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AET EVO-0605SHR AIRBOW MSU-Mighty・X Tension QED Performance Audio2・Reference Audio2 Signature Audio40の音質比較をYouTubeで見る |
RCAケーブル音質比較
前回テストしたQEDのスピーカーケーブルは、HarbethやRogersなどの著名なイギリス製スピーカーを思わせるスィートでリッチなサウンドで、内外の高級ケーブルに迫るほどの音質に驚かされました。それなのに驚くほど低価格なのは、QEDがスピーカーケーブルだけではなく、RCA/XLRのラインケーブルや、同軸/光/USBなどのデジタルケーブル、HDMIなどの映像ケーブルなどの生産も行う、大規模AVケーブル総合メーカーだからです。
今回は、QEDのラインナップから届けられたRCA試聴ケーブルは、2014年に欧州でお薦めモデルの章典を授かっているお墨付きの最新モデルです。早速このQED自慢のRCAケーブル・ラインナップに、BELDEN、AET、AIRBOWのケーブルを加えて比較試聴を行いました。ただし、試聴に使ったBELDEN 1192A(マイクケーブル)は、切り売りケーブルを丸ごとクライオ処理し、端末にクライオ処理済みスイッチクラフトプラグを使用、接続にはオーディオ用高音質ハンダを用いた、特別なものです。そのため、一般的に販売されている加工済みRCAケーブルの1192Aと比較して、音の細やかさ、音像の引き締まり感(ピント感)が大きく改善されているはずです。このケーブルは、逸品館の録音機材用マイクケーブルとして開発したもので、市販していません。
今回の比較試聴は、スピーカーケーブルの評価と同じように、それぞれのケーブルの音質を伝えやすくするために、BELDEN 1192A(クライオ処理済み)をおおよその基準(普通:5点)として次の7つの評価軸を使い、相対的なスケールで採点しています。
高音・中音・低音・躍動感のスケール。
1:少なすぎる / 2:とても少ない / 3:少ない / 4:やや少ない
5:普通
6:やや多い / 7:多い / 8:とても多い / 9:多すぎる
色彩感(楽器の音色/色彩感の濃さや変化の大きさ)、広がり感(音場の広がり/ステージの立体感)、生々しさ(リアリティー)のスケールもBELDEN 1192Aを普通(5点)として、そこから相対的に色彩が濃い、広がりが豊か、生っぽい(自然な音に聞こえる)と採点を増やし、そうでない場合(不自然に聞こえる、違和感を感じる)は点数を減らしています。それぞれのケーブルの音質傾向を感じ取っていただくための参考になればと思います。
ただし、これらの項目は相対的な感覚ですし、また個人的な感覚の違いも大きいので、あくまでも参考に留めてください。また、RCAケーブルは特に接続する機器の組み合わせによって音質が違って感じられることがありますので、その点につきましてもご留意をお願いいたします。
再生機材
今回の再生機材には、ケーブルのつなぎ替えを簡単にするために、プレーヤーにAIRBOW HD-DAC1 Specialを使いました。また、スピーカーには機器の比較試聴に最もよく使っている、Vienna Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)を使いました。
Vienna
Acoustics Beethoven Concert Grand(T3G)
音質テストの概要
各ケーブル評価には、iPodタッチにWAVで収録したテスト用の音源を使いました。
Apple iPod Touch(第5世代) |
AIRBOW
HD-DAC1 Special |
純正付属品 |
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試聴した音楽(CDからリップしたWAVファイルを試聴)
Grace
Mahya Last Live at DUG |
Time
Warp |
Super
Fly Box Emotion |
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先にテストしたBELDENスピーカーケーブルはオーディオ用途には少し音が硬く、音色も単調だった。それに対してマイクケーブルは、音が柔らかく広がり豊かで色彩も多彩だ。ルート66を聞くと、シンバルの音、トランペットの高音は、結構鮮やかに鋭く鳴る。高音の表現力は1万円で購入できるケーブルの標準を超えているようだ。ピアノは、中低域が少し膨らむが、嫌な感じではない。ボーカルは艶があり、若干ウエットだが、ライブ録音のこのソフトには、マッチしている。 クライオしているとは言え、ケーブルそのものの価格は安い割に音の素性は抜群によい。また、DCTV処理済みプラグや高音質ハンダによる端末フィッティングが音を引き締め、輪郭を強くしているのかも知れない。ややピントが甘いものの雰囲気が良く、楽しい音でルート66が鳴った。
イントロの低音部の複雑な音がキチンと出る。中低音はやや濁って音がどろどろするが、それほど気にならない。音の広がりに優れ、楽器や音源の前後左右の位置関係がしっかり出る。S/Nと極小音量の再現性がやや悪く、音量の小さいところは無音に感じることがあった。
少し膨らんではいるが、低音がしっかり出る。リズムや音階はしっかりしている。ボーカルは少し曇りがあり、前に出にくく伴奏に埋もれる感じがある。 音の分離はさほど良くないが、音が縺れて団子にならずうるさくはない。やや緩いが、明るくパワフルな音質で誕生が鳴った。 BELDEN
1192A(クライオ処理済み) 総評 オーディオ用に使った場合は、中低音が少し膨らみがちになるのと、高域が優しく(音の角がやや丸く)なってしまうが、バランスが良くでとても聞きやすい。特に、ライブには適している。 |
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BELDENに比べて音のほぐれが悪く、音が広がらない。低音は出るが中低音が膨らみ気味で、音が濁る。ドラムの音が鈍く(皮の張りが緩く感じる)、ボーカルも抜けが悪く前に出ない。高音は細く硬い。 音場の前後関係が浅く、伴奏とボーカルが同じ位置で鳴っている。音量は変えていないが、BELDENよりも音が小さく感じられ、音楽の躍動も小さい。 楽器のドライブ感、演奏のグルーブ感も出ない。BELDENの生き生きしたライブの魅力が、かなり薄れてしまった。
イントロの低音はしっかり出てくるが、ルート66と同じくBELDENよりも音量が小さく、音が広がらない。BELDENに比べて立体感に乏しく、音が躍動せずスピーカーとスピーカーを結ぶ線上にペタリと張り付いている感じ。こぢんまりと鳴っている。 弱音部ではBELDENで聞き取りにくかった音が聞こえるが、やはり高音は硬く細い。
この曲では音量は出ているが、楽器とボーカルの分離が悪く、音がほぐれず塊になってうるさく感じられる。 鉛色?のベールの向こう側で音が鳴っている感じ。出来の悪いイヤホンのように音がごちゃごちゃと混ざってしまう。 AET
EVO-0605SHR 総評 |
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AET EVO-0605SHRに比べると、音のベール感が消えて音場の透明感に優れ、高域もスッキリ伸びている。バランスが良く、音色の変化に優れている。その点はBELDEN 1192Aに似ているのだが、、Perfomance Audio GraphiteはBELDEN 1192Aよりも響きが少なく、低音が引き締まり、量感は少し減るのだがBELDEN 1192Aでぼやけがちな低音楽器の音階と、リズムの刻みがキチンと出る。低音の緩さが解消するので、ピアノのタッチもクッキリする。ただし、音が引き締まっている分、低音の量感とドライブ感はBELDEN 1192Aほどではない。 Perfomance Audio Graphiteは、BELDEN 1192Aよりも音が細かいが、やや精緻で音調がややクールなイメージでルート66を鳴らす。また、BELDEN 1192Aはライブ感が強く、Perfomance Audio Graphiteはそれよりもオーディオ的な感覚が強い。少し響きすぎだったけれどBELDEN 1192Aの持つ躍動的なドライブ感がこの曲にはよりマッチしていたように思う。
BELDEN 1192Aよりも音が細かく、中低域の膨らみも少ない。S/N感が高く、音場空間の濁りも少ない。弱音部の解像度も高い。精緻なイメージで、演奏をモニターできる。 楽しい躍動感が演出されたBELDEN 1192Aは、ライブ的な感じ。静寂と精緻さが伝わるPerfomance Audio Graphiteは、スタジオモニター的な感じで、この曲にはBELDEN 1192Aよりもマッチしている。
音の角が立って輪郭がキリリとし、伴奏にメリハリが出る。ボーカルも輪郭がクッキリして、綺麗に伴奏と分離する。 BELDEN 1192Aは響きの良さから、低音の押しの強さを演出したが、Perfomance Audio Graphiteの低音はきちんと制動されて止まる分響きが減るが、余韻が整理されるのでギターの操作の細やかなディティール(特に音が消える部分での)が綺麗に再現される。 BELDEN 1192Aは全体の印象で演奏ざっくりライブに聞かせ、Perfomance Audio Graphiteは細部を精密に描いて演奏の緻密さを伝えてくれる。善し悪しではなく、好みの違いで選べるだろう。 QED
Performance Audio Graphite 総評 Perfomance Audio GraphiteはBELDEN 1192Aに比べて、無駄な響きが少なく音像がシャープで、明快でスッキリした音質をお好みの方にマッチするだろう。 |
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Perfomance Audio 2は、BELDEN 1192Aの持つリッチな響きとドライブ感が醸し出す心地よさに、Perfomance Audio Graphiteの持つ精密なオーディオ的な魅力がミックスされた音に仕上がっている。 低音が立ち上がる速度が早く、演奏がリズミカルに聞こえる。ピアノもアタックとタッチがしっかり出る。シンバル、ドラムもスティックが当たってから音が消えるまでの連続する変化のリニアリティーが高く、人間が叩いている感じがひしひしと伝わってくる。曲間のアドリブでの各奏者の移り変わりがハッキリ伝わり、自然と演奏に集中させられる。音も良くなっているのだが、それよりも演奏精度の向上、奏者の存在感の向上が、Graphiteとの著しい違いになっている。 BELDEN 1192Aが表現するルート66は、ステージからやや離れた位置で聞いている感じだが、Perfomance Audio 2では演奏をかぶりつきの位置で聞いているイメージだ。
細かい音まで精密に録音されているこのソフトでは、Audio2とGraphiteの違いはかなり大きく、価格的には2倍くらいの差が感じられる。 S/Nはさらに向上し、BELDENではまったく聞こえなかった細かい音がハッキリと聞こえるようになる。また、ケーブルをAudio2に変えたことで、ピアニシモからフォルテにかけての音量の変化が大きく感じられるようになった。 Audio 2は音の立ち上がりと、力感がGraphiteよりも優れ、収束(音が止まる)も早いから、各々の音が混ざらずに綺麗に分離して聞き取れる。音のタイミングがピタリと合い、分離した音が見事なハーモニーを形成する。
これまで聞いたケーブルでは、BELDEN 1192Aで聞く「誕生」の音量が最も大きく感じられた。Audio 2の音量はBELDEN 1192Aと同じくらい大きい。しかし、BELDEN 1922Aの大音量がケーブルの響きによって増幅されたものだったのに対し、Audio 2ではケーブルで音の力が抜けず、アンプがスピーカーユニットをきちんと駆動、制動して得られているように感じられるところが違っている。 立ち上がりのエネルギーが強くパンチがあるが、立ち上がった低音がきちんと制動される(止まる)ので、リズムが流れず演奏の上手さがきちんと伝わってくる。 楽器の音はとても魅力的だが、その美しさにごまかされることなく、演奏者の楽器操作の上手さも描写される。本物の良い演奏が持つ、まとまりの良さ、計算された知的なイメージで誕生が鳴った。本物のプロが演奏している。 QED Perfomance
Audio 2 総評 |
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Mightyは、Audio2よりも一回り音が太く響きが豊かだ。音楽を楽しく躍動的に聞かせるMightyの音調は、BELDEN 1192Aに似ているのだが、1192Aのように音が響きすぎて音像が膨らんだり、音場が濁ったりすることがない。 Mightyが醸し出すボーカルの語りかけるような細かい表情の変化は、Audio2よりコントラストが鮮やかで、表現がデリケート。トランペットの音も奏者の身体の揺れ、呼気の強弱が手に取るように伝わってくる。ピアノも軽快に弾む。 Mightyが再現する演奏は、Audio2に比べて開放的で明るく、演奏が元気で楽しく弾む。Audio 2と音の差はあるが、それよりも雰囲気の差が大きい。
様々な音を精密にミックスし、スタジオで「作られた」この曲をMightyで聞くと、不思議だが演奏に血が通い音が熱くなる。知的な演奏でさえ、身体の芯に感情が注ぎ込まれる。機器の存在感が消え、スピーカーを楽器に変えてしまうような魅力が感じられる。 目の前でスピーカーではなく「楽器が鳴っている」イメージで演奏が再現されるのは、BELDEN 1192Aに近いのだが、Mightyはそれよりも遙かに細かい音までハッキリ聞こえるのと、演奏の精密な組立が見えるところが大きく違っている。 QED Graphite/Audio2と比べてMightyは、演奏のスケール、質感共に優れていて、ケーブルがワンランク上のクラスに感じられる。
音量が大きく感じられたAudio2よりも、Mightyはさらに音が大きく聞こえる。ギターのドライブ感、音色の鮮やかさ。ボーカルのパンチ力と表現力。そういう音楽を表現する様々なファクターが、Audio2よりも一回りパワフルで、演奏がより大きく躍動する。 Audio2の持つ精緻さはそのままに、Mightyではパワフルさが加わる。Mightyという名にふさわしい、エネルギッシュなイメージで誕生が鳴った。 AIRBOW
MSU-Mighty 総評 MightyにはAETの持つ精密で上質なイメージと、BELDEN 1192Aがもつフレンドリーでライブな躍動感が両立している。発売から少し時間が経過したが、1万円/1mクラスのRCAケーブルとして、未だにトップクラスの実力を持つことが確認できた。様々な中間業者や小売店を経て市販されるAETが、ユーザ直販しているAIRBOWと同じ価格で同じケーブルは作れないことは理解できるが、MSU-Mightyの音こそ私がAETの廉価モデルに求めたい音だ。 |
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低音は少し膨らみ気味になるが、肥大しないぎりぎりのところで留まり、逆にそれが低音の量感を上手く演出している。 高音は抜けが良く、ボーカルは完全に伴奏と分離し、クリアに定位する。トランペットは伴奏と綺麗に分離して、ボーカルのやや後方に定位する。ピアノ、ベース、ドラム、それぞれの音がほとんど完全に分離して、やはり正しい位置に定位する。楽器やボーカル、それぞれのタイミングの精密さは、Mightyさえ上回る。 音の数も多く、それらが見事に空間で交差して、素晴らしい演奏に昇華する。美しく、官能的で躍動的な音。生演奏を聴いているような気分にさせられる。
音が床から天上に向かって立ち上がる、その動き(距離)が大きい。音場空間が濁らずに大きく広がる。普通、音が広がるとそれに比例して密度が低下するのだが、Audio40は、空間のスケールが拡大しても密度感が下がらない。それは、空間の拡大に比例して、音の数が多くなる(細かい音まで再現される)からだ。 S/N感も非常に高く、無音部分にも音の気配が残るから、無音の持つ意味が伝わり、演奏が驚くほど深くなる。 あらゆる音が素早く正確に立ち上がり、最後までエネルギーを失わず、きちんと止まって消える。 同じコンポ、同じスピーカーで、同じ曲を聴いているとは思えないほどの変化がある。
イントロが「ドカーン!」と来る。その弾ける感覚だけで、気持ちが持って行かれる。 ギターは太く、そしてドライブ感が強い。ボーカルは太くパワフルで、彼女らしい「リトルダイナマイト」の雰囲気がむんむんしてくる。 音量・リズムだけではなく、色彩感の変化もリニアに再現され、演奏がこれでもかと言うほど大きく躍動する。聞いていて心の底から明るく、楽しくなれる。 QED Reference Audio 40 総評 QEDのケーブルは、「音楽重視」の方向でチューニングされている。ケーブルの価格が上がると、音が細かくなるがそれと同時に、「演奏がより躍動的に楽しく再現」されるようになる。Reference Seriesでそれが最高潮に達するが、SignatureではReferenceでは「さらなる上質さ」が加わる。スピーカーケーブルでは、そのように変化した。ここまでのグレードのテストでは、RCAケーブルにもそれがきちんと継承されている。 マニアが普通に(その普通は人から見れば異常に近いかもしれないが)求める最高の音は、スピーカーケーブルでもRCAケーブルでもReferenceで得られるだろう。 |
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ドラムの力強さ、楽器のタッチの強さと鮮やかさ、エネルギー感、明瞭度の高さでX TensionがReference Audio 40(以下Audio 40と表記)を凌駕する。 X TensionはAudio40よりも音が細かく、演奏の雰囲気が深い。プロっぽい計算され尽くした精緻さと、ライブらしい躍動感が両立する音でルート66が鳴った。
Audio 40で聞こえなかった細かい音が聞こえて、音の粒子が一層細かくなった印象がある。低音はより低い音階から聞こえ、より力強い。低音が出るとき床が震えたが、これは他のケーブルでは感じられなかったことだ。 中域は、Audio 40よりも僅かにあっさりしているが、クリアな所がよい。無音部の雰囲気はAudio40の方が「濃かった」印象があるが、これはX TensionのS/NがAudio 40よりも高く、音が「聞こえない時間」が短くなるからかも知れない。 アンプがユニットをきちんと動かし、ユニットが空気をしっかりと掴んで動かしているように感じられるX Tensionでは、スピーカーを駆動するアンプを一回り大きなものに変えたように演奏の質感までもが変化した。
X Tensionの高音質は、ソフトの録音に左右される。Audio 40は、X Tensionに比べて正確さとエネルギー感で僅かに劣るが、それと引き替えに演奏の善し悪しにかかわらず、あらゆる音楽を楽しく聞かせてくれる。 誕生のドライブ感は、僅かにケーブルが響くAudio 40がX Tensionを上回っていた。また、Audio 40の持つ僅かな「緩さ」が音と音の間に僅かな隙間を創出し、このソフトではそれが演奏をより楽しませてくれる方向に働いた。X Tensionは音が細かいが、表現がややタイトになる。 AIRBOW MSU-X Tension X Tensionの音調や楽器の再現性などは、Reference Audio40と非常に近いが、「音の細部のディティールの精密さ」と「低音のパワー感」でX TensionがAudio 40を明らかに凌ぐ。この決定的な違いは、たぶん絶縁体の種類に起因する。Audio 40やMSU-Mighty、AET EVO-0605SHRに採用されているのは、空気を含有させた絶縁体(発泡樹脂系ポリエステルなど)だ。この絶縁体は優れた絶縁性を持つが、柔らかいため「音の振動を吸収」あるいはケーブルが共振して、「響きが加わる」ような効果がある。 絶縁体で発生するエネルギーロスを避けるため、絶縁体の容量を増やせば高音が濁るなどの弊害が起きかねない。そこで高級ケーブルには、帯域別にケーブルの太さを変えるマルチワイヤリングという複雑な構造が採用される。これに対してテフロン絶縁体は、電流のエネルギーを吸収せず、むしろ跳ね返すようにして損なうことなく伝える。QEDもフラッグシップモデルのSignatureの絶縁体はテフロンを使っているが、それはオーディオ用の絶縁体としてテフロンが最も優れている証でもある。しかし、テフロン絶縁体は高価なため、高級モデルにしか使われなかった。 後ほど詳しく説明するが、QED Signature Audio 40は、テフロン絶縁体を使ったRCAケーブルとしてはかなり安い。その半額のX Tensionが「ソリッドテフロン」を採用できたのは、X Tensionが高級オーディオケーブルの常識である「2芯構造」を廃止して「1芯構造」を採用しているからだ。テフロン絶縁体を使うケーブルが、2本から1本になれば価格は半額にできる。もちろん、ケーブルにかかる製造コストはもっと複雑だが、あえて構造を変えてまでこの価格帯で絶縁体にソリッド・テフロンを使った良さがX Tensionにはある。そして、それが価格を超える魅力を生み出している。 |
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Signature Audio40は、Performance Audio40の躍動的な楽しさと、X Tensionの正確さパワフルさを見事に両立させている。高音が色鮮やかなのは、導体への「銀メッキ」の効果だろう。中低音はテフロンとクライオ処理の良さが出て、音の遅れや膨らみをまったく感じさせず、試聴には長さ3mのケブルを使っていたにも関わらず、ケーブルによるエネルギーの抜け感は一切ない。 Performance Audio40の醸し出す演奏の躍動にはしびれたが、Signature Audio40はさらに「高い質感」という魅力が加わる。 ケーブルをSignature Audio 40に変えるだけで、使われている楽器の価格が数倍上がったように感じられた。
Signature Audio40は高音が特に美しく、楽器の音色が色彩鮮やかに再現される。また、その高音の改善に見合うだけの中低音のボリュームアップが実現しているから、音が神経質になったり、細くなったりしない。 すべての音の質感が向上し、ハイビジョンがフルハイビジョンに、2K映像が4Kになったような変化が感じられる。
圧倒的に音の数が多く、様々な音が洪水のように押し寄せてくる。音量はまったく変えていないが、最も小さかったAETの2倍くらいの音量には感じられる。 低音は僅かに湿っているが、これは組み合わせているスピーカーとアンプの素性がそのまま出てきているのだろう。ともかく、この価格帯のケーブルで、これほどの音質改善(向上)が実現するのは驚きだ。これまでのケーブルの常識を覆すほどの衝撃を受けた。 Signature
Audio 40 それでは、Signature audio 40に使われている高音質技術を順に上げていこう。 Signature Audio 40には直径が異なる二つの導体を使われる。これは、先に述べたマルチワイヤリングという技術で、伝送する周波数に最適なケーブル直径を当てはめたことによる。 絶縁体にテフロン誘電体が使われる。テフロンは、ケーブルの静電容量が非常に低く、伝送中に信号のエネルギーが減少しない。 ケーブル全体が極低温処理(いわゆるクライオ処理)されている。トランペットや他の金管楽器は(摂氏-190度以下)で低温処理することで、より良い音を生成し、楽器寿命が延びることが知られている。TANNOYはネットワークのパーツに低温処理を行っているが、QEDのケーブルも低温処理されている。 オリジナルAIRLOCプラグが使われる。QEDのAIRLOCプラグは接点導体に高純度銅が使われ、表面はロジウムメッキが施される。さらに中空のHOTピンが使われ、アース側には2点のラインコンタクトが使われる。プラグを端子に強固に固定し、振動による音の濁りを防ぐため、プラグはコレットチャック式になっている。 ・導体仕様:シルバーメッキ・99.999%無酸素銅 ・絶縁体:テフロン(SPOFC) ・構造:非対称ツイストペアジオメトリ ・シールド:100%の電磁は遮断能力を持つ、SPOFCシールド+亜鉛/マンガンフェライトジャケット ・プラグ:クライオ処理済みロジウムメッキRCAプラグ ・静電容量:63pF / m ・インダクタンス:0.37uH /m ・ループ抵抗:0.072Ω/m ・誘電正接:0.0011 その高音質技術は多岐にわたっているが、仕様にケーブルの電気的なデーターが掲載されるところに、QEDのケーブルメーカーとしての格式の高さが伺える。 音質は音が細やかで、パワー感と色彩感に溢れている。AETの上級モデルSIN EVD/RCAと比較してみたが、さすがに音の密度感や低音の力感では、SIN/EVDがSignature Audio 40を圧倒した。けれど、スッと音が出てくる「軽やかさ」と楽器の「色彩の鮮やかさ」では、Signature Audio 40がSIN/EVDを超えた。すでに20万円近くに到達したSIN/EVD(生産完了)の価格を考えれば、情報量の差があるのは仕方がないが、音楽を聞かせる能力ではSignature Audio 40はSIN/EVDにまったく引けを取らない。少なくとも10万円以下の価格帯では、Signature Audio 40に匹敵するRCAケーブルは、見つからないだろう。 |
スピーカーケーブル試聴後感想
QEDの製品は、長く輸入されていなかっただけで、欧州ではAVケーブルのトップメーカーです。その実力は非常に高く、そして価格の安さには驚かされます。
RCAケーブルのSignature Audio 40の価格は、たった「\59,800/1m」でですが、プラグには「ロジウムメッキ」が施され中心導体は「中空」になっています。アース側には「ロジウムメッキ・高純度銅」がラインコンタクトで用いられています。さらにプラグ部の振動を抑制するコレットチャックが使われています。導体は5Nですが、音質に有利な銀メッキ導体+テフロン絶縁体が使われ、さらに「クライオ処理する」念の入れようです。
これだけの最新技術を投入した内外のケーブルが「20万円以下」では、発売されたことはこれまでありません。もちろん、それらの技術は「音質」に反映されています。これまであり得ないプレミアム価値が付けられていたオーディオ・ケーブルが多かった事を考えれば、純粋に「工業製品」としての価格が設定されたQEDのケーブルは、オーディオケーブルの産業革命と言っても過言ではないはずです。
フィッティングや外観も良好、不要にコストをかけていないパッケージにも好感を持てます。手の届く「最高級ケーブル」。それがQEDです。価格でケーブルを評価する時代は終わりつつあるのかも知れません。
追記
AETと言えば、クライオ処理とテフロン絶縁体を使った高級ケーブルでその名を馳せたブランドですが、最近発売されたEVO Seriesという低価格品には、高価なテフロン素材は使われていません。確かにインシュレーター類は、低価格でもAETらしく価格の割には音が良いのですが、やや「サイズが小さすぎて使いにくい」印象や、素材がそのまま切り売りされていて「見かけがいまいち」とAETの高級モデルとはイメージが違う製品になっています。
前回テストしたスピーカーケーブルも「価格以上の音」が出なくてがっかりしたのですが、本家本元であるはずのRCAケーブルは、それよりも音が悪く、また市販品のプラグをそのまま使っているので、外観もガレージメーカーのようです。やはり「コスト低減には数が勝負」となる廉価モデルでは、QEDやAudioquestなどの量産メーカーが有利なようです。少量生産の高級品では、AETの良さが際立ちますから、AETらしさを求めるのであれば、高級品の購入がお勧めです。
2015年6月 逸品館代表 清原裕介
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