルもJAZZの老舗VERVEだから、文句のつけようがない。JAZZファンには垂涎の一枚だ。それがこの価格!当然、つまらないCDソフトには手が伸びなくなる。ブルーレイが台頭しつつあるが、この手のソフトはこれからもどんどん発売されると思う。世界的にみれば、DVDビデオの方が需要が大きく、そのため価格も安く出来るというのが、その理由だ。

最新のdtsやDOLBY DIGITALは、CDを超える96KHz/20-24bitで収録されているが、そのような特殊なディスクを除いてもDVDの音声サンプリング周波数はCDよりも高い48KHzが採用されている。CDのサンプリング周波数は44.1KHzなので、DVD(業務用録音機器はすべて)48KHzと数字の上ではほんの僅かしか違わない。しかし、実際に録音で両者を比較すると「高域」の伸びやかさが全く違うことに驚かされる。楽器の倍音で表現するなら、48KHzで収録される倍音は44.1KHzのそれよりは、一オクターブは優に高い周波数まで収録されているように感じられる。

CDが音質的に不利なのはそれだけではない。業務用録音機器に使われている音声サンプリング周波数は、48KHzである。ビット数はさすがに16Bitではなく20-24bitが使われる。ビット方向の圧縮(20-24bitを16bitに変換する)も音質には影響するが、慎重に配慮すればそれは軽微なものに留められる。しかし、音声サンプリング周波数の48KHzから44.1KHzへのデジタル変換(D-D-変換)は、音質に甚大なる悪影響を及ぼす。そのため、音質に配慮するスタジオの多くでは、48KHzから44.1KHzへの変換をデジタルではなくアナログを介して行う。つまり、48KHzで一旦D/A変換し、信号をアナログに復元した後に44.1KHzでA/D変換し、再びデジタルに戻しているのだ。

DVDでは、この「音声サンプリング周波数の変換」が不必要となる。さらに前述したように高音質を狙うDVDビデオソフトでは96KHz/20-24bitが圧縮されて収録されている。44.1KHz/16biTが非圧縮でリニアに収録されているに過ぎないCDとの大きな技術的な相違である。CDよりもDVDの音声技術は、世代が圧倒的に新しいのだ。

その良さをDVDI-10は見事に引き出してくる。SACDほどとは言わないが、CDを確実に越える音が聞ける。高域の伸びやかさ、会場の空気感、楽器のプレゼンス、そういう「おいしさ」が随所に感じられ、知らない間に演奏に引き込まれて行く。SACDでもそう感じたが、ソフトがどうとか?アンプがどうとか?スピーカーがどうとか?そういう「オーディオ的な呪縛」から解放された、爽やかな気持ちで音楽が聴ける。これは音楽ファンには、堪えられない感覚だろう。

ブルーレイの台頭で音の良いDVDプレーヤーが一気に市場から消えた。残念なことだが、それと同時に3万円超で購入できるブルーレイ・プレーヤーが市場に登場した。それらの製品では残念ながらまだSACDは聞くことができないが、私が考えたよりも早くDVDプレーヤーのポジションは、ブルーレイ・プレーヤーに変わりつつある。しかし、DVDがそうであったように、登場から音質が良くなるまでには10年近い時間がかかるかも知れない。それとも、デジタルの進歩はその「熟成期間」さえ縮められるのだろうか?期待と不安が交錯する。

話が大きくされたが、音質評価に戻ろう。

CDとの違いは、音の粒子が細かいことと、音のエッジが滑らかなことだ。CDでは、ほんの少しだが音のエッジに荒れを感じることがあった。SACDやDVDビデオではそれがまったくなく、滑らかで自然な音が聞ける。高域方向の音抜けも自然で、どこかで切れたような違和感はない。拍手の音も肌の柔らかさ、体温の温かさが感じられ、出来の悪いデジタルのような「ペナペナした感じ」がせず、耳障りがとても心地よい。

ボーカルは暖かく、ニュアンスも豊か。ベースは弾み、ピアノは輝く。ハイハットのシンバルが、それにアクセントを加える。誇張した感じや媚びた感じもなく、楽しいJAZZライブの様子が全身にひしひしと伝わってくる。いい音だ。

小澤征爾&ウィーンフィル ニューイヤー・コンサート2002 [DVD] DVD VIDEO PCM 2.0ch DOLBY DIGITAL / dts 5.1ch NEW YEAR'S CONCERT
2002

WIENER PHILHARMONIKER

小澤 征爾

TDBA-0015

記憶が間違っていなければ、このDVDソフトは発売当時\4,000位したのではないかと思う。しかし、調べてみると今では、たった\1,779で販売されているのに驚いた。同様のコンテンツをNHKがブルーレイで製作し2008年に発売したソフトが\7,800(NSBS-12133)だから、単純計算でDVDソフトならブルーレイの1/4近い価格で買えることになる。1枚対4枚である。単純計算では、ブルーレイ1枚でDVDなら4枚買えることになる。

ウィーンで毎年開催される恒例のニューイヤー・コンサートの2002年がライブで収録されたこのディスクは、私にDVDビデオの良さを確信させた初めてのソフトである。音声はPCM/2chとdts/DOLBY DIGITALの5.1chの3つの方式で収録されている。発売当初は、2chよりサラウンド。DOLBY DIGITALよりも音の良いdtsを好んで聞いていた。DVDI-10はステレオでしか再生できないこと、時代とともにDOLBY DIGITALの音質が大幅に向上したこと、の二つの理由から今回は音質テストに先立って、3つの方式の音質を聞き比べてみた。dtsとDOLBY DIGITALはDVDI-10の設定で2chにダウンミックスされている音を聞く。

PCMの音調はCDと似ている。ディスクが異なるので明確ではないが、高域の伸びやかさ空気感の細やかさでCDを明らかに上回るように感じられる。CD+AMPで50万円クラスに匹敵する良好な音質が得られる。レンジ感も十分で音楽を楽しめるが、ややストイックで窮屈なイメージを感じさせる音だった。

DOLBY DIGITALにトラックを変える。私にとってその音は、明らかにPCMよりも好ましい。中域が滑らかで楽器の数が一気に数倍に増えたかと思うほど、音の重なりが複雑でクリアーになる。交響曲の醍醐味、ニューイヤー・コンサートの楽しげで華やかな雰囲気が見事に伝わってくる。暖かいアナログレコードのような音が聞けた。

最後にdtsにトラックを変える。音数はDOLBY DIGITALより少し増えたような気がするが、それは主に高次倍音に現れて、中域のウエイトはDOLBY DIGITALよりも薄くなった。PCMほどではないが、ややクリーンで分析的な感じがする。ダイアナ・クラールのJAZZと比べると音がややぱさついて粉っぽく感じられることがあるが、情報量(音の細やかさ)的には十分で、DVDI-10の高い実力を充分に味わうことができた。

DVDI-10による試聴では、PCM / DOLBY DIGITAL / dtsのそれぞれのサウンドが明確に異なった。PCMが「原音(マイクの捉えた音)」に忠実だとすれば、dtsは「現場の音(会場で聞く音)」を連奏させ、DOLBY DIGITALは「会場の雰囲気」を彷彿とさせる。同じ演奏が収録されているにもかかわらず、音声収録方式(デジタルのフォーマット)が変わると、全く違ったコンサートを聴いていると錯覚するほど雰囲気が変わるのが面白い。

以前の私なら「本物はどれだ!」と血眼になったかも知れないが、今はそんな無意味なことはしたくない。どう頑張ったところで「本物と同じ音」がたかだかオーディオから出るはずがないことを承知しているからだ。いかに「本物を彷彿とさせる雰囲気が出せるか?」それがオーディオの真骨頂だと今は思う。

そういう意味では、DVDI-10ではDOLBY DIGITALにもっと大きい可能性を感じる。しかし、dtsの音も捨てがたいしPCMも悪くない。嬉しいことにDVDビデオではその3種類を「簡単なメニューそうさによる切り替え」で選ぶことができる。その時の気分に応じて、設定一つでプレーヤーの音を簡単に変えられる。それもCDプレーヤーで良くある「デジタルフィルターの切り替え」のような、小手先のごまかしではない。エンコード−デコードの方式から根本的に音が変わる。同じ会場で座席を変えるように。あるいは、同じコンサートを違う日に聞くように。そんな、バリエーションが設定一つで選べる。音楽ファンにとって、これは非常に魅力的なことだと思う。収録時間も長く、演奏途中でディスクを変えなくてよいのも嬉しい。そして、今やDVDビデオソフトはCDよりも安く買える!

総合評価

音源がアナログからデジタルになってから、オーディオの芸術性は徐々に薄らぎ、反比例して技術的興味を強く求める風潮が強くなったのは気のせいではないと思います。

オーディオマニアが、いまだにレコード・プレーヤーにこだわるのは、人間が五感ですべてを感じながら「自分が音のマスターである」という思いを強く感じながら行う「レコード演奏」という行為に対し、スイッチ一つで何も知らなくても「音が出てしまう」CDでは「自分はCDプレーヤーの従者であるような感覚」から逃れられないからではないでしょうか?

古典派のオーディオマニアは、デジタルの便利さによって「人間が介在する(介在できる)範囲が小さくなった」のが不満で、いまだにレコードとレコード・プレーヤーを手放せないのだと思います。

それは、双六やトランプがTVゲーム(パソコンゲーム)に置き換わって「装飾性(芸術性)」が薄らいだのと似ていると思いませんか?

現代では、「チェス」や「将棋」、あるいは「囲碁」は、PCを使えばディスプレイ上で世界中の愛好家と対戦が可能です。見ず知らずの相手と言葉すら通じなくとも「対戦」は可能です。しかし、その「匿名性(秘匿性)」を利用すれば、現実では逃れられない危険からスイッチ一つで逃避することが可能です。

そんな世界の「道具」である、ディスプレイやキーボード、ネットワークケーブルには、「真剣勝負」の現場で使われる、碁盤盤、将棋盤、チェスの駒に見られるような「芸術的装飾」が必要とされないのはなぜでしょう?

駒の材質、重さ、手触り。

盤に駒を打つときの響き。

その場を取り巻く真剣な雰囲気や空気感、そして対戦相手の表情。

レコードとCDの違いも似ていると思います。大切なレコードの傷をつけないように針を落とす瞬間の緊張は、CDをトレイに入れてセットする時には感じられません。針圧を変え、アームの高さや角度、アンチスケーティングを調整し音を整える。日本人が好む「求道的な感覚」はレコードに強く、CDには薄いのは疑いようのない事実です。

アナログとデジタルの違い。現実の対戦とネットワークゲームの違いは、「真剣味を五感で感じられるかどうか?」だと思います。その「真剣味」を増すために「装飾」がある程度の役割を果たすのではないでしょうか?あるいは、張り詰めた「真剣味」を緩和するのが目的かも知れません。

「真剣味」、あるいはそれに匹敵する緊張感を感じられるかどうか?趣味の世界では、それが何よりも大切だと思います。五感を研ぎ澄ますことによって、見えない何かを見、聞こえない音を聞く力を試し、それを磨く。自分の限界を命のやり取りなしに、試すことを可能とすることがゲーム(あるいは趣味)の本質です。趣味の世界では、人は必然的に高価なものをは求めますが、それも本能的な限界への挑戦だと思います。

そして求道的な

はたして、CDやデジタルにそれが叶えられるのでしょうか?

話は変わります。

CDがつまらないと言いましたが、CDの技術的な広がりを阻害しているものに「オレンジブックの存在」があげられます。CDから音を出すために必要な方法は、「オレンジブック」という技術(規格)書によって明確かつ厳密に定められています。オレンジブックに準拠しなければ、CDプレーヤーと呼ぶことはできません。デジタルの初期、まだ一般的な技術水準が低かったときには、この「オレンジブックの存在」は音質改善に役立ったでしょう。しかし、現在のように一般的なデジタル技術の水準が飛躍的に向上した今となっては、それが「不要な足かせ」になっている部分も少なくないと思います。

「PCの音がピュアオーディオよりも良い」と主張されることがありますが、それは「オレンジブック」に準拠しない自由な設計やデジタル−アナログ変換プロセスが選べることは一因として「ある」と思います。しかし、それらのデジタルノイズの処理やアナログ回路の設計は、ピュアオーディオの水準と比べてあまりにもお粗末です。

オレンジブックの存在によって、「あまり自由に音を選べない(音を作れない)CDプレーヤー」に対し、今回ソースにつかったDVDプレーヤーでは「音声フォーマットを切り替える」あるいは「ダウンミックスの方法を切り替える(DVDI-10ではできません)」など、様々な設定により「聞く音をCDよりも簡単かつ、積極的に選ぶ」ことが可能です。

また、特定のデジタルデバイスがメーカーの垣根を超えて共用されることの多いCDプレーヤーに比べ、DVDプレーヤーに搭載されるデコーディングIC(様々なデジタルフォーマットをDACで変換可能なデジタル信号に変換する機能を持つIC)とDACチップ(デジタル信号をアナログ信号に変換する機能を持つIC)のバリエーションはより豊富で、それらの組合せによる「音作りの可能性」には膨大な可能性があります。このようにDVDプレーヤでは、人間の介在できる箇所がCDよりも遥かに多く、それがDVDプレーヤーをオーディオ製品としてCDよりも「面白い」、「楽しい」と私に感じさせるのでしょう。

しかし、DVDプレーヤーの「音の悪さ」は、最近までPCオーディオと同じでした。搭載されるインバーター電源のローノイズ化やお粗末なアナログ回路の為に、ピュアオーディオ機器よりも音質は劣るとされてきたのです。しかし、逸品館はAIRBOWで先陣を切って「ピュアオーディオの音質を持つDVDプレーヤー」を生み出すことに成功し、その後各社がから同様の音質を考慮したDVDプレーヤが発売されました。今回テストしたPRIMAREからDVDI-10は、その思想を一歩進めた製品のように感じます。あまりにもブルーレイが早く登場しすぎたために、このような「音の良いDVDプレーヤー」がいつまで生き残れるのか?疑問はありますが、動き出したこの流れはブルーレイ・プレーヤー、やがてはPCにも引き継がれて欲しいと願います。

デジタルが生まれたから、まだたった50年も経ちません。バーチャル・リアリ-ティーが進化したのは、ここ10年のことでしかありません。そんな短期間では、技術は文化や芸術の水準にまで達することはできません。便利になり、安くなることが精一杯です。それが芸術のレベルにまで、高まるのにはまだ少し時間が掛かりそうです。

では、アナログは復活するのか?

それもあり得ません。私自身レコードは1000枚近く持っていますが、それを聞くことはほとんどありません。なぜ?不便だからです。先ほど「ネットワーク対戦ゲーム」の話をしましたが、音楽ソースも「ネットワーク配信」が増えて行きます。そうすれば、音源は否応なしに「PCのようなもの」に近づいて行きます。CDプレーヤーのようにトレイにディスクをセットすることもなく、ただスイッチを入れるだけで、好きなときに好きな音楽が聴ける。それは、果たして進歩なのかどうか?私には分かりませんが、動き出した流れは変わらず、止まることもありません。

ただ今回のテストも含め「救い」に感じるのは、デジタルがCDという呪縛から解き放たれることで「自由度が増す」ということです。DVDで再生する音声フォーマットを選ぶように、PCでは再生するときに使用する「プログラム」が選ぶことで音質が変えられます。また、多機能なプログラムを使えば詳細な音質設定も行えます。そうなれば、再び「人間がソースを演奏する(人間の介在するウェイト)」が大きくなります。もちろん、同時に「音がオモチャにされる危険性」も大きくなりますから、オーディオ雑誌やPC雑誌ではそうならないように、ユーザーをきちんと啓蒙することを怠ってはなりません(それが一番難しいと思いますが)。

遠くない将来、CDプレーヤーすら現在のレコード・プレーヤーのような「懐古趣味的装置」になるでしょう。その時こそデジタルはCD(オレンジブック準拠)という古い枠組みを抜け出し、アナログよりも大きな花を咲かせて欲しいと心から願います。

利便性と芸術性のせめぎ合い。はたして労苦や困難だけが芸術の深さを生むのでしょうか?その答えを得るには、今しばらくの歴史の審判を待たねばならないでしょうが、私が望むのは技術主導・技術誇示のオーディオではなく、「道具を使いこなす面白さ」をクローズアップできるオーディオの復活です。胸を張って、ソフトを「演奏する」と言えるようなオーディオへの回帰。

DVDビデオソフトから3種類の音を取り出せたPRIMARE DVDI-10に、そういう新たなピュア・オーディオの未来への可能性を垣間見たような気がしました。

画質について

S端子映像出力

派手さはありませんが、色は濃く中間調も豊富です。放送局で見られるような、控えめだけれど情報が多く質感が高いという印象でした。

HDMI映像出力

S端子映像出力とほぼ同じ傾向で、鮮やかではないものの色の質感がいい表現でした。ノイズ感も少なく、動きも滑らかです。

コンポーネント映像出力

質感の高い表現は良いのですが、HDMI接続に比べるとノイズ感が増し、画質はHDMI接続が明らかに有利でした。更にコンポーネント接続時は、HDMIの出力解像度が制限され、設定を戻すにはセットアップメニューに入る必要があるため、HDMIとコンポーネント両方を使い分けるのは難しと思われます。

確認中
HDMI接続の際にOPTOMA HD803やPIONEER KUROは正常に表示できましたが、SHARP LV-52TH1は入力信号が「対応外信号」と表示されたり、画面が出力されず不安定でした。

また、S端子による接続でもメニュー画面が縦に流れて同期が乱れたり、上手く表示されないことがありました。

ヨーロッパのTV信号が日本とは異なる「PAL方式」が採用されている。HDMIはPRIMARE DVDI-10に関わらず相性問題が生じることがある。などの理由により、日本市場での画質出力の検証が充分に行われていなかったか可能性があります。この問題が「貸し出された試聴機だけ」であれば良いのですが、販売される製品も同じ問題を抱えているなら改善が必要です。輸入代理店のノアに問題点を報告しました。発売される製品では改善されているはずです。

2009年 3月 逸品館 代表 清原 裕介

 

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インターネットショップの多くは連絡方法を「メール」に限っていますが、逸品館は“店頭販売をする専門店”です。
アドバイスが必要な「品物選び」は、メールよりも迅速・確実で「生の声」・「スタッフの雰囲気」を感じられる
「お電話でのお問い合わせ」をどしどしご利用下さい。

お問い合わせ先・営業時間

1号館・午前10:30〜午後7:30 (定休日なし:年末年始及びお盆、臨時休業を除く)
住所 ・〒556-0004 大阪市浪速区日本橋西1-7-28 常盤ビル1F
電話 ・ 06-6644-9101(代表)  fax ・ 06-6644-6990

3号館・午前11:00〜午後6:00 (定休日:毎週水曜・木曜、平日はなるべくご予約下さい)
住所 ・〒556-0005 大阪市浪速区日本橋5-18-25 アリタビル6F
電話 ・ 06-6636-2917(代表)  fax ・ 06-6636-2916

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