LUXMAN - L-507Z(プリメインアンプ)ご紹介と試聴+ M-10Xとも聴き比べ

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目次

今回のメイン使用機材

■ LUXMAN - L-507Z
(プリメインアンプ)

メーカー希望小売価格 630,000円(ペア・税別)

ラックスマンのアンプには純A級AB級があります。プリメインアンプの場合、型式番号の真ん中の数字が0(L-507Z、L-509X、L-505Zなど)のモデルがAB級で、L-565A Limited、L-550AX2など、0でないモデルが純A級です。新発売されるL-507Zは、定格出力 110W×2(8Ω)、220W×2(4Ω)のAB級プリメインアンプです。

「LIFES Version 1.0」を搭載

現在トランジスターアンプはフィードバック(負帰還)をまったく使わない無帰還アンプとそれ以外に分かれていますが、フィードバックとは「出力部で検出した歪み分を入力に戻す(負帰還)することで、全体的な歪み率を改善する回路」の総称です。しかし、パワーアンプ回路はスピーカーに直結されているため、出力信号は常にスピーカーからの影響(逆起電力など)を受けているため、単純に出力信号で検出される歪み分だけを入力に戻した場合、補正が効き過ぎる=歪みが減らないなどの悪影響や、出力から入力に歪み成分が戻るまでの時間差(遅延)などの悪影響が考えられます。

しかし、完全に無帰還にした場合はトランジスターで発生する歪み(回路の中で発生する歪み)が、補正されず垂れ流しになってしまい周波数特性や歪み率が悪化します。このように無帰還アンプにも帰還アンプにも、それなりの問題があるので、一概にどちらが絶対に有利=音が良いとは決められませんが、あるなしを含めてフィードバック(負帰還)回路がアンプの音質を大きく左右することは間違いのないことです。

LUXMANは、長年「ODNF:Only Distortion Negative Feedback」と呼ぶオリジナルの負帰還(フィードバック回路)を使ってきました。今回は、それが「LIFES:Luxman Integrated Feedback Engine System」に変更されたことが最大のポイントです。た。M-10Xで始めて使われるフィードバック回路「LIFES:Luxman Integrated Feedback Engine System」は、トランジスターの極性が反転され NチャネルJ-FETPNPトランジスター の組合せが使われます。

今回初めて使われるこの回路「LIFES Version 1.0」では、従来の回路に比べて回路全体をシンプルに再構築することで、性能改善と部品数の削減にも成功(時間的遅延も改善)し、従来回路比で全体の歪を半分以下に低減することに成功しています。

このLIFES回路を含む出力段は、3段ダーリントン3パラレル・プッシュプル構成を採用し、AB級110W+110W(8Ω)、220W+220W(4Ω)の完全なパワーリニアリティ性能を実現します。

「LIFES Version 1.0」の詳細

今回刷新されたフィードバック回路「LIFES」は、アンプ全体の歪みを減らすのではなく、ODNFと同様にパワーアンプ部の歪みだけを減らす技術です。従来のODNFとの最も大きな違いは、単純により良い音のパーツを使うために、トランジスターのチャンネル(極性)が変更(反転)されたことです。

ODNFは、PチャネルJ-FET + NPNトランジスターの組合せでしたが、これがLIFESでは反転されたNチャネルJ-FET + PNPトランジスターの組合せになっています。これは、電圧変化を電流変化に変換するために使われる高性能FETに、より長期安定的な供給が可能なNチャンネル J-FETを使うためです。

入力部のJ-FETが高性能なNチャンネル型に変えられたことで、ODNFに比しLIFESではパワーアンプ部の歪みが半分以下、SNは3dB向上しています。

新型ボリューム「LECUA1000」

ボリュームには、音量コントロールIC(集積回路)を使わず、半導体リレーによって基板上の抵抗を制御することで音質の劣化を抑え、88ステップのスムーズな音量調節を実現する、アンプ回路一体型・電子制御アッテネーター新LECUA1000が採用されます。

強力にパワーアンプ部をドライブする「ディスクリート バッファ回路」

LECUA1000から出力された信号は、次段を強力にドライブする上級機仕様のディスクリート・バッファー回路に入力されます。

バッファーの出力は、LIFESを搭載するパワーアンプ部に入力され、スピーカー端子から出力されます。

L-507Zの内部写真
その他の特徴

大型のプラグを装着した各種高音質ケーブル真鍮の硬度と銅の導電率を併せ持つ高品質カッパーアロイRCA端子をLINE1に採用。
高レギュレーションの電源トランスと大容量(10000μF×8本/2020年新開発)を組み合わせたハイイナーシャ(高慣性)電源

不要な振動による影響を排除するカスタム仕様、グラデーション鋳鉄製レッグ採用。
2.14m㎡に導体断面積をUPした高純度無酸素銅(OFC)線を使用し 取り回しの良いスリムなシースと
確実な接続を実現する新形状機器側 プラグを採用した新リファレンス電源ケーブルJPA-10000iを標準で付属。

その他の詳しい特徴につきましては、LUXMAN公式サイト「L-507Z」製品ページをご覧下さい。

その他の使用機材

音源は、AIRBOW - MBN-N54 LTD MK2(ノート型ミュージックPC)AIRBOW - HD-DAC1 Special(D/Aコンバーター)をUSB接続。L-507ZとはLUXMANの最高級 フラッグシップアルティメットケーブル JPR-15000/1.3m(RCAケーブル)を使い、L-507ZのLINE1に接続しました。

▼システム
ミュージックPC(音源)AIRBOW - MBN-N54LTD MK2(ノート型ミュージックPC)
D/AコンバーターAIRBOW - HD-DAC1 Special(USB接続 / RCA端子接続にて使用)
RCAケーブルLUXMAN - JPR-15000/1.3m(RCAケーブル)
スピーカーFOCAL - Sopra No.2(フロアスタンド型)
B&W - 802D4(フロアスタンド型)

モニタースピーカーには、LUXMANが輸入代理業務を行っているフランスのオーディオブランド:FOCAL(フォーカル)Sopra No.2(フロアスタンド型)を使いました。さらに、B&Wの新型スピーカー 802D4(フロアスタンド型) とも接続して聴き比べました。

試聴テスト使用楽曲

試聴テスト本文

Luxman L-507Z ご紹介と試聴・空気録音(逸品館 リモート試聴会)

試聴テスト後の感想・総評

レポート  逸品館代表 清原 裕介
作成日時           2022年2月

LUXMAN - L-507Zを聴いてみて

逸品館の創業当時、私の大好きなアンプは LUXMAN - L-570 でした。当時の価格は35万円。それに比べL-595A Limitedはずいぶん立派な価格になったなと思います。

LUXMANのアンプの音質は、「暖かくて甘い」「音楽的」と言うのが定説です。しかし、案外モデルによって音が違います。L-595Aは、純A級のLUXMANアンプなのに、Accuphaseのようにちょっとクールな音です。真空管アンプも、初期のモデルほど「暖かみ」や「芳醇さ」は感じられず、やはり私にはクールに感じられます。
大阪発祥のメーカーだからこそ、LUXMANには出汁のきいた甘めの音がふさわしいと思うのですが、最近はどんどんその傾向が薄れてきて残念に思っていました。

しかし!

LIFESを搭載する、L-507Zは違います。AB級アンプですが、純A級のL-570を彷彿とさせる、暖かい人間味が感じられる音に大変身していて、とても感激しました。ただ、L-570と同じように「低域がやや緩い」弱点もあります。しかし、この後に聴いた M-10X は見事な低域を再現してくれたので、いずれプリメインアンプも M-10X のような、非の打ち所のない素晴らしい音に変わって行くのではないでしょうか?

とにかく!

LUXMANらしい音が帰ってきてくれたことに、心から喜びを感じました。

■補足 - L-507ZとM-10Xの聴き比べ

L-507Zよりも前に、そしてLUXMANで初めて LIFES を採用した M-10X(パワーアンプ)とL-507Zを聴き比べました。
まず、最初はDACを AIRBOW HD-DAC1 Special を使用し、音量固定出力をL-507Zに接続、音量可変出力をM-10Xにそれぞれ接続後、音源(HD-DAC1 Special)+スピーカー「Focal Sopra No.2」は変更せずに、アンプの音質のみを聴き比べました。
その後、音源を AIRBOW HD-DAC1 SpecialTAD - D1000TX(音量可変出力)に変更し、スピーカーも B&W 802D4 に変更した上で、M-10Xの「本気の音」を聴いてみました。

LUXMAN -

■逸品館リモート試聴会
LUXMAN - L-507Z / M-10X、Focal Sopra No.2 / B&W802D4 聴き比べ・空気録音