PMC
EB1
PMCの日本代理店ヘビームーンから新製品EB1の試聴機が届いた。第一印象は「デカい!」IB1Sを縦に伸ばしたトールボーイ・スタイルから連想されるサイズよりも実際にはもっと大きく感じられる。EB1のサイズは、H1200mm(+460)×W295mm(-35)×D465mm(±0)で(
)内がIB1Sとの差になる。幅はIB1Sと同じに見えたたが若干スリムになっている。しかし1200mmという高さはすごい!天井が低い部屋なら、スピーカーと天井の隙間よりもスピーカーの高さの方が大きくなる。角が丸くなっていない、ただの四角い箱を部屋にド〜ンと置いた感じだ。
アンプにはAmpzilla2000+Ambrosiaの組合せを選び、スピーカーケーブルは上の画像の要領で繋いでいる。届いた直後にIB1Sと比較したが、3号館で常に最良の状態で聞いていただけるようにセットアップされているIB1Sの方が音が滑らかで透明感も高く感じられたので、ひとまず24時間は音を出してそれから比較することにした。
ノラ
ジョーンズを“EB1”で聞く
小型スピーカーのように音像がコンパクトにまとまる。音の繋がりはとてもスムースで、突出した所は一切ない。ピアノの打鍵感や音色も癖がなく、中〜高域は、いかにもPMCらしい端正な音だ。BB5との比較では、中域の厚みが薄く感じられるが、これはIB1Sと共通の中域のドライバーの音色だ。BB5が厚みがあるとも言える。
低域は、ベースは弾むが同時に非常によく引き締まっている。ほとんど余計な膨らみが感じられないタイトな音だ。ややルーズでたっぷりとしたIB1Sの低域とは、まったく異なる傾向。透明感さえ感じるほどしっかりと引き締まった低域は、IB1SよりもMB2に似ている。
声は、ニュートラルで明るくも暗くもない。3号館のIB1Sは、EB1よりもほんの少し優しく明るい印象。今回テストしているEB1の印象は、それよりもクールでMB2に近い。ただし、エージングの違いが大きく、鳴らし込めばEB1もIB1Sに近づく可能性が高い。
ノラ
ジョーンズを“IB1S”で聞く
当たり前のことだがスピーカーの音色はEB1に非常に近い。しかし、IB1Sの方が音のエッジがやや柔らかく全体に滑らかだ。ベースとピアノ、ボーカルのハーモニーはEB1よりも美しい。端正な中にも、ほのかな色気が感じられる。これは、スピーカーそのものの音色の違いもあるだろうが、スピーカースタンドを含めたセッティングの方向性の影響が多分にあるはずだ。
低域は、ベースの音量が明らかに小さく、EB1よりも低域の再現能力が劣ることがハッキリわかる。しかし、音楽を聴いていると低域が不足しているとは感じられないのは、音のバランスの処理が上手いのだろう。低域をやや膨らまして、中高域を柔らかく聞かせるこの手法は、IB1SとBB5に共通の“もの”を感じる。
EB1はMB2の血筋で、音を正確に聞かせるモニターという感じ。IB1SはBB5の血筋で、音楽を正確に再現するモニターという感じがする。方向性の違いがある。
ヒラリー
ハーンを“IB1S”で聞く
爽やかで鮮やか!音に濁りが無く明瞭感が高い。まるで遙かに小さなスピーカーを鳴らしているように音像がにじまずコンパクトにまとまっている。見通しと定位は、抜群だ!
弦の振動が駒を伝ってバイオリンの表面を振るわせ、魂柱を伝わって裏側に回り、f字孔から空間に流れる、一連の流れるような音と空気の動き・・・。バイオリンから音が出る様が完全にリニア。奏者がバイオリンに伝えた運動(弓使い)を手に取るようにイメージできる。バイオリンらしい音。生演奏のバイオリンの音色の持ち味がとても良く出ている。安心して心と体を委ねられる音だ。
このディスクは録音にやや問題があって、超低域が足りない(カットされている)からでホール感が出にくい。IB1Sでも場の空気感までは、ほぼ完璧なイメージで再現されるが、ホールのボリューム感は再現されない(演奏しているところもそれほど大きなホールではなさそうだが)。大型スピーカー並みの低域が出ると言っても、このサイズのウーファーとエンクロージャーの組合せではこれが限界のようだ。
しかし、その部分を除き音楽的には、ほぼ100点を与えて良いくらいIB1Sのこのディスクの再現性は高く評価できる。
ヒラリー
ハーンを“EB1”で聞く
スピーカーを切り替えたのがわからないくらい音は近いが、ノラ
ジョーンズで感じられたのと同じように、やはり音がやや硬い。しかし、その差はスピーカーの個性と言うよりはエージングによるものだと思われる。音色の変化もやや乏しいように感じられるが、それも同様にジャンパー線の交換や、セッティングでコントロールできる範囲だろう。
悪口から書き始めたようになってしまったが、IB1Sが持っている美点は、ほとんどそのままEB1に引き継がれている。強いて違いを挙げるなら、やはり低域はEB1が良い!音としては耳に聞こえないが、IB1Sでは再現されなかったホールを振るわせている空気の振動のようなものがEB1では再現される。さすがに低域の再現限界19Hz!は、伊達ではない。
ただし、録音にも問題があるこのソフト(低域の収録が不十分)を聞く限りでは、低域再現能力の差が音楽再現能力の差に繋がっているとは感じられなかった。つまり、音楽的な感動には差が感じられなかったと言うことだ。
シェーラザードを“EB1”で聞く
チェリビダッケの振るオケは、PMCに合っていると思う。どちらも、無駄な音や虚飾を極力廃しているからだ。
シェーラザードの第二楽章を聞いたときEB1の本当の良さがわかった。スピーカーの最大の問題点であるクロスオーバー回路の歪みをまったく感じさせない滑らかで完璧な音の繋がりと、位相の整合性!箱の存在をまったく感じさせないほどビシッと引き締まって、まったく遅れを感じない透明で深く静かな低域。
IB1Sと比べると、音のエッジが明瞭なため音がやや硬く、芯がシッカリする。音源に曖昧さが少なく、観客席を前の方に移動した感じで、舞台袖で聴いている印象に近い。そのため、全体的にやや分析的な印象があるが、それは使いこなしで調整が可能はずだ。なぜなら、柔らかすぎるスピーカーの音を硬くすることは難しいが、少し硬すぎるスピーカーの音を柔らかくするのは、柔らかい音のケーブルをどこかに使うなどの方法でとても簡単にできるからだ。
EB1は、PMCらしい完璧なモニタースピーカーだ!本当に箱の響きが、まったく感じられないのはすごい!どれほどの精緻さで全体が作り込まれているのだろう?EB1は、外観を考えれば非常に割高に感じられるが、この音の精度の高さが精度の高いエンクロージャーに起因していることを知れば、コストが高くてもイギリス生産にこだわることを納得せざるを得ない。
低域の量感は、さすがにBB5のように「リッチ」なものではないが、フルオーケストラを聴くのにはこれでも十分だ。ソナスファベルとは、正反対のプロフェッショナルな音。このソフトの演奏でEB1は、モニタースピーカーとしての性能の高さをまざまざと見せつけた!
シェーラザードを“IB1S”で聞く
EB1が指揮者のポジションで聞く音楽なら、IB1Sは観客席のポジションで聴く音楽だ。
楽器の音はEB1が持っている、まるで生楽器をすぐ側で聞いているかのような驚くべき立ち上がりの明瞭さをほんの少しだけ失うのと引き替えに、カラフルで艶のある音色が与えられる。
すべての音が適度に混ざって、心地よいハーモニーになる。バラバラの素材に分解されていた音が、混ざり合って音楽として完成する。低音は不足しているはずなのだが、中高域の美しいハーモニーに耳を奪われて、その差がほとんど感じられないから不思議だ。
演奏者の顔から緊張が消え、柔和な笑みに変わる。EB1で聴くシェーラザードは、音楽と対峙している感が強かったが、IB1Sで聞くそれは、一つの物語として音楽を聴いている感じになる。音楽として聞くなら、IB1Sを選びたい。安心して音楽に身を委ねていられるからだ。
でも繰り返すが3号館で聞くEB1とIB1Sの差は、使いこなしによる部分の差がほとんどだと思われる。なぜなら、3号館のIB1Sは、スタンドを選び、インシュレーターを選び、レーザーセッターで位置を決め、SWEET-SHEETで音の暴れを抑え、トルクドライバーでユニットの締め付けを調整し・・・。丹誠を込めた長きにわたる調整でこの甘美な音を引き出しているのだから。それと工場から出荷されただけの状態のEB1と比べるには、条件があまりにも違いすぎるのは、言うまでもない。
タイタニックを“IB1S”で聞く
試聴の締めくくりにPMCの定番ソフト、タイタニックを聞く。透明な空間表現。深く沈み込むような低域の量感。スピーカーの性能をこれほど克明に描き出すソフトもそう多くはないだろう。
その難しいタイタニックをIB1Sは、余すことなくほぼ完璧に再現する。理が立ちすぎず、情に流れすぎないギリギリのポジションに踏みとどまって、深く静かな音を出す。すべてが完璧で非の打ち所がない。
低域は、深く静かに沈み込み、高域はいぶし銀のような渋いきらめきで空間に満ちあふれる。単なる映画音楽を芸術の域にまで高められるのは、PMCの高い音の再現能力に裏打ちされた高度な写実性のなせる技ではないだろうか?
IB1Sは、無駄な音を出さないしモニター的だが、クール過ぎるスピーカーではない。多くのモニタースピーカーが大音量のリニアリティーを重視するあまり、小音量時のリニアリティーを犠牲にし、楽器を取り巻く空気の響きや動きの細かさを再現できず、結果として周囲の響きが乏しくなり、まるで真空の中で楽器がなっているように感じられることがあるが、PMCはそうではない。IB1Sなら耳に聞こえない、目に見えないような微細な空気の動きすら、体で感じることができる。大音量時のリニアリティーを確保しながら、小音量時のリニアリティーを一切犠牲にしていない。それがPMCの卓越した技術。
この技術があればこそ、PMCは蚊の鳴くようなピアニッシモから窓ガラスが割れるほどのフォルティッシモまで、ほとんど歪みを感じさせずに再現できるのだ!
PMCだけが持つ、PMCだけにしかない驚くべきHiFiの世界。究極の写実を目差し音楽を再現しようと思うなら、スピーカーはPMC以外考えられなくなるはずだ。それがPMCの魅力。その高価な価格を正当化できる唯一の理由は、そこにある。
タイタニックを“EB1”で聞く
音が出た瞬間!空間が数倍広く感じられ、EB1とIB1Sとのスケール感の違いに圧倒される。EB1にあってIB1Sにない、低域の持つ空間再現能力がこのソフトで露わになる。
なぜなら、アコースティック楽器は倍音構造が明確なために、中高域がきちんと出ていれば人間には低域不足が感じられにくくなるのだが、シンセサイザーのように物理的な条件を持たずに発生する楽器の音では、低域がなければそれはそのまま不足として感じられる。タイタニックに収録されている低音は、正にその「シンセサイザーの低音」だからなのだ。
タイタニックを聞けば、EB1はIB1SとMB2のちょうど中間あたりに位置するスピーカーであることが実感できる。もしEB1とIB1Sの中高域にまったく差がないとすれば、印象の違いを生むのは、純粋に低音の違いだけだろう。EB1のサイズはデカいが、それは伊達ではなかったのだ!そこから絞り出される低音は、価格差を超える価値がある。
EB1のまとめ
IB1SとEB1のどちらを選ぶか?それは、非常に難しい問題だ。違いは低域だけなので、IB1Sにサーロジックのような優秀なサブウーファーを奢ってやれば、差はほぼ完全になくなるかIB1S+サブウーファーがEB1を上回るだろう。しかし、その組合せではセッティングが面倒で、良い音を出すのは豊富な経験がなければ難しい。
今回のテストの結論を出すとすれば、一般家庭で一般的な音楽を聴く限りでは、スピーカーはIB1Sで良いと思う。しかし、金に糸目を付けずにこの小さな?スペースから最高の音を出そうと思うなら、やはりスピーカーにはEB1を選ぶ以外にないだろう。これほど寡黙で、またこれほど雄弁なスピーカーは、他にはないはずだから。

Sonusfaber elipsa
EB1と同時に届いていた、ソナスファベルのELIPSAの試聴を開始する。箱から出しての第一印象は「美しい!」このスピーカーを展示するだけで、3号館の印象が「うさんくさいオーディオショップ」から「高級ブティック」に変貌する!それくらい、存在感と高級感がある。たとえ音が出なくても、その外観だけでも販売価格の半分くらいは出してもかまわないとすら思えるほど、その姿形は素晴らしい。
早速、タイタニックをELIPSAで聞いてみる。EB1と比べて解像度がたりないし、音はボケているし、低音も濁っているし、まったく駄目な音。・・・。言葉を失う。しかし、届いたELIPSAは、全くの新品。エージングで音が変わるのは間違いがないし、またそれにどれくらい時間がかかるのか興味が引かれる。
この時点で時計は、午後2時を回ったところ。そこで、ヒラリーハーン、シェーラザード、タイタニックの3枚をCC4300/Specialにセットし(こんなときに5連奏プレーヤーはすごく便利)、リピート演奏でエージングを開始する。アンプは、EB1を鳴らしていたのと同じAmpzilla2000+AMBROSIAをそのまま使うことにする。
普通よりやや大きめくらいの音量でリピートを続ける。
仕事が結構忙しくてELIPSAの音を聞いてはいられなかったが、仕事がほぼ一段落した午後8時頃、ヒラリーハーンの音が変わっていることに気付く。立ち上がりが早くなり、濁りが取れてスッキリしている。そして、バイオリンらしい木質的な響きがとても心地よくなっている。
さらにちょっとした書き物やホームページの更新作業を行いながら、ELIPSAを聞き続けると楽曲がシェーラザードに変わった。すごい!オーケストラの響きが木質的でとても心地よく、心に響く。何百回と聞いたシェーラザードなのに、思わず手が止まる。
シェーラザードに引き込まれている間に曲が終わりタイタニックに変わる。当初あった低音の濁りが取れている事に気付く。レンジも大幅に拡大して、過大だと感じられた音の濁りも、もやもや感もほとんど消えている。それでもPMCと比べると音のエッジは少し甘いが、気になるほどではない。
すでに時間は午後10を過ぎている。こんなにいい音を残して・・・。後ろ髪を引かれる思いで、CDをリピートにしたまま、明日このスピーカーをもう一度聞けることを楽しみにしながら会社を後にした。
2日目。
ドアを開ける前からELIPSAのいい音は漏れてくる。その音がまた実に素晴らしい。時として「良い音」は、スピーカーの前で聞くのではなく、外に漏れてくる音を聞く方が判別しやすいことがある。なぜなら、本当にバランスの良い音でスピーカーが鳴っているとドアの外では「生演奏」が室内で行われているとしか感じられないほどになるからだ。
2日目だというのにELIPSAは、すでに「そういう音」を鳴らしている。試聴を行うまでもなく、合格の音!
でも、レポートを書くのは、仕事だし、そうしなければELIPSAの良さは誰にも伝わらない。そこでEB1と同じ順序でソフトを演奏し、感想を書くことにする。
“elipsa”でノラジョーンズを聞く
低音はダンピングが甘く、バスレフの悪癖を感じさせるややふくらんだ音だ。低域〜高域への繋がりの精緻さも昨日聞いたEB1には、敵わない。ピアノの打鍵音もエッジが甘く、響きも濁っている。24時間のエージングを経ても、その印象は大きく変わらない。EB1が透明なクリスタルを連想させる音なら、ELIPSAは生暖かくちょっと濁った水のようだ。
オーディオ的にEB1とELIPSAを評価するなら、こんな感じになるがそれは、ELIPSAの一面でしかない。ELIPSAの素晴らしいところは、音が明るい!音が楽しい!ということだ。
EB1で聞くノラジョーンズは、スタジオで張りつめたテンションの中での演奏に聞こえた。極端に言うと、触ると壊れそうなくらいの繊細な演奏をスピーカーの真ん前に陣取って、声を押し殺し腕を組んでじっくり聞く!聞かせていただこう!という感じの演奏になる。
ELIPSAでは、それとはまるで違う。明るい陽光を浴びながら聞くお洒落なカフェのライブのように、演奏が開放的で明るく楽しくなる。日の光を浴びながらノラジョーンズが微笑みながら音楽と戯れているようなイメージが自然と湧き上がってくる。会話を楽しみながら聞いても良いし、本を読みながらでも食事をしながらでも、どんなスタイルで聞いても「叱られない」リラックスした雰囲気で気楽につきあえる音になる。家庭用としては、この雰囲気は何よりもありがたい。
音楽と対峙させるEB1、音楽をさりげなく身近に感じさせるELIPSA、性格は正反対だが、どちらも一聴に値する高いレベルにあることは間違いがない。
“elipsa”でヒラリー
ハーンを聞く
ノラジョーンズを聞いた時と同様、ヒラリーハンのソフトでもEB1は演奏が収録された「現場の様子」が克明に伝わって来るが、ELIPSAで聞くとまったく違った印象になる。演奏からまるでヒラリーハーンの「人柄が見える」かのように、心が自然に伝わってくる感じがする。しかし、情熱的に聞こえるからと言って、決して演奏が浪花節のように厚ぼったくなるのとは違う。
EB1は、音がまず耳に入ってくるのだが(それくらい音質が良い!)ELIPSAは、雰囲気から伝わってくる(音質はEB1よりも良くないが)と言う違いなのだ。そう言う意味では、ELIPSAは、TANNOYに近いイメージを持っているのかも知れない。しかし、それはあくまでもEB1との比較だ。もちろんELIPSAは260万円という価格にふさわしい「音質」も十分に兼ね備えている。バイオリンは、木質的な響きを伴って朗々と響き渡る。ヒラリーハーンがバイオリンと「戯れて」いるかのように、演奏はリズミカルに躍動する。
現代的なスピーカーの名に恥じないだけの音の細やかさ、レンジの広さを持ちながら、ELIPSAは独特の「響き」という隠し味も合わせ持っている。このELIPSAの「明るい響き」が、演奏をより楽しく躍動的に聞かせるためプラスに働くのだ。響きを付け足して演奏をより楽しく聴かせる。だからこそELIPSAは、「TANNOYに近い」と思うのだ。
“elipsa”でタイタニックを聞く
エージングを開始して27時間が経過してタイタニックを聞く。中高域の滑らかさ、低域の力感が鳴らし始めとはまったく違っている。
当初感じていた「低域の膨らみ」は、見事に解決し、リジットで固まり感のあるしっかりした低域が出ている。中高域も繋がりが滑らかになり、濁りはほとんど消えている。透明感も相当高いが、EB1のように“キン!”と冷やしたミネラルウォーターの澄み切った透明感とは違い、ELIPSAのそれは“常温の柔らかいミネラルウォーター”の雰囲気。冷たさは欠片もない。適度な暖かさの程よい温度感でタイタニックが再現される。EB1の評価では、主に「音質」に耳が奪われたが、ELIPSAの評価では「音楽性」に心が奪われる。
すでに述べたように、音質はEB1が確実にELIPSAを凌ぎ、「精緻な音」という表現がピッタリと当てはまる、EB1のそれに比べるとELIPSAの音は輪郭がやや甘く、音のエッジが不明瞭だ。そのために楽器や音の分離感ではEB1ほど優れているという印象はない。
低域の伸びや量感は?やはりEB1の方が上だと思う。高域の切れ味や透明感(濁りの無さ)もEB1が勝るだろう。そう言いきってしまえば、EB1に比べてELIPSAにはよい所がないように聞こえるだろう。ELIPSAも非常に音質の優れたスピーカーなのだが、あまりにもEB1の能力が底知れないため、音質だけを比較すると分が悪い。しかし、ELIPSAの持ち味は、絶対的性能ではない。巧みな音のチューニングによって、ソフトの粗やオーディオセットの性能の限界点を感じさず、ただひたすらに音楽のファンダメンタルなエネルギーをとことん引き出すところにこそ、その良さが集約されている。ここから上が無くなる、ここから下が無くなる、という周波数の境界線が感じられないから、自然体で音楽に触れることが出来る。驚くべき自然体の音。
EB1で聞いたタイタニックは、スタジオで演奏されているように緻密で知的だった。正にロジックで音楽が展開されてゆく感じである。対してELIPSAで聞くタイタニックは、劇場で生演奏を聴いているようにダイナミックでドラマチックだ。スペクタクルを見ているように、音楽が壮大に展開されてゆく。
私なら、仕事で音楽を聴くにはEB1をプライベートで音楽を聴くならELIPSAを選ぶだろう。
“elipsa”のまとめ
ELIPSAは、こんなに良いスピーカーなのに近畿圏内に聞けるお店がない。そこで逸品館がその第一号店に名乗りを上げることにした。
と言うわけで今回試聴に借りたELIPSAは、メーカーに戻ることなく3号館で音楽を奏で続ける。私はその心地よい音色に身を委ねながら、これまでよりも陽気な気持ちで溌剌と仕事を片付けられるようになるだろう。
ソナスファベル。それは、伊太利亜の粋!美しいモニュメントのような姿でインテリアを引き立てる。暖かく愛情溢れる音色で疲れた心を癒すだろう。それはシリーズの全商品に共通する大きな美点だ。ELIPSAは、決して安くはないけれどリスニングルームをリゾートホテルのスィートルームに変えることができる、数少ないスピーカーだと思う。このスピーカーを手に入れたとき、贅沢という言葉の本当の価値を知ることができるはずだ。