SONOPRESSOでコラボレーション商品を発売するなど、DynaudioとTriodeは営業業務を共同で行うことがある。今回もDynaudioのDMシリーズ
3/7がTRV-88SERと同時に届けられた。資料によると、販売価格はOPENで推定販売価格が¥190,000と記されている。この価格はペアなのか?一本なのか?もし一本であれば俎上に上げずに返却しようと考えて、ネットで調べるとどうやら「ペア」の価格のようだ。
なぜ、そんなことを考えたかと言えば「キャビネット」や「端子」があまりにも安物だったからだ。ユニットには、確かにDynaudioの良品が使われているかも知れない。しかし、キャビネットは「塩ビ-シート仕上げ」だし「端子もYラグが使えない安物が使われる」などまったく褒められたものではない。いくら海外製品が割高だと言っても、このキャビネットと端子は、ペア10万円以下の製品にしか使われない。ペア20万円でも高すぎる。そう思ったが、ユニットはコストのかかった真面目なものが装着されているのでとりあえず音を聞いてみることにした。
アンプはBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)との比較もかねて、Triode
TRV-88SERをそのまま使い、CD変えずにAIRBOW
SA15S2/Masterを使って試聴を開始した。
ノラ・ジョーンズ
ボリュームが過多なサブウーファーを繋いだように、低音が塊になってぐっと前に出た。圧迫感と実在感の高い低音が出る。高音はDynaudioのユニットらしく滑らかで繊細な音を奏で、分解能、解像度ではBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)を一部上回わるようにも感じられる。
しかし、キャビネットの強度が低いため「どことなくざわついた感じや質感が低い感じ」が完全には消えない。ペア20万円以下という価格を考えるなら、この音は決して悪くはないが、QUADやFocalなど逸品館がお薦めしている他のスピーカーと比べると、音質はともかく「見た目の質感」がワンランク以上劣るのは間違いない。また、ほぼ同じ価格でVienna
Acoustics Bach Grandが購入できることを考えると、DM 3/7の価値観の判定は難しい。悪くないが、それ以上でも以下でもない。価格以上の音質をうまく引き出せるかどうか?そこがポイントになりそうだ。
エリック・クラプトン
スピーカーがそろそろ温まって来たのか透明感が向上し、細かい音まですっきりと聞こえるようになってきた。
あいかわらず低音は少し膨らむが、前に出るバランスは演奏のエネルギー感、温度感を向上するからPOPSには向いている。しかし、フォルテでキャビネットが共振し、音が濁ってしまう傾向は変わらない。写真から見て取れるように、今回はカーペットの上にスピーカーを直接置いた簡易なセッティングで試聴を行っている。だから、スピーカーの固定方法を工夫することでこの濁りを低減させることは十分に可能だろう。また、使っているアンプが真空管方式だから響きや濁りが多くなっているとも考えられる。しかし、それでも同じ方法で試聴した他のスピーカーよりも濁りは大きいことは違いない。
中域〜高域にかけての細やかさや透明感、スムーズさにはDynaudioらしい高性能感がしっかりと感じられて心地よいが、中低域の音はやはり少し低級。過去試聴したスピーカーでは、Tannoy
Fusion Seriesに傾向が似ている。
ヒラリー・ハーン バッハ協奏曲
BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とTRV-88SERの組み合わせでは、このソフトがアンプに対して最もミスマッチに感じられた。しかし、Dynaudio
DM3/7との組合せでは逆に、このソフトが最もうまくアンプにマッチする。
低音の遅れや膨らみは全く気にならないし、前に出すぎていた低音もスピーカー後方へ見事に展開する。このソフトに限定するなら、DM3/7はBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)とTRV-88SERの組み合わせより上手く鳴っている。コンサートマスターと伴奏の音色の違いも鮮やかに再現されるし、各楽器のパートも上手く分離する。
高域の切れ味は、DM3/7がBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)を上回るほど優れている。低音も悪くない。しかい、音の密度感ではBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)がDM3/7を確実に上回る。価格がかなり違うので直接比較するのはフェアではないが、BEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)と比べられるほどレベルの高い音が出てはっとさせられることが何度かあった。
DM
3/7、総合結果
このスピーカーを見たときに「安物」と感じた。それはキャビネットの作りや端子があまりにも低級だったからだ。ただし、それは多くのスピーカーを見ているから分かることかも知れない。
仕上げの低級さに対して、ユニットの奏でる「音」はかなり本格的に感じられる。特に中高音の細やかさと透明感は、価格以上に優れている。ユニットの音でスピーカーを評価するなら、DM
3/7の満足度は高いはずだ。ただどうしても低音は、キャビネットの強度の悪さ(密度の低さや表面の塩ビシート仕上げ)が災いしてか、低級に聞こえることが避けられなかった。中低音をどのようにチューニングするか?それがDM3/7を上手く鳴らす上でのポイントになるだろう。
低音と言えば真空管よりもトランジスターアンプが上質だ。そこで中低音を引き締めるため、アンプをAIRBOW
PM15S2/Masterに変えて、エリック・クラプトンを聞き直してみた。
エリック・クラプトン
AIRBOW
PM15S2/Master
中高域の透明感や滑らかさはそのままに、気になっていた中低音の質感の低さや膨らみが改善される。楽器のアタックの鋭さも改善され、シャープでクリアな音が出る。ただ、それと引き替えに魅力的だったギターの響きの美しさや、ボーカルのしめった感じが大きく後退した。スピーカーを軸に考えれば、アンプをTRV-88SERからAIRBOW
PM15S2/Masterに変えたことで、音が明らかに悪くなってしまった。これは、想像とは全く逆の結果だ。
AIRBOW
PM15S2/Master
BEETHOVEN-CONCERT-GRAND
結果に納得できないのでスピーカーをBEETHOVEN-CONCERT-GRAND(T3G)に変えて、エリック・クラプトンを聴き直してみた。音質は一気に向上し、今日聞いた中で最も良い音でクラプトンを聞けた。ひいき目ではなくTRV-88SERとDM
3/7の組み合わせで聴いた演奏とは、待った次元の違う音が出た。それぞれの楽器のパートが見事に描き分けられる。アマチュアライブからプロの音になる。何よりも演奏が上手さが比較にならない。
想像以上に音が違ったのに、我が耳を疑うほどだった。さっき「いい音」と思っていた音は、間違いだったのだろうか?この音を聞いてしまえば、TRV-88SER
DM 3/7には戻れない。もちろん、価格が違うからこれが当然と言えば当然の結果なのだ。