次にAntelope
Audio
Zodiac+を聞くことにした。この製品のUSB入力は「ミニサイズ」で、他製品のテストに使う高音質USBケーブル「audioquest
Carbon」が使えない。しかたなく、付属のケーブルで音質テストを行った。その点を少し考慮してレポートをお読み頂きたい。
Audiophile
Jazz Prologue 3 - DVD+CD-R限定版
Zodiac+ / 44.1KHz/16bit
音が出た瞬間、RATOCとの力強さ(パワー感)の違いが感じられる。特にウッドベースの押し出しは全く違ってくる。このパワー感と低音の厚みが、専用電源を持つUSB-DACの特徴だろう。音の力強さに騙されずに聞き込めば、音の細かさや細部の見通しの良さでは、逆にRAL-24192UT1がZodiac+を上回っていたことに気がつく。Zodiac+の音はシッカリして実在感もあるが、S/Nの高さや細部の再現力ではRAL-24192UT1(192KHz/24bit)がZodiac+(44.1KHz/16bit)を超えている。
もちろん音源の品質が大きく違うので、今聞いている音で両者を直接比較するのは少々無理があるのは承知している。エネルギー感や実在感はZodiac+がRAL-24192UT1を確実に上回り、聴き応えのある音が出ているのは間違いないが、それでも情報量は少し少なくなった(音が薄くなった)感じが残った。
Zodiac+ / 96KHz/24bit
44.1/16から96/24への音質変化は、RAL2496UT1と同じであまり大きくない。それでも、細かい部分の再現性が向上し、音がよりいっそう細かくなるのは聞き取れる。しかし、その細かくなり方はRAL-24192UT1で感じたのとはすこし雰囲気が違う。RAL-24192UT1+192/24では「音の粒子が細かくなり、細部が見えるようになった(粒子感の向上)」と感じたが、Zodiac+では「音の粒子の一つずつがはっきりして、細部が明確に見えるようになった(ピント感の向上)」として感じられた。44/16音源同様、中低音の厚みやエネルギー感はZodiac+がRAL-24192UT1を上回っている。
NORA JONES “Come
Away With Me” CD
ここでUSB入力とS/PDIF入力の音質の違いを確認するため、音源をCDをリップしたものに変える。ソフトは、いつも使っている「ノラ・ジョーンズ」だ。
Zodiac+ / 44.1KHz/16bit / USB入力
CDと比べると音が乾いている。ノラの声がややかすれた感じで少し元気がない。ベースもどこか曇っていて、高域が何らかのノイズでマスキングされたように見通しが悪い。乾いた新聞紙に描かれた絵を見ているようなイメージだ。情報としては少なくないし、それぞれの音質も悪くないが、聞いていてあまり面白くない音だ。
Zodiac+ / 44.1KHz/16bit / S/PDIF(RCA同軸)
プレーヤー:AIRBOW UD8004/Special 、 ケーブル:AET SIN/DG75
PCとの接続では音が点と点の集まりのように感じられたが。CDをトランスポーターにすると音が繋がって滑らかな線になって感じられる。ノラの声にも湿り気が出て、女性らしい色っぽい声になる。音質は全体的に明るく、キュートなイメージだ。中高域にスポットが当たったように、ボーカルや楽器の倍音が明るく明瞭に鳴る。低音はやや緩く広がっているが、嫌な感じではない。音は適度に細かく、外付けDACを使っているメリットが音に出ている。CDをトランスポートとするとUSB接続とは比べものにならないほど、音楽的に納得できる音が出た。
Audiophile
Jazz Prologue 3 - DVD+CD-R限定版
DA200 / 44.1KHz/16bit
音が出た瞬間に思わず頬が緩んだ。さすがLuxman!USB経由で聞く音楽はCDと比べ、どうしても「違和感(PC臭さ)」が感じられたが、DA200はそれを見事に消し去っている。音が出始めて消え入るまでの流れの自然さ、楽器の絡みの濃厚さ、一音一音の滑らかさと暖かさ、これはまさしくLuxmanのCDプレーヤーでCDを聞いている感覚だ。音質も相当に良く、数十万円クラスのCDの音が鳴っている感覚を覚える。何よりも「人間が心を込めて演奏している感じ」が伝わってくるのが素晴らしい。これは良い仕事だ!
NORA JONES “Come
Away With Me” CD
DA200 / 44.1KHz/16bit / USB入力
音源をノラ・ジョーンズのCDをリップしたデーターに変えると、あらあらどうしたことか・・・、Zodiac+で感じたのと同じように「ばらばらの音」になってしまった。もちろん、Zodiac+ほどひどくはないが、CDを聞いている感覚とは違ってなんだか演奏がへたくそに感じられる。この音では聴いていたくない。もちろん、それはLuxman
DA200が悪いのではなく「CDをPCにリップしたデーターを聞くこと」に問題があるに違いない。過去にもたびたび経験しているが、CDで再生する事を前提に作られたCDソフトをPCでリップして再生した場合、音が平面的になったり調和が崩れたりして、音楽がつまらなくなってしまう。
DA200 / 44.1KHz/16bit / S/PDIF入力
プレーヤー:AIRBOW UD8004/Special 、 ケーブル:AET SIN/DG75
普段聞いているCDにかなり近くなるが、ぱさついた感じは完全に取れない。その点ではZodiac+の方が滑らかな音でCDに近いイメージで演奏を聴けた。音調は暖かく、厚みがあり滑らかだ。音色の再現も十分だし、低音の量感は厚みがある。どことなく真空管をイメージさせる鳴り方は、Luxmanの音作りの伝統を彷彿とさせる。
DA200 / アナログ入力
プレーヤー:AIRBOW UD8004/Special 、 ケーブル:AIRBOW
MSU-X Tension
DA200には、USB-DACで他に類がない2系統のRCAアナログ入力が備わっている。出力も音量を可変できる(最大ボリュームでは、ダイレクトより音が大きくなる)。見方を変えるとDA200は、USB入力付DAC内蔵プリアンプだ。そこでプリアンプとしてDA200の音質はどの程度なのか?聞いてみることにした。
先ず「固定出力」と「可変出力」の音質差をチェックする。ボリュームを最大にすると固定出力よりも大きくなるため、適度にボリュームを絞り固定と可変で音量差が生じないように注意しながら、後パネルのスイッチで「固定」と「可変」を切り替えて、ノラ・ジョーンズで聞き比べた。
まず、入力をUSBにして出力の音質差を比べると、ほんの少しだけ「固定」の音がはっきりしていた。個人差があるので何とも言えないが、今回の環境では固定を100として可変が85-90程度に感じられるほどの差でしかなく、両者に差はあってもその差は非常に小さいと言える。
次にUD8004/Specialのアナログ出力をDA200に繋ぎ「アナログ・プリアンプ」としての音質をチェックする。外部入力(AIRBOW
UD8004/Special)の音は、内蔵DACと比べ音のバランスが良くなって「上質な演奏を聞いている雰囲気」が感じられる。音の細かさも少し向上しているが、Luxmanらしい中域の分厚い感じは少し後退する。言い換えるなら、LuxmanのサウンドからAIRBOWのサウンドへと音が切り替わった感じだ。情報量の低下はミニマムだし、色づけもわずかに感じられるだけなので、アナログ・プリアンプとしてのDA200の能力は価格以上に高いと評価できる。
今回テストする機器の中でコストパフォーマンスはNA7004が他を圧倒する。入力の豊富さ、リモコンでの操作、ワイヤレスiPODドックの付属など、その他機能を上げれば枚挙にいとまがない。こんな多機能なのに、価格は10万円を大きく切るのは驚きだ。
Audiophile
Jazz Prologue 3 - DVD+CD-R限定版
NA7004 / 44.1KHz/16bit
Luxman
DA200と比較すると、少し音が「薄い」感じがする。みっちりと音が詰まったDA200をフルスペックハイビジョン(1920*1080画素)にたとえるなら、NA7004はそれよりも2割ほど音数が少なく(1536*864画素)くらいの感覚だ。しかし音楽的な満足度は高い。リッチな雰囲気で音楽を聴かせたDA200に対し、カジュアルな雰囲気のNA7004だが、その音はDA200よりも悪くない。むしろ音楽をより積極的に聞きたくさせる方向の、明るく乗りが良い楽しい音だ。アタックの先端が少し丸く、それが原因で楽器の音の輪郭や押し出しが弱くなるのは価格なりのご愛敬だが、それにしても心地よい音で音楽が鳴る。家庭で音楽を聴くのなら、この音質で何の文句も出ないだろう。
NA7004 / 96KHz/24bit
音が細かくなり暖かくなる。この音質ならDA200と双璧か、むしろDA200を超えるといって良いかも知れない。気になっていた輪郭がシッカリし、それぞれの音の分離感が大きく向上する。楽器の表情が細やかになり、躍動感も増大する。このレベルの音なら数十万円クラスのCDプレーヤーと十分に比較できる。更に高音質をも望むなら、ケーブルやインシュレーターなどを工夫することでそれらを超えることも不可能ではないだろう。
NORA JONES “Come
Away With Me” CD
NA7004 / 44.1KHz/16bit / USB入力
今回聞き比べたUSB-DAC中、CDをリップした音源を一番CDプレーヤーに近い音で鳴らしたのがNA7004だ。他のDACと比べて「響きの成分」が豊富で音が滑らかに繋がる。NA7004のDACや出力回路には、SA8004ほとんど同じものが使われているが、これがCDプレーヤーとの違和感の低減に一役買っているかも知れない。とにかく、CDプレーヤーを聞いているのとほとんど同じ感覚でソフトが聞けるのがうれしい。あえて違いを指摘するなら、音の輪郭がクッキリしてそれぞれの音の分離感が高まっていることだろうか?他のDACではそれが過ぎて、音がばらばらになったがNA7004は、そうならずにうまくまとまっている。PCとUSBで繋いで一番心地よい音を出したのが、NA7004だ。
NA7004 / 44.1KHz/16bit / S/PDIF入力
プレーヤー:AIRBOW UD8004/Special 、 ケーブル:AET SIN/DG75
USBと比べ音質傾向の差が非常に小さく、接続による音の違和感がほとんどないことに驚かされた。音が少し落ち着いて、低音にゆとりが出る。ボーカルも細部が克明になるが、USB接続時の適度にぼけた感じ(ソフトフォーカス感)も決して悪くなかった。ボーカルはともかく、S/PDIF入力では楽器の改善が著しく、音色の鮮やかさや雰囲気の濃さにmarantzらしい良さが強く出てくる。この音調なら交響曲を鳴らしても、十分に納得できる音が出せるだろう。

NA7004 / 44.1KHz/16bit / Memory(WAVEファイル)
PCのノラ・ジョーンズ音源データーをUSBメモリーにコピーし、NA7004フロントパネルのUSB端子へ挿入する。こうすることでデーターをダイレクト(PCレス)で再生できる。
USBダイレクトの音はPC-USBよりも明らかに良い。ノイズ感が少なく見通しが良好で、低音の量感も増す。ウッドベースの木質的な音色の再現、ボーカルの艶やかな再現力はPC-USBを明らかに上回り、ハーモニー部分での声の分離感も高い。PC-USBで気になっていた「音がばらばらに分離する感じ」もほぼ完全に消えた。ギターの音色は心地よい。何よりも音が「暖かく有機的になった」ことが音楽を聴く上で最も大きなポイントだろう。今回使用したUSBメモリーは市販の廉価な物(Foaclのプレゼント品)だが、速度の速い高級メモリーを使うと音質はさらに良くなる可能性を秘めている。

NA7004 / 44.1KHz/16bit / Memory(MP3/320Kbps)
音質はわずかに劣化して、細かい表現の再現性が失われる。しかし、それが逆に適度な「ソフトフォーカス感」を生み出して、音楽をゆったりと聴かせてくれる。ボーカルなどはMP3のほうが魅力的に感じるほどだ。細かすぎる余計な音が聞こえないので、より音楽に集中できる。圧縮音源=音質劣化と短絡的に考えずに、一つの「リ・マスタリング」と考えて、積極的な音作りに利用すべきだろう。少なくとも、私ならUSB+MP3でノラ・ジョーンズを聞きたいし、何の不満も感じられない。実に心地よい音で、耳と心にしっくりと音楽が鳴る。

NA7004 / 44.1KHz/16bit / iPod Nano(MP3/320Kbps)
音質的にはUSBメモリーと大きな違いは聞き取れない。それでも、わずかにピアノの音やドラムのブラシの音がクッキリしたようにも感じし、ノラの声が艶を増しより女性的な魅力を増したようにも感じる。そして心なしか音楽の表現(躍動感)も大きくなって感じられ、USBメモリーのダイレクト再生よりも音が良いと思えてくる。
この音質なら、10万円程度のCDプレーヤーから音を出していると言われても違和感はない。それくらい聴き応えのある音が、NA7004+Ipod/MP3で出てくるのは驚きだ。デジタルの長足の進歩を実感させる。
またNA7004との接続ではNanoの機能が生かせるから、お気に入りのプレイリストを再生する、ジャンルやアーチスト別にシャッフル演奏するなど、音楽の連続再生時には大変便利だ。Nanoは携帯性が高いので、別なシステムと音楽ファイルが簡単に共有できるのも良い。NA7004の「ジュークボックス」的な良さはiPODとの併用で倍加する。iPodは安いから、一台買っておかれてはいかがだろうか?
(iPod音質テストはこちら)
今回テストした製品で唯一CDドライブを内蔵し、「単独でCD再生ができる」のがOlive
3HDだ。上級モデルの4HDにはデジタル入出力、無線LANなどの機能が装備されるが、その分価格が高い。「単体プレーヤー」として割り切ったグレードダウンがなされている3HDは、あくまでも「HDDミュージックサーバー機能を搭載するCDプレーヤー」という位置づけだ。その代わり価格が驚くほど安い。メーカー希望小売価格が17万円(税別)という価格は、国産製品でもいまだ存在しない安さだ。
NORA JONES “Come
Away With Me” CD
まずCDをインサートし、リップしない「CDダイレクト」の音を聞く。
これが以外に良い。以外と言っては失礼かも知れないが、普通の10-20万円クラスの単体CD/SACDプレーヤーと変わらない音が出る。少なくともCPUやHDDを搭載している機器が鳴っているとは、全く感じさせない滑らかでウェットな音が出る。エッジは適度に鋭く、音色は鮮やか。楽器のアタックも鮮明だ。音場の前後左右への広がりも自然で、なんら違和感ない「普通」の音でCDが鳴る。この音なら17万円のCDプレーヤーを買ったと考えても、十分に納得できるだろう。少なくとも今回聞いたシステムの中で、最良のノラ・ジョーンズを聞かされたのには驚いた。たった17万円のOlive
3HDでこの音が出せるなら、PCやHDDを購入してCDをリップし、外付けDACで音楽を聞くのがばからしくなるだろう。ただ、3HDは弄れるところがほとんどないのでオーディオ機器としての面白味には欠ける。音楽再生機として考えればこの音質、この機能、この価格は衝撃以外の何者でもない。大人向きのジュークボックスだ。

次にCDを本体に取り込んで(リップして)音を聞く。
CDダイレクト再生とほとんど落差がないが、それでも滑らかさや艶やかさは少し失われる。ハートをグッと揺るがしたCDダイレクトの音に比べ、やや音楽との距離を感じさせる。それでも解像度感や低音の力感、引き締まり具合など、音質は今回テストした機器の中で間違いなくトップクラスだ。リップしたことで失われるのは、楽器とボーカルの掛け合いの微妙な「間(溜)」や音場空間の前後への広がり。
やはりCDをリップしたデーターを再生すると、なにか音楽性に問題が生じるのだろうか?それとも音質は少々落ちるが、リップしたデーターからもCDと変わらない雰囲気を醸し出すことに成功している、NA7004の延長線上にさらなるPCオーディオへの回答が期待できるのだろうか?とにかくPCオーディオが騒がれ出してからまだ、たった2年足らずだ。その短期間で機器と音質がこれほど大きく進歩するとは誰が予想しただろう?CDを追い越す勢いで今、ディスクレス・オーディオが進歩を続けているのは間違いがない。