【2024年】逸品館おすすめスピーカー27+2モデル聴き比べ「その3:ブックシェルフ型 ハイエンドモデル(~約50万円)」

202412_sp27-review03_hdr

目次

はじめに

このグループは、ペア約50万円で購入できる"ブックシェルフ型 ハイエンドモデル" 5製品のグループです。
さすがにこのクラスになると開発費と製造コストを十分使えるので完成度が高く、下位モデルのように"良否"はあまり感じられません。どのスピーカーを聴いても良い音です。また、しっかり音作りができるのでメーカーの思想が製品に反映され個性が際立ちます。このグループの製品は、音質ではなくスピーカーそれぞれの"個性"を聴き分けることにチャレンジしてみてください。

【補足】さらに試聴機貸出期間の都合により、フロア型スピーカーでは最高価格の"Vienna Acoustics - Bach Ultimate(100万円・ペア・税別)"の音質チェックもこのタイミングで実施したため、当レポート内に加えています。

▼ 試聴概要と機種説明・2024年 逸品館おすすめスピーカー27+2 モデル聴き比べ「その3」

聴き比べスピーカー一覧
  ブックシェルフ型 【3】ハイエンドモデル(予算約50万円以内)

今回は次の5モデルを選び聴き比べました。
(※メーカー順。YouTube投稿順とは異なります。)

  1. DALI(ダリ)
    1. RUBIKORE2
  2. B&W(ビーアンドダブリュー)
    1. 705 S3 Signature
  3. musikelectronic(ムジークエレクトロニック)
    1. ME25
  4. Vienna Acoustics(ウィーンアコースティクス)
  5. YAMAHA(ヤマハ)

タイプ・価格帯別 スピーカー聴き比べリスト

■製品紹介

B&W(ビーアンドダブリュー)

◇ 705 S3 Signature
ペア/ブックシェルフスピーカー
bw_705sig_spec

(ダトクグロス / ミッドナイトブルー・メタリック)
メーカー希望小売価格 654,000円(税別)
  ※市場実売価格約 486,000円(税込)

musikelectronic(ムジークエレクトロニック)

◇ ME25
1本/ブックシェルフスピーカー
Musikelectronic_me25_spec

市場想定価格
アッシュ・ブラック 240,000円(1本・税別)
マホガニー/バードアイメープル 340,000円(1本・税別)
※2025年3月 価格改定実施により値上げ

Vienna Acoustics(ウィーンアコースティクス)

YAMAHA(ヤマハ)

その他の使用機材

今回の聴き比べは、逸品館・3号館のメイン試聴室で行いました。
試聴環境、スピーカー以外の製品は下記の表をご確認ください。

システム
ネットワークストリーマーVolumio - Rivo
ミュージックサーバーCHUWI - Lake Box N100(AIRBOW - IDC-RMP12※生産完了 使用)
CDプレーヤーAIRBOW - SA12OSE Master
アンプAIRBOW - PM12OSE Master
▼ケーブル・アクセサリー等
スピーカーケーブルAIRBOW - SPK-300
オーディオボード
(スピーカー用)
AIRBOW - WFB-4449H-HD(生産完了品)
スタンドAIRBOW - STAND-G21(生産完了品)

試聴テスト使用楽曲

試聴テスト本文

DALI(ダリ)

▼ RUBIKORE 2
評価:RUBIKORE 2
"KORE" からスタートした、DALIの新しいラインナップの1つが "RUBIKORE シリーズ" です。
DALIお得意の大口径テキスタイルドーム型ツィーターを採用するRUBIKORE 2の高音は、のびやかで色彩感豊か。弦楽器や人間の声の再現性は見事です。

新開発された馬蹄形の強化リブを持つウッドファイバーコーンから繰り出される低音は、低いところまでよく伸びて明瞭度もなかなかです。
新しい技術で伝統のDALIサウンドを再構築して作られたRUBIKORE 2は、DALIらしい明るく有機的なサウンドで音楽を生き生きと再現し、リアルな音像と美しい響きでリスニングルームは満たされます。
スピーカーの存在は完全に消え、リスニングルームに音楽の余韻だけが残りました。

B&W(ビーアンドダブリュー)

▼ 705 S3 Signature
評価:705 S3 Signature
市場評価は高いので売れてはいましたが、B&Wは長く私が評価しないスピーカーでした。なぜならば音はよいのに音楽が伝わらないからです。
そのもっとも大きな原因は"音色の統合性の欠如"にあります。ケブラー繊維を使うウーファーと金属ツィーターの"音色"が合わないのです。調律したピアノを再生しても、調律がずれて聴こえるほどです。度の合わない眼鏡をかけたときのように、長時間聴き続けると頭痛がしたほどです。

けれど同時に、Silver Signature 25や、"805 Signature Diamond Maserati Edition" のように、私を感動させうるスピーカーも輩出している不思議なブランドです。
今回試聴した705 S3 Signatureには、805 D4譲りの"ツィーター・オン・トップ"の形状と、銀を使う"ショートリング"が採用されています。実際その効果は高く、705 S3 Signatureからは冷たく硬い音は出てきません。しかし、DALIのような響きは少ないためか、かなり"ストイック"なサウンドに聴こえました。

スピーカーの特性を要求する電子楽器の再現性はDALIを大きく凌ぎますが、アコースティック楽器の響きの甘さやデリケートなニュアンスの再現はDALIほど得意ではありません。低音が豊かな702 S3ではその傾向は抑えられ、かなり幅広く音楽を楽しめるのですが、705 S3ははるかにストイックで再生する音楽のジャンルや聞き手の好みを選びます。けれど、個性が際立つからこそ選択は案外簡単なのかもしれません。

musikelectronic(ムジークエレクトロニック)

▼ ME25
評価:ME25
musikelectronic geithain(ムジークエレクトロニク・ガイザイン)のスピーカーは、故・坂本龍一氏が愛用したことで知られています。
私が招かれたコンサートでは、ステージ両脇に設置されたmusikelectronicの大型パワードスピーカーから発せられる音と、坂本龍一氏ならではの独特で繊細なタッチから紡ぎ出されるピアノの音が完全にマッチし、ピアノの生音を聞いているのか、スピーカーの音を聞いているのかまったく区別できないという不思議な体験をしたことを覚えています。
また、"musikelectronic 小型パワードスピーカー RL906" は、NHKのスタジオでマルチ・チャンネル録音用モニターとして使われています。

今回試聴したME25は、アンプを搭載しないパッシブモニターですが、自社製の"同軸2WAYユニット"が1つ搭載されています。キャビネットは良い響きを生み出すように、上質な天然木が使われ吸音材も少なめです。
ME25は、このクラスのスピーカーとしては"非常に軽く"作られています。それは制振材や吸音材を極力使わず、スピーカー全体を楽器のように響かせて音を作っているからです。小型2WAYと同軸ユニットの組み合わせにより、定位感と立体感は抜群です。ややソフトフォーカスですが、奏でられる音は有機的で温かく心を癒します。低音も驚くほどよく出ており、たとえば"パイプオルガン"の音を聴けば、部屋中がオルガンの厳かな音で満たされ驚かれることでしょう。
時間の流れがゆったりと感じられるような独特なムードを持つな音ですが、弦楽器はハッとするほどリアルです。
バスレフポートがフロントにあり、壁にぴたりとくっつけても音質に大きな問題は生じないME25は、デスクトップモニターやパーソナルなリスニングルームの友として、アナログ録音時代のヴォーカルやクラシックを中心に、ジャンルを選ばず音楽を生き生きと鳴らしてくれるでしょう。

Vienna Acoustics(ウィーンアコースティクス)

▼ Haydn SE Signature
▼ Bach Ultimate(※フロア型)
評価:Haydn SE Signature
Vienna Acousticsは、1990年頃に当時のCEC社長の石渡氏と一緒に、ロサンゼルスで開催された"Winter CEC"に出向き、輸入可否の検討のため立ち寄ったVienna Acousticsのブースで、設計者のピーターに「もっとも廉価な2WAYブックシェルフに、一つ上級モデルに使われている”スキャンスピークー製ツィーター”を移植できないか?」というリクエストを出したことがきっかけで生まれた"Model S-1"から、日本国内への輸入が始まりました。当時のS1の価格は約130,000円(ペア・税別)ですから、その子孫にあたるHaydn SE Signatureは、ずいぶんと高くなったものです。

元々私の中でVienna Acousuticsは、「驚くほどの高音質でありながらめちゃくちゃ安い!」という立ち位置だったため、度重なる価格の上昇に比例して販売から遠ざかっていましたが、、昨今の全メーカーの値上げラッシュの中では、すでにVienna Acousticsだけが極端に高いということはなくなりました。
ただ、輸入開始当時からほとんど変わらない"外観"のせいで、どうしても昔のイメージを重ねてしまう私の"偏見"は、Haydn SE Signatureから一音目が出た瞬間、ガラガラと音を立てて崩れ去ってしまいました。耳に聴こえてきたのは当時の"Model S-1" とは次元の違う、素晴らしいサウンドだったからです。

これは、合わせて試聴した"Bach Ultimate" にも共通して言えることなのですが、なぜこんなシンプルなユニット構成でこれほど広帯域かつ高精細度な音が出せるのか? そこに設計者ピーターの天賦の才を感じずにはいられません。
高音は澄み切ってどこまでものびやかに。低音も濁りなくシャープな音像イメージを持ちながらどこまでも低く。中音は透明で艶やかに。すべての音が磨き抜かれたクリスタルグラスのように透明で高密度です。
選び向かれた材料(木材、ユニットの材質、ネットワークのパーツなどすべて)だけをシンプルに組み合わせたからこそ実現した、透明かつ艶やかで有機的なこの音は"孤高"と表現できるものです。そしてそれは他ブランドにはない独自性であり、最高の日本食(割烹料理)に通じる味わいを持っていました。

Haydn SE Signatureは、価格相応以上の素晴らしいスピーカーでした。
評価:Bach Ultimate
このスピーカーもその構成と価格をすり合わせたとき、驚きを禁じえませんでした。
「ただの2WAYフロア型でこの値段…? 」初めは誰もがそう感じると思います。同じ予算ならユニットが5個もついて3WAYで仕上げも美しいB&W - 702 S3に手が届くのですから。
けれど Haydn SE Signature を聴いた時と同じように、Bach Ultimate から一音目が出た瞬間に、そんなことはどうでもよくなりました。

このスピーカーの最大の魅力は"圧倒的な透明感(濁りの小ささ)"です。B&W 702 S3と聴き比べればそれがよくわかります。
スピーカーの理想はフルレンジ型にあるといいますが、帯域を分割することなく広帯域で高精細度の音が出せれば、複雑な仕組みはいらないはずです。その理想を現実にしたのがBach Ultimateです。
また、同じシステムで"Haydn" と "Bach" を聴き比べれば、Haydnが"Signature"と名付けられ、Bachが"Ultimate"と冠された理由が理解できます。
"Signature" でも十分素晴らしいのですが、"Ultimate=究極"。つまり、これ以上は存在しないと彼らが名付けた音を聴けば、100の言葉よりもBach Ultimateが発するたった"一音"によって、それが即座に理解できるでしょう。

これは並ぶものがない、1つの完成した素晴らしいスピーカーシステムです。

YAMAHA(ヤマハ)

▼ NS-800A
評価:NS-800A
AIRBOW - SA/PM10 Ultimateを使い、DALI - RUBIKORE2を聴いたときは、その圧倒的な"中域の濃さ"で私を圧倒したNS-800Aですが、再生システムを変えるとがらりと音が変わり、今回はやや無機的で単調な印象に変わりました。
その原因は"ウーファーとツィーターに同じ材質(ザイロン)"を使ったことや、比較的しっかりと響きを制御しているその音作りにあるのではないかと思います。
NS-800Aの最大の魅力は"音色の統一感"にあります。スピーカーの設計では再生周波数に合わせた材料を使うのが普通ですが、YAMAHAはあえて"ザイロン"で材料を統一しています。それによって他のスピーカーでは実現しえない"音色の統一感"を実現しているのです。また、音色が魅力の"アナログ"とのマッチングは特に優れています。

しかし、同時にやや"鳴らしにくい"という特性も持ち合わせています。ポテンシャルは高いのですが、それを引き出すのは一苦労です。
もし私がこのスピーカーを最初に聴いたとき、他のアンプを使っていたら評価は全く違ったものになっていた可能性があります。それほどアンプとのマッチングに癖があります。今回は、最後にアンプを真空管のAIRBOW - Stingray Ultimateに替えて鳴らしましたが、その時の音と、前回SA/PM10 Ultimateで鳴らしたときの音がこのスピーカーの真価だと思うのです。フルレンジのように音色がびしっと統一されていながらワイドレンジ、2WAYでありながらフルレンジのように中域が濃い。それがこのスピーカーの持つ特徴であり、他のスピーカーにはない大きな魅力です。

アンプとの強い相性がありますが、それが嵌った時の音は素晴らしいものがあります。響きが豊かなアンプや、アナログ再生がベストです。