TANNOY REVEAL 601P タンノイ 業務用 パッシブモニター プロモデル スピーカー

TANNOY(タンノイ) REVEAL 601P 業務用 パッシブモニター スピーカー 音質テスト

2014年発売 New Reveal 402/502/802の音質評価はこちらからご覧頂けます

オーディオでおなじみの逸品館が業務機器の販売をスタートしていることは、すでにご存じだと思います。それは、一重に現在、「民生機」と「業務機」と二つに分かれている販売ルート(民生機と業務機では、業界すら異なっている)を逸品館内部で統合し、それぞれの垣根を越えた「商品のご案内」を差し上げたいと考えるからです。

その皮切りに業務用TANNOY製品から、めちゃくちゃ音の良いパワードスピーカーとして「 REVEAR5A」を取り上げたところ、予想を超える大ヒットとなりました。

今回テストする「REVEAR601P」は、REVEARシリーズの最新モデルで「5A」よりはワンクラス上の製品でアンプを内蔵しない「パッシブモデル」です。アンプを内蔵しないパッシブモデルは、一般的なオーディオ用としてパワード型より適しています。アンプを内蔵しないREVEALの音質は如何に!早速テストを行いました。

REVEL パワードスピーカーの使い方、旧モデルREVEL 5aの音質テストはこちら

パワード型 REVEL 501a 601a の音質テストはこちら

REVEAL 601P

メーカー希望小売価格 ¥38,850(ペア・税込)

生産完了

方式 2Wayバスレフ・パッシブ
ツィーター(防磁) 25mm・ソフトドーム
ウーファー(防磁) 165mm・マルチ ファイバー コーン
クロスオーバー 2.3KHz
周波数特性 60Hz-30KHz
ディストーション <0.6%
音圧 89dB
入力 バイワイヤリング非対応
外形寸法 W210xH340xD237(mm)
重量 5.9Kg
 

音質テスト

○音質テストは、逸品館お薦めの2機種のスピーカーとの比較で行いました。

AIRBOW IMAGE11/KAI2

販売価格 ¥42,900(ペア・税込)

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SPECIFICATIONS

方式:
2-way,密閉型
ツィーター:
25o ソフトドーム
ウーファー:
114o
再生周波数 :
80-20.000 Hz
クロスオーバー:
3.6KHz
インピーダンス:
4 ohm
入力感度:
88dB(1W/1M)
サイズ:
W124xH199xD155(o)

Wharfedale Diamond10.1

メーカー希望小売価格 ¥48,000(ペア・税込)

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SPECIFICATIONS

方式:
2-way,バスレフ型
ツィーター:
25o ソフトドーム
ウーファー:
125o
再生周波数 :
40-24.000 Hz
クロスオーバー:
1.8KHz
インピーダンス:
6 ohm
入力感度:
86dB(1W/1M)
サイズ:
W190xH296xD283(o) ※台座含む

CDプレーヤーとアンプ

AIRBOW Little Cosmos3 ¥110,000(セット・税込)

AIRBOW'プリメインアンプ'Little Cosmos 3

 カーペンターズ「ゴールド」 UICY1100

7曲目 “Rainbow connection

Tannoy Reveal601p

高域が非常に伸びやかで音の芯がシッカリしている。イントロ部のオモチャのピアノの音が透き通って天井に吸い込まれるように上に上に気持ちよく伸びて行く。

前後方向、横方向への音の広がりは自然で、スピーカーを中心とした球状に音が広がる。

カレン・カーペンターの声にも癖がなく、子音はクッキリするがざらつき感はない。

中音には適度な厚みがある。

製品の価格なりにエンクロージャーはやや華奢だが、低音がサイズを超えるほどに欲張りすぎないので、このクラスの水準を超えてしっかりとまとまっている。難を言えば、時々高域がややハードに感じられることだが、価格を考えた場合これはある程度妥協せざるを得ないだろう。

とにかく、価格を疑うほど自然な良い音で音楽を聞かせてくれる立派なスピーカーだ。この価格帯の国産品でこういう音楽を楽しめる音が出るスピーカーには、まずお目にかかれない。

Wharfedale Diamond10.1

(サランネットなし)

高域の透明感と伸びやかさは、Reveal601pほどではないが、質の高さはそれを明らかに上回り、聞こえなかった細かい音や空気感が感じられる。ツィーターの音がReveal601pより上質で、一音が出た瞬間に高音の細やかさ、響きの美しさが違うのが聞き取れる。

スピーカーのサイズが一回り小さいにもかかわらず、低音もReveal601pに遜色ない。

共振しにくいエンクロージャーの形状と、小型故に高い剛性のお陰でベースの音階はReveal601pよりも明瞭だ。

Diamond10.1は、Reveal601pに比べ無駄な音が少なく、全体的に引き締まった感じの音の出方をする。しかし、Reveal601pのちょっと牧歌的で緩い音の広がりの良さも捨てがたい。

この価格帯では群を抜く質感の高い音、高級スピーカーに通じるHiFiなサウンドを聞かせてくれるスピーカーだ。

(サランネット付き)

ネットがなければグイグイと前に出て来ていた高音が適度に拡散されて、スピーカーを中心にふわりと柔らかく広がるようになる。

ボーカルのニュアンスの細部の明瞭度は少し後退するが、子音のキツさが和らぎ全体としてのまとまりとしなやかさが出て、カレンの声がより女性らしい優しく色っぽい声になる。

低音も適度に拡散されて広がるようになり、響きにゆとりが出る。

ネットを付けることで刺激が薄れまとまりが出る。長く聞くにはこの音の方が聴き疲れしないが、短時間で「良い音を聞いた」という刺激が欲しいならネットは外す方がストレートに音を聞ける。いずれにせよネットのあるなしで音質は明確に変化するから、ムードに合わせて使い分けると良さそうだ。

IMAGE11/KAI2

音の広がりが最も自然でストレスがない。声も伸びやかで人工的な着色がまったく感じられず、直接肉声を聞いているようなニュアンスで音楽を聴ける。

ハーモニーの分離、ボーカルと伴奏の分離にも優れ、音と音の隙間が最も広い。声の抑揚や表情も細かく出る。

低音は絶対的には出ていないはずなのだが、不思議に低音不足を感じさせない。

無農薬有機栽培野菜のような感じの自然で有機的な味わいを持つサウンド。付け加えて、他の2機種より明らかに音が明るく音楽を聞くのが楽しい。カーペンターズを聴いて、最も心が軽くなったのがこのスピーカーだ。

 Micro 「MAX OUT」 UMCF-1010

1曲目から

Tannoy Reveal601p

価格を考えると仕方ないが、低音が軽くやや遅い。高音にもややざらつきが感じられる。

低音の力が緩く、パワーが拡散した響きになってしまい、音が前に出足りないと感じることがある。カーペーンターズを聞いた時にJ-POPとはマッチしそうに思っただけに、以外に音が弾まなかった。

しかし、それでも全体的には十分な低音の量感を持つバランスの良い音は、音楽を楽しく聞かせるし、業務用のスピーカーらしく癖がなく、控えめな表現と相まって音楽を分析しうるモニターとして十分な音質を持っている。

外観は現代版モニターだが、実際には打ち込み系の音よりもアコースティック系のサウンドの方が得意なようだ。

Wharfedale Diamond10.1

低音の押し出しや、しっかりした感じではReveal601pを上回る。しかし、全体的に力がなく元気良く聞こえないのはDiamond10.1にも共通する欠点だ。もしかするとアンプの力が足りないのかも知れないし、もうワンクラス上のアンプを使えば、このパワー不足感が解決するのかも知れないが、今までPM5003/LC3の力が足りないと感じたことはなかったから、やはりこれは2機種のスピーカーに共通する性格と考えるのが妥当だろう。

高域の切れ味、分解能はReveal601pを上回り、十分なクォリティーだが、なぜか音がスピーカーにへばりついて離れず音場空間が上手く広がらないので、音楽が思ったほど躍動しない。

このソフトはハイエンドショウ東京でも使った。録音が悪いとは感じなかったが、Diamond10.1とReveal601pで聞くと録音の悪いJ-POPに聞こえてしまう。

スピーカーが悪いというのではなく、ソフトが上手く鳴らないという印象だ。

IMAGE11/KAI2

打ち込みの低音を先の2機種と比べると、さすがに軽くて量も少ない。

しかし、高域の広がり感や元気の良さではDiamond10.1やReveal601pを凌ぎ、音楽はハッキリと躍動する。

先の2機種と比べて明らかに違うのが「低音の早さ」だ。

低音の量は少なく軽いものの、低音が立ち上がるスピードが圧倒的に速いのでベースラインが明確に分離し、リズムセクションがしっかり弾む。

どんな量感のある低音が出ても、リズム楽器としての明瞭なタイミングが感じられないければ音楽は躍動しないことが、この3機種のスピーカーを比べることで理解できる。

低音は量ではなくなく質。低音は速度がポイント。ロックにとっては低音の早さこそ命で、歯切れ良さがソフトを生かす。それがIMAGE11/KAI2を聞くととてもよくわかる。

 CANTATE DOMINO PRCD7762

9曲目

Tannoy Reveal601p

Reveal601pの最大の美点である、豊かでリッチに響く低音が最も生かされるソフトとしてカンターテドミノを選んだが、その思惑はピタリとはまった。

価格を絶対に信じられないほど豊かな中低音と、伸びやかで分解能の高い透明な高音。システムの総額が15万円を切るとは到底信じられないほどの豊かな音楽性でカンターテドミノが見事に鳴る。

実はこのスピーカーのテストと時を同じくして「キソアコースティック」から発売されている130万円の小型スピーカーを聞いたのだが、HB-1の「消費税分」にも満たないReveal601pがカンターテドミノなら同等の音で鳴る。HB-1にそれに見合うCDプレーヤーとアンプを奢り、AIRBOW Little Cosmos3+TANNOY Reveal601pのセットをブラインドですり替えたなら、もしかするとどちらか判断できないだろうと思うくらい見事な音でカンターテドミノが鳴る。3号館に設置しているシステムに当てはめるとしても、スピーカー込みで100万円程度のセットに匹敵するのでは?と思えるほどの素晴らしい音だ。

業務用と言ってもタンノイはやはりタンノイ。穏やかで柔らかく、包み込まれるようなその音はクラシックや穏やかなジャズ、バラードを聴くのに最も適していることがよくわかった。

Wharfedale Diamond10.1

このスピーカーもカンターテドミノに良くマッチする。しかし、その鳴り方はReveal601pとはすこし違う。響きが豊かでリッチに鳴ったReveal601pに比べるとDiamond10.1は、もっと緻密で真面目な音だ。サービスの少ない?音と言えばよいのだろうか?絶対的には十分に良い音なのだが、Reveal601pを聞いた後ではボリューム感がやや不足する。

しかしDiamond10.1は、カーペンターズで感じた女性ボーカル高域の質感の高さでReveal601pを凌駕した。ややルーズだけれどリッチで響きの良いタンノイ。それより少しHiFiに振られたワーフデール。時代が流れ、メーカーの名前が形骸化してしまった今でも、不思議とオリジナルが持っていた音質傾向がしっかりと継承されている。それはとても不思議なことだ。

IMAGE11/KAI2

例えばReveal601pと切り替えて聞き比べるとその低音不足は明らかだ。しかし、単独で聞いている限りパイプオルガンの低音もはっきり聞こえ、不思議と低音不足を感じないから面白い。

IMAGE11/KAI2が他の2機種とハッキリ違うのは楽音の大小の対比が明瞭で、音の小さな変化や違いが聞き分けられることだ。だから、似た音が重なった部分の分解能が高く感じられ、コーラスの人数が明らかに多くなる。さらに音の表情の出方に違和感がなく、生楽器のように鮮やかに音が変化するから、まるで生演奏を聞いているような自然な感覚で音楽を聴ける。

バランスの妙というのだろうか?こんなに小さいにも関わらず、本当に不思議と不満を感じない音でカンターテドミノが鳴る。不満がないというのは飽きないと言うことでもあるし、これで十分満足できるということでもある。こんな小さなスピーカーでも大編成のミサ曲が納得して聞けるという不思議な充実感は、その外観からは決して想像できないし、なおのこと文章では伝わらないだろうと思う。

まとめ

130万円(ペア)という高額にもかかわらず、「キソアコースティックのHB-1」が売れていると聞いて試聴した。音が出た瞬間、お世辞抜きに良くできていると思った。バランスは良いし、細かい音も再現する。外観的な魅力も含めきちんとした「商品」に仕上がっているのは、国産スピーカー新参メーカーのデビュー作としては、奇蹟と言える高いレベルだ。だからこそ「売れて」いるのだろう。

しかし、冷静に考えれば同じ価格ならFocal 1028Beが買えるし、Vienna Acoustics T3GとPMCの新製品FACT.8を合わせて買っても、HB-1の価格には届かない。吊しのユニットを美しい箱に入れただけのスピーカーから、出てくる「絶対的な音」は、どう背伸びをしても限度が感じられる。類似の製品には、Sonus FaberにはMinima Vintageがあるが、遥かに低価格だ。価格が同じくらいのガルネリは、HB-1よりもモニュメントとしての存在感が遥かに高いし、音も良い。HB-1が魅力的なことは間違いがないが、他製品との相対的な比較をどう考えるかが問題だ。そしてその問題答えが今の、そして今後のオーディオとあなた自身の立ち位置を決めることになるのだと思う。

なぜそんなことを考えたかと言えば、最近の低価格スピーカーの音が以前に比べて飛躍的に良くなっているからだ。その理由は大衆車のレベルがここ20年で非常に高くなったのと同じだ。キーポイントは、「コンピューター」の進歩。厳密に言うなら「コンピューターによる設計シミュレーションの精度がうんと高くなった」ために、どのように設計を最適化すれば、「最高のコストパフォーマンスが得られるか?」時間をかけた試行錯誤を繰り返さなくても、文字通り「計算できる」ようになったからだ。その結果、より少ない実験でより良い製品を作れるようになった。開発コストの限られる低価格商品の開発にとって、このシミュレーション技術の進歩による恩恵は計り知れない。

話は逸れる。PCの発達は「低コスト化」を実現した。最もコストのかかる「人手」が不要となるからだ。しかし、良いことばかりではない。最近の先進国の不況は、「コンピューターの過度な発達」が原因ではないだろうか。PCは今まで人間が行っていた面倒なデーター処理や管理を一瞬で行ってしまう。人件費コストは下がり商品は安くなる。

インターネットのショッピングサイトがなかった時代(たった10年前!)に、安く商品を手に入れようとすれば、時間をかけてお店を回るしか方法はなかった。あるいは、雑誌を買って広告を見たかも知れない。そのためには交通費と時間がかかり、その最中には喫茶店でゆっくりくつろいだかも知れない。しかし、インターネットとショッピングサイトの発達は、そういう「雑費」にかかるコストをほとんどゼロにしてしまった。低コスト化は、失業を伴うのだ。

話を戻そう。「そういうコンピューターがもたらしたコストダウン」によって、量産製品は飛躍的に安くなり性能も向上した。それとは対照的に、HB-1のような少量生産品は高くなっている。オーディオのみならず家電品や車にも共通するが、現代において工業製品の価格を決めるのはもはや「性能」ではない。多く作るか?少量しか作らないか?それが価格を決める最も大きな原因となっている。だから、高額=高性能という方程式は、崩壊の速度をますます早める。しかし、趣味の世界での「満足度」は、必ずしも「性能」と比例するものではない。だから、HB-1のような製品とTANNOY Reveal601pやDiamond10.1、IMAGE11/KAI2のような製品が混在しても問題はない、矛盾しないと考えるべきなのだろう。

パソコンの急速な進歩で私たちの生活は一変した。今後もその傾向は、どんどん加速されて行くだろう。ローテク時代を懐かしんでも、決してそこに戻ることはない。変化を受け入れそれに対応するしか生き残る方法はない。だが、安心して良い。なぜなら、本来生物は常に変化を受け入れることで「進化」してきたのだ。問題はあまりにも変化が急速だと、進化の過程に歪みが生じることだ。

オーディオ設計にコンピューター・シミュレーションを使った問題点は、「メーカー色が薄まる」ことに表れる。スピーカーに求められる物理的な設計の「正解(ベストパッケージング)」は一つしかない。それを見つけるために設計分析ソフトをつかえば行き着くパッケージングは同一となり、完成形や音が似てしまう。スピーカーだけではなく、アンプやデジタル機器なども例外ではない。スピーカーと違って回路設計には「正解」は存在しないから、音質に濃いメーカー色が出ても良いはずだ。しかし、コストダウンのためにメーカーの枠を超えて「IC」や「メカニズム」などの「パーツ」を共用せざるを得ないことで結局中身は似てしまい、スピーカー以外のコンポにも以前ほど強い「メーカー色(メーカー特有の音)」が感じられなくなっている。

しかし嬉しいことに今回テストした3つのスピーカーには、驚くほど明確な個性の違いが感じ取れた。それを簡単にまとめよう。

Tannoy Studio Moniter Reveal601pはアンプを内蔵したアクティブ型と違って、穏やかで適度に緩い「昔ながら」のタンノイの音を継承している。その音はアコースティックな音楽、特にクラシックに向いているし、女系ボーカルやバラード系のジャズも上手く鳴らす。つまり、昔から良く言われるJBLとは対照的なTANNOYサウンドに仕上がっている。実売価格がペアで僅か3万円を切るこのスピーカーを侮ってはいけない。上手く鳴らしてあげると、お世辞抜きに価格の数倍〜10倍近い音が出せるからだ。例えば、激しい音楽が好きでそれに合う高級スピーカーを買ったけれど、たまには「癒し系の音」でゆったりと音楽を聞きたいから、もう一セットスピーカーが欲しい。でも、高いスピーカーは買いたくないとお考えなら、このスピーカーを追加購入するとよい。僅かな出費で望みが叶えられるだろう。

Wharfedale Diamond10.1は、ペアでたった5万円に満たないスピーカーにもかかわらず、「音の精度」にこだわるワーフデールらしい精緻な音を聞かせてくれる。美しい佇まいを感じさせる音。スタイリッシュで現代的な外観にマッチするその音は、やはり現代的な優秀録音のソフトに向いている。アンプを選び、プレーヤーを選び、ケーブルをチョイスし、アクセサリーで音を弄る。そういうオーディオ的な楽しみにも満ちている。バイワイヤー方式が採用されているから、不釣り合いなほど高額なジャンパー線を奢ってやるのも良い。あなたが行ったチューニングを正確に音質に反映する。そう言う魅力を持つスピーカーだ。

IMAGE11/KAI2は、今までに1000セットを遥かに超える台数を販売している「大ヒット商品」だ。それを作った私自身、それほどの大ヒット&ロングランになるとは想像していなかった。自分が聞きたい音の「小型で使いやすい低価格のスピーカーを作りたかった」それが本音だ。しかし今回、Reveal601pやDiamond10.1とじっくり聞き比べたことで、改めてその「魅力」を再認識することになった。IMAGE11/KAI2の魅力は「自然」であること、そして「明るい」ことだが、一番のポイントは「音楽が楽しく聴ける」ことだと思う。音楽を楽しく聞くことだけを目的にじっくりと耳で聞き込んで仕上げたスピーカーだから、あらゆるジャンルの音楽が楽しく聴ける。音楽は楽しく聴けなければオーディオじゃない。私自身思いがとてもストレートに反映された音に仕上がっている。IMAGE11という「優れた材料」と「良く出来たチューニング」の出会いの偶然が、素晴らしい音を生み出したのだと思う。

それぞれの製品の個性は明確だ。しかし、注意して欲しいのは「スピーカーの音量」と「試聴距離」によって音質の評価が大きく変わることだ。中でもIMAGE11/KAI2はその傾向が強い。適度に音量を上げると離れた場所でもバランスの良い音で音楽を楽しめるが、小音量ならできればスピーカーに近づいて聞いて欲しい。その方が低音がより多く聞こえるからだ。IMAGE11/KAI2に限らず小型スピーカーを小音量で聞く場合には、近くで聞く方が好ましい。試されればおわかりいただけると思うが、スピーカーに近付けば低音がよりハッキリ聞こえるようになる。他の2機種も低音不足を感じられた場合は、スピーカーに近づいて聞かれることをお薦めする。

大型スピーカーでも近付けば低音が多く聞こえるのは同じである。では大型スピーカーを小音量で聞くときも、スピーカーに近付けばよいのか?というとそれは違う。高音と低音のユニット間の距離が離れている大型スピーカーに近付くとツィーターから耳、ウーファーから耳までの距離の差異がどんどん大きくなる。近づけば近づくほど、その誤差は拡大するから、スピーカーの近い位置では高音と低音の耳に届く「タイミング」がずれてくる。それが原因で、大型スピーカーに近付きすぎると音の広がりがなってしまう。だから大型スピーカーを聞く時は、適度に離れて聞かなければ良い音で聞けない(同軸型は除く)。それに比べ音源が小さい(ユニット間の距離が近い)小型スピーカーは、スピーカーに近接して聞いても違和感が少ない。ではどうすればよいのか?大型スピーカーは「低音」が出せるから、アンプのトーンコントロールやラウドネス・スイッチを使って「低音を増強」すればよい。そうすれば小音量でも音痩せを感じずに音楽を楽しめる。

音量のついでになるが、テンポなどでスピーカーを選ぶときにも「音量」には注意が必要だ。。一般的な店頭でスピーカーを試聴する場合の音量は、自宅でそれを聞くときよりも明らかに大きな事が多い。しかし、その状態では「低音」と「高音」は、間違いなく盛り上がって聞こえている。大音量が良い音だったとしても、自宅では「音が痩せてしまう」。そんな経験をお持ちなら、それは多分「音量過大」のせいだ。だから、スピーカーを試聴するときには「自宅で聞く音量」と「さらに小さい音量」で試してみるべきだ。そうすると失敗が少ない。

試聴時には音を大きくしすぎないように私は社員に指導している。しかし、お客様からの要求があるためかそれでも音が不要に大きすぎる事が多い。確かに、音量を心持ち上げると良い音でスピーカーが鳴るから、販売促進の意味で音量過大は悪いことではない。しかし、こちらはプロなのだから「正確を期する」ためにスピーカーの試聴時の音量はご自宅で音楽を聞かれるのと同じにして、できれば試聴するソフトも同じにすべきなのは当然である。

もちろん、ハイエンドショウなどは別の話だ。ショウの目的は、「可能な限りの良い音」を絞り出すことだし、そのためには度肝を抜くような「音」を出す必要がある。そのためには手段を選んではいられない。大音量も出すし、とてつもない価格のケーブルを使ったりもする。そのようにして実現する、浮世離れした高音質を「お客様と一緒に聞ける」ことや、その音を「真剣に聞いていらっしゃるお客様の様子を見る」のは、私の大きな楽しみの一つになっている。同じ楽しみに向かって情熱を注ぐのは、お客様も私たちにもなんら違いはない。

2010年6月 清原 裕介