2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3」

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目次

テストレポート概要

逸品館YouTube情報チャンネルの再生回数からも分かりますが、逸品館が発信している情報の中でも人気が高いのが
「スピーカーの聴き比べ」です。そのご期待に沿うべく、手の届く価格帯「35万円(ペア)以下のスピーカー」を聴き比べることにしました。

▼ 2023年・おすすめスピーカー40機種聴き比べの「全体説明」

お客様と逸品館の利益を合わせて熟考し「40機種」を選出しました。
そして、それを次の「5つのグループ」に分けて聴き比べることにしました。


試聴機の準備状況などにより全ての聴き比べは実施できないかもしれませんが、ともかくできるだけやってみようと思います。

今回のメイン使用機材

こちらには、■ブックシェルフ型「その3:10万円~25万円(ペア)の高級機」で選んだ10機種の製品情報を掲載しました。

その他の使用機材

今回の聴き比べは、逸品館・3号館のメイン試聴室で行いました。
試聴環境、スピーカー以外の製品は下記の表をご確認ください。

▼システム
データーサーバーCHUWI - HeroBox N5100(AIRBOW - IDC-RMP12使用
ストリーマーVolumio - RivoAIRBOW - WFB-A4HD使用
アンプAIRBOW - HD-AMP1 Special(電源ケーブル: AET - TSD-HR/AC 1.8m使用
▼ケーブル・アクセサリー等
LANケーブルカテゴリー7 市販品(硬めの平型ケーブルがお薦め)
ノイズフィルターiFi audio - LAN iSilencer
USBケーブルaudioquest - USB2 DIAMOND
スピーカーケーブルAIRBOW - SPK-300
オーディオボード
(スピーカー用)
AIRBOW - WFB-4449-150
スタンドAIRBOW - STAND-G21

試聴テスト使用楽曲

試聴テスト本文

▼試聴概要と機種説明・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3」

今回は■ブックシェルフ型「その3:10万円~25万円(ペア)の高級機」で試聴する各スピーカーをご紹介しています。
前回までよりレポート内容を細分化し、それぞれの機種で「試聴動画(YouTube)」「楽曲別の評価」(上記のうち6曲分)の項目、最後にスピーカー別の「総評」という形で記載しました。

▼ JBL - L52 Classic 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の1」

JBL上級モデル譲りのチタン振動板を使うドーム型ツィーターにスタイリッシュな白いパルプコーンを組み合わせ、高域の連続可変ボリュームを搭載する、一目でJBLとわかるデザインのスピーカーです。外観や機能は歴史を継承しながら音質が大幅にリファインされていることが期待できます。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
水泡が弾ける音の高域、超高域のピチピチ音の抜けがやや悪く、音がスピーカーの中にこもる。
解像度はこの価格帯の標準にはあるが、表現がやや大雑把に感じられる。
音像の広がりは大きいが、スピーカーから前方に音が広がるタイプ。
初夏から夏に掛けての太陽が明るく差し込み、暖かく明るい雰囲気のせせらぎが聴けた。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音は良く出る。響きも良くグランドピアノは良い雰囲気で鳴る。
バイオリンの高音は4312M2とは比較にならない程良く伸びて音も細かい。
ピアノとの分離も良く、この音なら楽器の数が少ないクラシックなら問題なく聴けるだろう。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
弦楽器の輪郭や倍音構造のディティールはややあやふやだが、ハーモニーの分離は悪くない。
チタンドームの影響なのだろうか、弦楽器の高音の金気が僅かに強い。
フロントバスレフポートから出る低音にほんの少しそれとわかる膨らみと遅れがあるが、音場は大きく広がる。
ホールのサイズ感が伝わるほど音場は大きく広がるが、緻密さはそれほどではない。
明るく楽しいアメリカンなサウンドでバッハ・コンチェルトが鳴った。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
バグパイプの響きが長く聴こえ、色彩感も美しい。
音場の展開に問題があった4312M2とはまったく別物で、3Dに大きく音場が展開する。
重低音の量感も十分に再現されるが、特定の周波数帯でバスレフポートから出る音が少し濁ごる。
ボーカルは明るくチャーミングで魅力的。
この曲の持つ「鎮魂」という静かで深いテーマの表現は苦手だが、明るくカジュアルなこの音調も魅力的だ。
■試聴楽曲
「Stranger」
小型チタンドーム振動板の威力なのだろう、金属楽器のがけ気温の立ち上がりが鋭く早いにもかかわらず、指打ちのおとはは金属的にならず人間の肌の味わいが伝わる。
低音は良く出るが、この曲ではバスレフの濁りは感じない。
明るくカジュアルに聴こえるボーカルも魅力的だが、「年齢よりも若く」感じる。
哀しみの表現も、深みはない。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
この曲のテーマが「別れの哀しみ」だとすれば、それは再現されない。
遠い日の夢のような、あるいは哀しみのイリュージョンを見させられているようなイメージ。
このスピーカー独特の明るさ、アメリカ的な陽気さを強く感じる。
JBLのロゴマークに使われて色から名付けられた「オレンジサウンド」という言葉がピッタリな音だ。
▼ Sonus Faber - Lumina I<ルミナ I>試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の2」

イタリア家具のようにおしゃれで丁寧な仕上げ。サイズも小さくセカンドシステムにぴったりの製品。その外観だけでも部屋に置きたくなるような美しいスピーカーです。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
テキスタイルドーム型ツィーターならではの瑞々しく滑らかな高域と、天然パルプを使うウーファーの繋がりが良く、せせらぎの音場が見通しよく自然に大きく広がる。
水の音も鳥の声も自然で、有機的で命の息吹を感じさせる。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノは低音まで良く伸びてサイズの小ささをそれほど感じさせない。大口径29mmのツィーターの良さなのだろう、バイオリ音は中域が特に魅力的だ。
伴奏とピアノのマッチングも良く、この曲を十分に楽しめた。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
弦の分離は悪くないが低音がやや緩く響きが濁る。整った音で大きな癖もないが、突出した魅力もない。
やや細やかな表情の変化が出にくく、そういう意味では5万円を切る価格で購入できるDALI - OBERON1などの製品との音質差が感じられない。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
バグパイプの高音の抜け感はJBL - L52 Classicを上回っているが、響きの収束が早くエコーの消えるのが早い。
引き締まったクリアな音質だが、キャビネットの響きの制御とバスレフの制御が効き過ぎているのだろうが、響きの成分が少なく音場のスケール感に乏しい。
女性ボーカルも変化があまり出ず、一本調子に聴こえる。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属の音はJBL - L52 Classicがしっかりしていたのに対し、クリアで綺麗な音だが線がやや細いという印象がある。
振動の制御が効き過ぎて、楽器の響きが短く、女性ボーカルは乾いて感じられる。
無駄な響きが少ないが、潤いも少ない。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノの音は美しい。ギターとボーカルは少し線が細い。
表情の変化が小さく、広がりも出ないので、小さなスピーカーが鳴っているイメージが強くなる。
音の沈み込むも浅く、音楽が躍動しない。
▼ B&W - 607 S3 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の3」

S3シリーズのために新たに開発されたチタン振動板を使うドーム型ツィータを搭載。ウーファーには上級モデルと共通のシルバー振動板「コンティニゥム」が使われます。世界で高く評価されるその音質ははたして。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
水量が多い。鳥の声もバリエーションが豊富。
音の広がりや定位も正確でサイズを感じさせない実力を持つ
先に聴いた2モデルに比べて、明らかに「情報量」が多いことが聴き取れる。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音はしっかり出る。打鍵感の強弱もはっきりと伝わる。
バイオリンは、演奏者の体の動きが見えるようだ。
スケールが豊かで音楽の運動も大きい。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
高域の分解能が足りず、ハーモニーの分離がやや甘い。輪郭が少しぼやけている。
弦楽器の高音もやや金属的に聴こえる。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
バグパイプの高音の音抜け、輪郭のきりりとした音質はとても心地よい。響きはクリアで、音場はスピーカーの後方に大きく広がる。
低音もすごく良く出て、端正な整った音でこの曲が鳴った。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属のアタックの鋭さ、早さ、響きの濁りの少なさは素晴らしい。さすがエントリークラスでもB&Wだ。
ただ、指打ちの音とボーカルはやや硬く、楽器の音の細かな変化が再現されず、演奏の沈み込みがちいさい。
少し上っ面をなでているような音だ。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ヒアノは響きに濁りが少なく、とても美しい音で鳴る。
ギターは輪郭がクッキリして、弦に触れた瞬間、弦をリリースした瞬間の変化がよくわかる。
ボーカルはやや硬く、子音が強く、表情も深みが足りない。
スケールは大きくなるが、あまり悲しい感じが伝わらない。
▼ B&W - 606 S3 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の4」
■試聴楽曲
「せせらぎ」
607 S3と比べて音にゆとりと余裕が感じられる。水量が大きく、川幅も広くなった。
それ以外の評価は607 S3と変わらない。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ウーファーの口径が大きくなり、低音にさらなるの余裕が出たことでコンサートホールの響き(ホールトーン)が感じられるようになった。
バイオリンとピアノの音はとても正確で濁りも少ない。
ナチュラルでリアルなモニターサウンド。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
607 S3で不満に感じられた弦楽器の分離が向上し、ハーモニーの厚みも再現されるようになった。
高域がまだ僅かに硬く突っ張るように感じるが、演奏の動き、空間のスケールが大きくなり、生演奏のようなリアルな音場が再現された。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
607 S3に比べて音場の広がりが数割以上大きくなる。響きの濁りも少なく、リアルな3D空間が生み出される。
バグパイプの音は澄み切って美しく、高域も突き抜けるような鳴り方をする。
低音はかなり低いところから出て、ボーカルも透明で美しく魅力的。
正統派のモニターという鳴り方。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属の音の切れ味はよく、指打ちの音も力強い。
低音には厚みとエネルギーを感じる。
伴奏とボーカルの分離にも優れてるが、ボーカルはやや艶が足りない。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
耳に聴こえる音は純度も高く抜群に良いのだが、雰囲気があまり伝わってこない。
「別れ」というテーマの哀しみは浅く、別れの実感が伝わりにくい。
きれいに鳴っているが、情にはあまり訴えてこない客観的な音。
▼ Focal - Vestia No.1 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の5」

日本ではなかなかヒットに繋がらないFocalですが、海外ではB&Wと双璧のブランドです。そして日本でもカーオーディオの分野では、トップブランドとなっています。今回試聴するVestia No.1は、その構成も価格もB&W - 606 S3とまったく同一。イギリスとフランスの製品にはどのような違いがあるのでしょう。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
B&Wほど高域は伸びているように聴こえないが、中域に厚みがある。
空間表現の優秀さはB&Wと同等だが、Vestiaはより暖かい音質で流れも穏やかに感じられる。
小春日和の雰囲気。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの響きは色彩感が濃く、こってりしている。
バイオリンは弓の動きに「粘り」が出る。
ハーモニーの重厚さもまし、全体に温もりのある柔らかな雰囲気が醸し出される。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
ハーモニーの分離は優れているが、弦楽器の切れ込みはB&Wの方が鋭く鮮やかだった。
フロントにあるバスレフから出る音はほんの少しそれと聴き取れるが、ほとんど気になることはない。
中域にウエイトのある、厚みを感じさせる甘口なサウンド。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
バグパイプの音が響きの海を漂い、映像が可視化できるような鳴り方をする。
この独特な鳴り方は、Focalならではだ。
低音はB&W - 607 S3よりは出て、B&W - 606 S3ほどは出ない。丁度中間あたり。
女性ボーカルはB&Wよりも色気と説得力があり、伴奏の鳴り方も含め「サウンドトラック」として鳴らすそのまとまりが素晴らしい。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属の音はB&Wほど鋭くはないが、色彩が濃く魅力的に鳴る。トライアングルは叩く度に音質が違う感じがして、叩いている人の動きやリズムの変化が濃密に伝わる。指打ちの音もリアル。
低域は少し膨らむが、明るくカジュアルで女性的に鳴る。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノは響きの複雑さが良く出てグランドピアノらしいゴージャスな雰囲気。
哀しみの感じは少ないが、表現は深い。
過ぎ去った日々の哀しみを懐かしんでいる(憂いているのではない)ような雰囲気。
▼ QUAD - S-2 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の6」

今回聴き比べるスピーカーで唯一「リボン型ツィーター」を搭載するのがQUAD - S-2です。音が細かいという特徴を持つリボン型ツィーターですが、指向性が強く音場が平面的になりやすいという欠点を持ちます。一長一短あるこのツィーターをQUADは、どのように使いこなしたでしょう。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
リボンツィーターの長所が発揮され、今まで聴いたどのテキスタイルドーム型ツィーター搭載スピーカーよりも水量が多く、音も滑らかだ。リボンツィーターの短所である定位感も良くコントロールされ、スピーカーを結ぶ線上後方に音場は大きく広がる。ともかく情報量が多い事に驚かされた。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音はウーファーのサイズよりもずっと豊かに出て、165mm口径ウーファー搭載モデルとほとんど差がない。バイオリンは高域の抜けが素晴らしくアタックは鋭いが、音のエッジはきつくならない。ホールの響きも良く出て、生演奏を聴いているような雰囲気でこの曲を聴けた。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
せせらぎで感じた高域の素晴らしさがそのまま再現される感覚で、ハーモニーの分離は素晴らしくよい。弦の音は繊細さ抜群で、小さな変化もキチンと再現される。ソリストは表情が豊かで動きも大きい。全体的にとても精密な音だが動き(変化)も大きい。今回聴き比べたブックシェルフでもっとも高価だが、音質はそれを上回る。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
解像度は非常に高いが音の表情もそれに見合う細かさがある。高音の圧力感も再現される。
低音の量感は、ウーファーとキャビネットのサイズが大きいB&W606/S3を超えている。このサイズでこの低音はすごい。ボーカルはニュアンスの変化がとても細かく魅力的に聴こえる。とても良い音でこの曲を楽しめた。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属系打楽器の音は非常に美しく繊細だが線は細くなく、立ち上がりは早いがエッジがきつくなることもない。耳に心地よい高音だ。
指打ちの音もアタックが早く立ち上がり、無駄に響きすぎることなく収束するから、とてもシャープに聴こえる。
ボーカルはとても大人な雰囲気で、歌い手のため息までが伝わるよう。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ピアノの音に深みがある。ギターの音も生楽器のような正しい鳴り方をする。
伴奏、ボーカルなどすべての分離に優れるが、決して冷たくなることがなく暖かく有機的な雰囲気が醸し出される。
雰囲気は大人でとても深みがあるが、ボーカルは暗くならず優しく少し明るい。
自分の中で十分に消化できた過去の哀しみを慈しむように歌っているように聴こえた。
▼ Wharfedale - Denton 85 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の7」

165mm口径のウーファーを採用しながら、今回聴き比べるスピーカーの中で横幅が最も大きいのがこのモデルです。エッジの盛り上がったバッフル、ツィーターを覆う保護グリルなど現代的なスピーカーの設計から見れば、明らかに不利なレトロな外観を纏いながら、入力はバイワイヤリングに対相応するなど、新旧が入り交じっている所はJBL - L52 Classicにも似ています。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
リボン型ならではの素晴らしさに感動したQUAD S-2を超える情報量にまず驚かされる。
川幅は広く、水量は多く、空間は大きく広がるが、その空間の情報がとても多い。とても細かな音まで再生されている。
鳥の声もナチュラルで位置情報も正確。このスピーカーもとても良い音だ。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音はとても豊かで音が深く、バイオリンも大きく躍動する。
今まで聴いた中ではもっとも生演奏に近いリアルな音。
音場の広がりも理想的。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
QUAD - S-2の解像度も高かったがDenton 85は、その高い解像度を維持したままハーモニーの分離と重なりがより自然に感じられる。
メロディー、リズム、ハーモニーの再現が理想的で、演奏が大きく躍動しながら時が流れて行く。
間接音も良く再現されるが、直接音がやや強めなので、ホールの中央よりも前よりも座席で聴いている感覚で生っぽい。
実に立派な鳴りっぷりだ。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
美しく透明な響きの中をバグパイプの高音が舞いながら、天空に抜けて行く。
音質は細やかだが、それにも増して色彩感が豊かなので、HiFiでありながらHiFiを感じさせない。
低音は低く伸びやか。バスレフによる膨らみや遅れもない。部屋いっぱいに濁らずに広がる。
ボーカルは浸透力があり、伴奏と美しく混じり合いながら、静かに鎮魂の雰囲気を醸し出す。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属打楽器の音は僅かに細いが、濁りの無い美しい色彩感がそれを見事に補い、とても心地よい高音が再現される。
指打ちのタイミングがぴったりで、伴奏のリズム感グルーブ感は素晴らしい。
ボーカルも浸透力があって深い。雰囲気は明るくも暗くもなく、ニュートラル。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
楽器の音は美しい。Denton 85が再生するアコースティック楽器の音は抜群に良い。
ボーカルは男性らしい厚みがある。情の再現も非常に深く説得力があるが前に出すぎることがなく、適度な客観性を保っている。リアルな「ミュージック・モニター」の味わいだ。
▼ DALI - OPTICON2 MK2 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の8」

今回のブックシェルフ型聴き比べで、終始良い成績を収めているのがDALIです。その秘密は何と言っても「ウッドファイバーコーン」と「大口径テキスタイルドーム型ツィーター」から溢れてくるミュージカリティー(音楽的)なサウンドだと思います。心に染みる、心を癒やす、その暖かく深みのある音色旗メーカにはない良さを感じます。そのDALIの高級モデルの音質は、はたしてどのようなものでしょう。

■試聴楽曲
「せせらぎ」
川幅が広い。高域が少し強調された感じがあるが、DALIらしい澄み切った有機的な音でせせらぎが聴けた。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの音に深みと浸透力があり、バイオリンの音は太く甘い。
楽器の音が上質で深みがある。音源までの位置関係はやや近め。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
弦楽器の重なりは中音付近に少し濁りを感じる。弦(弓)の切り返しは鮮やかで演奏者の動きが見えるよう。
低音には箱の響きが少し混じって感じられるが、響きが豊かで広がりが大きい。リラックスできる音質。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
音場(響き)の広がりがとても大きく、バグパイプの高音も心地よい。
低音はスピーカーの後方に大きく広がり、大型スピーカーのような鳴りっぷりの良さが感じられる。
ボーカルも美しくニュアンスが深い。3D(立体的)で緻密な音。
今回聴き比べたDALIの中でも一段と「上質(上級)」という音。文句なしに良い音。
■試聴楽曲
「Stranger」
金属打楽器の音は、澄み切って美しい。低音は大きく広がるだけでなく、密度が高く力感もしっかり出る。
ボーカルは質が高くとても魅力的。情報量がすごく多く、上級J・上質な音で高音質のこの曲を堪能できた。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ボーカルが素晴らしい。玉置浩二の心のため息まで伝わるよう。静かで濁りも少ないが、良い意味でねっとりと粘り着くような雰囲気がある。
楽器の音もそれに劣らず素晴らしいが、決してボーカルの邪魔はしない。
OPTICON2 MK2は、ボーカルが特に素晴らしい。深く説得力が強いが、きちんと盛り上がる所は盛り上がる。
■試聴楽曲
「せせらぎ」
音場が大きく展開し水の音も細やかで、小型スピーカーを鳴らしているという印象がない。
高価格な分、中高域の細やかさは一歩抜きんでている。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音は不満なく出る。バイオリンは繊細で上質。
生演奏を聴いているような雰囲気。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
低音は少し足りないが、低音楽器の存在感はしっかり伝わる。
OPTICON2 MK2で感じた中音域の響きの濁りはMENUET SEでも感じられるから、それはたぶんソフトに起因するのだろう。弦楽器の切れ味の良さ、色彩感の多彩さが素晴らしいだけでなく、音の厚みもきちんと感じさせる。
小さいけれど、表現は決して小さくない。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
イントロは素晴らしく、小型にもかかわらずOPTICON2との差をあまり感じさせないスケール感が創出される。中高音はさらにクリア。
重低音はさすがに辛く、サイズを感じさせる。
高音は見通しが素晴らしく声も美しいが、この曲の再生では低音が明らかに足りず、サブウーファーが欲しくなる。
■試聴楽曲
「Stranger」
中高音はコストのかかったスピーカーだけあって、とても素晴らしい音質が実現する。指打ちの音など実にリアルだ。
低音楽器が入るまでのパートはほぼ完璧だが、やはり打ち込みの低音の再生はサイズの限界を感じさせる。
けれどNever An Absolutionほど重低音が入らないこの曲では、それほど大きな減点にはならない。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
雰囲気の創出が素晴らしい。特に色彩感の鮮やかさはとびっきりだ。
しかし低音はどうしてもサイズの限界を感じさせる。良い音だが、少し物足りない。
▼ AIRBOW - GHOST 2.1 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その3の10」

AIRBOWは逸品館のオリジナルブランドです。企業ほどの技術力も開発力もないそんなちっぽけなブランドのスピーカーは、名だたるブランドのスピーカーとの聴き比べに応えることが出来たのでしょうか?

■試聴楽曲
「せせらぎ」
音場が非常に大きく広がり、川場場が大きく水量も多い。
DALIほど研ぎ澄まされてはいないが、細やかで有機的な雰囲気は同等だ。
暖かくリラックスできる音質でせせらぎが鳴る。
■試聴楽曲
「愛の挨拶」
ピアノの低音は優秀。音量音圧、広がり共に良い。
音場空間はDALIほど透明ではないが、楽器の音はとても細やかに変化する。
豊かで厚みある音。
■試聴楽曲
「バッハ・コンチェルト」
今回聴き比べたブックシェルフ型では、もっとも低音が豊かでハーモニーにしっかりした厚みがある。
弦は適度にほぐれて心地よい響きが生み出される。
高域はDALIほどには伸びないが、中域から高域に掛けての響きの良さ重厚感が魅力的。全体的に音の密度感が高い。
■試聴楽曲
「Never An Absolution」
無垢木材を使うキャビネットの響きが上手くいかされて、リアルに楽器が響いているような鳴り方をする。
イントロは音が細かく音場が大きく広がる。音調はやや明るく耳あたりが良い。
打ち込みの低音は、出過ぎるくらい出る。OPTICON2よりも良く出て、密度も高く重厚だ。
ボーカルは明るく響きよく、ロマンティックで心地よい音だ。
■試聴楽曲
「Stranger」
イントロの金属打楽器の音に「動き」が感じられる。高音の伸びはDALIに負けるが、中音域の厚みはそれを大きく凌ぐ。
指打ちの音は歯切れ良く強いが、ボーカルは優しい。
この曲でも低音はやや過剰なほど良く出る。音量を絞っても低音が痩せないのが良い。
■試聴楽曲
「夏の終わりのハーモニー」
ボーカルがリラックスして歌っている雰囲気で、暖かく柔和な表情が心地よい。
高音の切れ込みと透明感はやはりDALIには譲るが、有低音の量感と厚みはそれを圧倒する。
まるでサブウーファーを使っているようだ。

試聴テスト後の感想・総評

▼ 聴き比べ後の総評(スピーカー別
■JBL - L52 Classic伝統的なデザインを纏うこのクラスのJBLといえば、3Wayの4312M2が代表的なモデルだった。L52 Classicはそれに代わる製品として開発され、チタンドーム型ツィーター、ペーパーコーンウーファー、高域連続可変アッテネーターを継承するが、方式は2Wayに格下げされた。しかし、あの価格とサイズに3Way構成を詰め込んだ結果、音質が犠牲になった「癖の強い音」だった4312M2にに対し、L52 Classicは大幅に音質が改善されていた。超高域が若干伸び足りないというJBL全般に通じる傾向はあるものの低音は驚くほど豊かになっているし、細かな音の分離も大幅に向上している。結果としてクラシックも楽しめる製品になっていた。
音調はカリフォルニアの陽気さを連想させるように明るく、渋い音が好きな人には向かない。カジュアルの音楽を楽しむ、若い人向きの音。
■Sonus Faber - Lumina I<ルミナ I>Lumina I<ルミナ ワン>は、非常に美しいスピーカーだ。キャビネットに張られたレザー、合板を7枚貼り合わせたフロントバッフルなど、ワンランク、ツーランク上級の美しさを持つ。しかし、その音質は外観から想像されるほどではなく、このクラスの平均に留まる。下位モデルであればDALI - OBERON1などと比較しても「Lumina Iでなければ」という魅力には達していない。その理由の多くは、制振が過ぎたキャビネット設計にある。大型スピーカーならともかく、小型スピーカーはある程度の「響き」が必要だと私は思うが、Lumina Iは響きが少ないため音楽の表現や音場のスケール感に「サービス」が足りない。ストレートでピュアな音だが、それ以上ではないと感じた。
評論家や雑誌社の評価の高さが疑わしいと感じるほど、ブックシェルフ型の中では今ひとつ精彩を欠いた。しかし、フロア型のLumina3は、フロア型の中でもトップクラスに素晴らしかった。1と3は、まるで違うメーカーの製品のようだった。
■B&W - 607S3次項にてB&W - 606S3とまとめて評価。
■B&W - 606S3S2シリーズでは「アルミ」だったツィーターの振動板が「チタン」に変更された。
実際に振動板にするときには「厚み」が関係するから一概に比較は出来ないが、チタンはアルミに比べて比重が5割以上高いが強度は3倍高い。
この金属としての性質の違いが「S2とS3」の音質差を生み出していると思われる。
S3はS2よりも澄み切った音で濁りが少なく「音の純度は高い」というイメージを持つ。
606/607/S3は澄み切ったサウンドだが、情がやや薄い。「暖かさ・柔らかさ」という部分では、アルミが優れていたようにも思われる。
ただ、S3の発売時期を考えると、もっと鳴らし込めばS2を超える音質のまま、表情の豊かさが再現されるようになるかも知れない。今回の試聴機は、まだ「鳴らし込み(エイジング)」が足りなかった可能性がある。
※後のテストで今回の個体はエージング不足だと判明したが、判断した音質の傾向は大きく違っていなかった。
■FOCAL - Vestia No1バターとクリームが多用され、こってりした味わいを持つのがフランス料理。そういう「出汁」をあまり効かせず、塩味だけでさっぱりとした味わいを出すのがイギリス料理。それが正しいかどうかはわからないが、FocalとB&Wを比べるとまさしくそれが当てはまる。
やや「理」が強く、何も足さず何も惹かない律儀なモニターサウンドがB&W - 606 S3/607 S3なら、Vestia No.1は明らかに「情」が深い。
その分濁りはB&Wよりも若干多いが、その濁り成分がFocalらしい「濃さ」を生み出している。
B&WとFocalは悩むことなく「好み」で選べそうに感じた。
■QUAD - S-2私はリボンツィーターがあまり好みではない。音場が横一列に平面的であったり、振動板の材質の音が強く出ることが多いからだが、S-2にはそのネガティブな部分が一切感じられない。逆にリボン型の特徴である繊細さや分離の良さ、滑らかさに好感を持てる。スタックスのイヤースピーカーに近い感覚だ。
低音はウーファーとキャビネットのサイズが一回り大きいB&W - 606 S3を超えるほどでたのには驚いた。価格は少し高いが、音質はそれを補ってあまりある。これは「すごく良い」スピーカーだ。
■Wharfedale - Denton85外観からは、ただ古いスピーカーを復刻しただけのように感じられるが、実際に聞くとその音は想像を超えて素晴らしかった。レトロな外観からは想像できない、現代的で良くコントロールされた細やかな音質。
すべての音が10万円以下の製品を大きく超え、目の前で演奏が行われているような「高品位」なサウンドに驚いた。
アナログ時代に作られた、アコースティックな音楽との相性は最高。
■DALI - OPTICON2 MK2外観からうかがえる使用ユニットなどは、下級モデルと大差ない容易に思えるOPTICON2 MK2だが、鳴らして見ると「格の違い」を感じさせた。
すべての音が一段と細かく、表情が細やかで、濁りも少ない。
大きく豊かに広がる低音の中に、楽器やボーカルの音が綺麗に定位する。
さすが上級モデルという鳴り方に舌を巻かされた。
■DALI - MENUET SE外観の美しさを裏切らない、中高音の透明感と質の高さが実現している。
しかし低音、特に打ち込み(電気楽器)の低音~重低音ではサイズの限界が感じられる。
MENUET SEは比較的スピーカーに近接して聴くような環境、デスクトップモニター的な使い方がベストに感じた。
8畳よりも大きな部屋で十分に鳴らそうと思うのなら、POLK PSW10のような優秀なサブウーファーとの組み合わせが必須だ。そうすることで、さらに効果で大型のフロア型スピーカーを確実に上回る素晴らしい音質が実現するだろう。
■AIRBOW - GHOST 2.1GHOST 2.1の最大の特徴は「無垢の木材」を使う豪華なキャビネットにある。中低音の量感と重厚感は他に類がないが、それは強度と密度が高い無垢材の響きが生きているからだろう。とにかく中低音の量感と重厚感は、他のスピーカーを圧倒する。
中高域の鮮度感と透明感はDALIに譲るが、滑らかさやナチュラルさは十分で、なによりも有機的な鳴り方が心地よい。
少なくとも「AIRBOW」というマイナーなメーカーが作ったスピーカーという感覚はなく、大手メーカーの製品と互角以上の音質が実現することは確認できた。
これ以上を望むなら、AIRBOWの飛び道具「波動ツィーター」を組み合わせればよい。その音質は価格の数倍のスピーカーに匹敵するほど素晴らしいものになる。

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