【スピーカーの位置調整に挑戦しよう】5. レーザーセッターを使おう
レーザーセッターを使おう
■人間の音源判断のメカニズム
なぜ人は音の方向がわかるのでしょうか。人は音を聞くとき、音量の差や、伝わる時間の差、あるいは位相差や周波数特性を無意識のうちに感じています。たとえば、左前方で物音がした場合、左耳の方が大きく聞こえたという「音量差」による情報を得ると同時に、左耳の方が早く伝わったという「時間差」による判断も瞬時に下しているのです。
また、音源からの音波は、直線的に耳に届くわけではありません。頭や自分の耳や胸などに反射しながら鼓膜まで到達します。音波は、前から届くケースと後ろから届くケースとでは、反射の仕方などが異なっているわけです。人は、その伝わり方の違いを記憶しているため、今、その音はどこから聞こえたかを知ることができるのです。
このように私達は「音波の相関関係」から音の立体感を認識しています。スピーカーが一本(モノラル)のときは、音波の相関関係は「1つの要素(1つのスピーカーからの情報)」で再現されました。スピーカーが2本(ステレオ)になると、それが「2つ」になります。クリーンな立体感を得るためには、左右スピーカーを正確な2等辺三角形に設置して、スピーカーが発生する音源の方向や距離感を正確に「マッチ(整合)」させる必要があります。
レーザーセッターができるまでは、フロアに線を引く、メジャーでスピーカーの位置関係を測定し、さらにヒヤリングを行って「立体感に優れる位置」を見つけていました。イベントなどでスピーカーを移動するときは、スピーカーの設置位置に印を付け、そこに戻すのですが数㎜以下の誤差でスピーカーを元の位置に戻しても、音が元に戻らないことに気づきました。
そこで正確な2等辺三角形の「誤差」がどの程度許されるのかを、波長で考えました。CDに記録できる最高音は20kHzです。20kHzの波長は、17mmです。フロアにマークを付けてスピーカーを戻すとき、これほど大きな位置誤差は生じません。しかし、スピーカーからまっすぐに線を引いて、その延長線上が交わる位置なら、それ以上に大きな誤差を生じます。そこで、レーザー光線と反射鏡を使って、スピーカーを「精密な二等辺三角形」に設置する方法を考案しました。それが「レーザーセッター」です。
■レーザーセッターのイメージ
レーザーセッターを使ってスピーカーを「精密な2等辺三角形に設置」する目的、それによって実現する「クリアで自然な音の広がり(立体感の再現)」は、次のようなイメージです。2台の映写機を使って、一枚のスクリーンに映像を重ねて映すとき、2台の映写機とスクリーンまでの距離と角度が完全に一致しなければならない。
2台のスピーカーを使って、1つの音像(単一の位置情報)を正確に再現するには、空間の任意の位置までの距離と角度が完全に一致しなければならない
AIRBOW レーザーセッター 本体のみ 16,500円(税込)お求めはこちら
三脚付きセット 20,900円(税込) お求めはこちら
付属の小さなミラーを「スピーカーのフロントバッフル」に貼り付けます。
バッフルが小さいアールでカーブしている場合、大きく傾斜している場合には、レーザーセッターが使えないことがあります。詳しくはお問い合わせくださいませ。
リスニングポジションよりも少し前方に、ビデオ(カメラ)用の三脚を設置し、レーザーセッター本体を取り付けます。
レーザー光線をスピーカーのミラーに向けて照射し、レーザーセッター本体のターゲット中心に戻るように、スピーカーの角度を調整します。
レーザーセッターから、ミラーまでの距離を付属の糸で測定します。
反対側のスピーカーを同じように調整し、レーザーセッター本体と左右のスピーカーに取り付けたミラーまでの距離を「同じ」にします。
正確なステレオイメージで録音されたソフトを左右のスピーカーで再生しながら、どちらか片方のスピーカーを僅かに前後させ、音がクリアになる位置を探します。このとき、スピーカーに取り付けたミラーから反射するレーザー光が、正確にレーザーセッター本体ターゲットの中心に戻るよう、スピーカーの角度が変わらないように注意します。
調整法が正しい場合には、1㎜以下の位置誤差で「音の広がりがクリアになるスピーカーのポジション」が聞き取れます。
■お薦めのチェックディスク
合唱 オスカルモルテット合奏団 「カンターテ・ドミノ」 Proprius PRCD7762 (お求めはこちら)
ワンポイントステレオで録音された「教会のクリスマス曲」です。金管楽器、パイプオルガン、コーラスと非常に幅広い種類の音源が使われています。
レーザーセッターを使う前の調整です
1曲目を片側のスピーカーで鳴らしてチェックします。まず、冒頭部分のパイプオルガンを聞きながら「低音がクリアに聞こえる場所」を探してスピーカーを前後に動かします。次にスピーカーの角度を変えながら、パイプオルガンと金管楽器、コーラスの音がクリアに聞こえる方向を探します。
レーザーセッターはここから使います。
9曲目を鳴らしながら、スピーカーを数mm前後して、ボーカルが中央にコンパクトに定位し、エコーが大きく広がるスピーカーの位置を探ります。
10曲目を鳴らしながら、コーラスが中央に定位し、女性が前、男性が後ろに位置し、コーラス隊の声が後方に向かってV字に展開するようなスピーカーの位置を探ります。
360度方向に音がムラなく広がって聞こえれば、OKです。
確認のため1曲目を両方のスピーカーで鳴らし、冒頭部分のパイプオルガンが勢いよく、ハッキリした音で鳴り、パイプオルガンと金管楽器、コーラスの音が綺麗に分離していたら調整は完了です。