2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1」

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目次

テストレポート概要

逸品館YouTube情報チャンネルの再生回数からもわかりますが、逸品館が発信している情報の中でも人気が高いのが「スピーカーの聴き比べ」です。そのご期待に沿うべく、手の届く価格帯「35万円(ペア)以下のスピーカー」を聴き比べることにしました。

▼ 2023年・おすすめスピーカー40機種聴き比べの「全体説明」

お客様と逸品館の利益を合わせて熟考し「40機種」を選出しました。
そして、それを次の「5つのグループ」に分けて聴き比べることにしました。


試聴機の準備状況などにより全ての聴き比べは実施できないかもしれませんが、ともかくできるだけやってみようと思います。

今回のメイン使用機材

こちらには、■ブックシェルフ型「その1:ウーファー口径135mm以下、10万円以内」で選んだ8機種の製品情報を掲載しました。

その他の使用機材

今回の聴き比べは、逸品館・3号館のメイン試聴室で行いました。
試聴環境、スピーカー以外の製品は下記の表をご確認ください。

▼システム
データーサーバーCHUWI - HeroBox N5100(AIRBOW - IDC-RMP12使用
ストリーマーVolumio - RivoAIRBOW - WFB-A4HD使用
アンプAIRBOW - HD-AMP1 Special(電源ケーブル: AET - TSD-HR/AC 1.8m使用
▼ケーブル・アクセサリー等
LANケーブルカテゴリー7 市販品(硬めの平型ケーブルがお薦め)
ノイズフィルターiFi audio - LAN iSilencer
USBケーブルaudioquest - USB2 DIAMOND
スピーカーケーブルAIRBOW - SPK-300
オーディオボード
(スピーカー用)
AIRBOW - WFB-4449-150
スタンドAIRBOW - STAND-G21

試聴テスト使用楽曲

試聴テスト本文

▼ 試聴概要と機種説明・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1」

まずは■ブックシェルフ型「その1:ウーファー口径135mm以下、10万円以内」で試聴する各スピーカーをご紹介しました。
以下、それぞれの機種ごとに「試聴動画(YouTube)」「評価:インストゥルメンタル/ボーカル」「総評」の項目に分けて記載しています。


▼ Polk audio - Monitor XT15(MXT15)試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の1」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎでは、とても自然な音質と理想的な立体感が生み出されす。音場はリスニングポジションの後方にまで音場が大きく広がり、とてもこんなに安くて小さいスピーカーが鳴っているとは思えない。
愛の挨拶では、まず伴奏のピアノの低音の豊かさに驚いた。こんなに小さなスピーカーから出てくる低音ではないし、低音がリスニングポジションの後ろ側にまで回り込むことにさらに驚いた。バイオリンの音は僅かにチープに感じられるが、それでも価格を考えれば望外によい音質だ。
コンチェルトでは、弦楽器のハーモニーの響きが透明で、重なる部分が綺麗に分離しながら美しいハーモニーを聴かせてくれた。
低音も豊かに再現され、音場も大きく広がり、演奏の運動(躍動感)も大きく、演奏が自然に楽しめる。
評価:ボーカル
Strangerでは、イントロのウインドベルの厚みが足りず、薄っぺらい金属を叩いているような感触になるが、その部分を除いては、ボーカルと伴奏の分離の良さ、ボーカルの質感の高さ、表情のデリケートな表現力は価格を大きく超える水準にあると感じる。
The Water is Wideでは、楽器の入るタイミングと伴奏とボーカルの音量が適切で、演奏にすっと入っていける音で聴かせてくれる。
夏の終わりのハーモニーは、玉置浩二がこの歌で表現したいところが、そのままストレートに再現されるように感じられる。若すぎず、老いすぎない、どんぴしゃりの年齢感で淡々と鳴るが、そこに深みがある。とても聴き応えのある音だった。
総評
「聴いてびっくり、聴かずに後悔

一聴してこの価格とは思えないほどの音の細かさに驚かされる。
キャビネットが小さいことが奏功して、余計な付帯音がほとんどなく、透明感が驚くほど高く、音の濁りが少なことも、細かい音まではっきりと聴こえる大きな助けになっている。
適合する音楽ジャンルは、アコースティックな音楽。それも「名演奏」の深みを引き出す能力に長けている。
総じて、こんなに小さく安いスピーカーが鳴っているとは、信じられないほど素晴らしい音質が得られたが、唯一の問題点は、スピーカーの安さ故に「安いアンプ」と組み合わされ「実力を発揮しきれない」ことだろう。「宝の持ち腐れ」にならないように、良いアンプと組み合わせてしっかりと鳴らして欲しいスピーカーだ。
▼ Polk audio - ES15試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の2」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎでは、水量が増え川幅が大きくなったように感じられるが、バッフル反射の影響で音場がやや前方に押し出され、MXT15に比べて「音源までの位置が近くに」感じられる。音場は、MXT15同様リスナー後方にも大きく広がった。
愛の挨拶では、キャビネットサイズの違いでピアノの低音により厚みが出た。バイオリンの抜け感や高域の繊細さも、ツィーターのグレードアップにより向上した。
コンチェルトでは、キャビネットが大きくなった分中低音の厚みが増すが、キャビネットが作る低音の響きが邪魔をしてハーモニーにはやや濁りが出た。
音量を変えていないが音圧が大きくなったように感じられるのは、バッフルからの反射の効果だろう。音を前に押し出す力があるので、エネルギー感はMXT-15よりも強いようだ。
評価:ボーカル
Strangerでは、打ち込みの電気楽器の低音がグンと豊かになった。ボーカルもきめ細かくよりデリケートな音になる。指打ちの音も力強く前に出てくる。MXT15よりも音を前に押し出す力が強く、演奏がより濃密に感じられた。
The Water is Wideでは、ギター低音やバンドネオンの漂うような広がりが向上して演奏がより大きく広がるようになる。また、MXT15での「張り詰めた雰囲気」が緩和されて、演奏がより身近でカジュアルなものとして感じられるように変化した。
夏の終わりのハーモニーでは、ボーカルがやや若くなり、MXT15で感じられた「渋さ」がやや薄れた。悪い言い方をすると少し音が「チャラい」感じだが、バッフル反射の押し出し効果で「歌手が耳元で歌っている」ような近接感が強くなる。一般的にはわかりやすいこういう音の方が好まれるかも知れない。
総評
「どんな音でも魅力的」

スピーカーの位置がまったくわからないように、見事に空間に溶け込んだMXT15と比べるとES15は「スピーカーの存在感」をしっかりと主張する。
アキュレートでシャープなMXT15は、さながら良く出来た原音モニターのような鳴り方をする。例えるならば、B&Wと同じ方向性だ。
ES15は、それ比べてウォーミーでカジュアルな鳴り方をする。演奏そのものの楽しさを引き出せるTANNOYと同じような方向性を感じさせる。
装置やソースの粗を出さず、誰がどのように使っても良い音を聴かせてくれるだろう。
ジャンルは、一般的な歌謡曲。誰もが一番良く聴く音楽全般に向いていると思われる。

▼ DALI - SPEKTOR1 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の3」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎでは、DALIがこだわる「ウッドファイバー・コーン」を振動板に使うウーファーの効果なのだろう、Polk Audioよりも一段と「有機的」な暖かい音を聴かせてくれる。
ツィーターとウーファーの繋がりも自然で、音場の立体感も抜群。こんなに小さなスピーカーなのにゆったりとリラックスできる音が出てきて驚かされる。
愛の挨拶では、グランドピアノの低音がMXT15に負けないくらいしっかり出てきたことにて驚いた。最近の小型スピーカーは全般的に低音が良く出るようになってきているが、それにしてもこれだけ低音が出るのには驚かされる。バイオリンの音はツィーターの口径が小さい影響か、Polk Audioの2モデルに比べてややピーキーな印象がある。
コンチェルトでは、少し音圧が低く感じられるが、弦楽器の「木の響き」はPolk Audioよりも美しい。ハーモニーの透明感も高い。
評価:ボーカル
Strangerでは、やはりツィーターの口径が19mmと小さいからだろうか、金属打楽器の厚みがやや不足気味だ。しかし、ボーカルは暖かく心に響く。この音はウッドファイバーならではの音だと思える。
The Water is Wideでは、ギターの響きと鳴りが味わい深い。ギターの金属弦の鋭さと、胴の木質的な響きのバランスが素晴らしい。あまりにも自然な音なので演奏に聴き入ってしまった。
夏の終わりのハーモニーは、同様に演奏に耳が奪われ、音の印象がほとんど残っていないが、これは良いことだ。
総評
「一番小さい、でも音はすごい」

SPEKTOR1は、ウーファーサイズ135mm以下、価格10万円(ペア)以下、という括りで選び出した「8モデル」の中で唯一口径115mmの一回り小さなウーファーを採用している。キャビネットのサイズも一番小さい。そんなSPEKTOR1の音は、ウッドファイバーという特別な素材を使うウーファーの音がその魅力のほとんどを占める。ツィーターは、それを邪魔しないように控えめに鳴る。さながら良く出来たフルレンジスピーカーのように暖かみがあって、体と心をリラックスさせてくれるそんな音が、こんなに小さなスピーカーから出てくるのが素晴らしい。
スピーカーのサイズは可能な限り小さく、しかし音楽表現は大型のスピーカーに負けない、SPEKTOR1にはそんな思いが込められているのだろう。だからこそコスト的には良い方法とは言えないのに、わざわざこのモデルのためだけに115mmサイズのウーファーと口径21mmの専用ツィーターを採用したのだろう。
これは音楽ファン向きのスピーカーだ。交響曲も鳴るが、このスピーカーで聴く室内楽は一層素晴らしい。
昨年末にDALIフラッグシップモデル「KORE」を聴いたからこそ、SPEKTOR1の良さを再認識できたように思う。色彩感の再現性が素晴らしいこのスピーカーは、良く出来た小型真空管アンプと組み合わせてみたい。
▼ DALI - SPEKTOR2 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の4」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎの音が出た瞬間、SPEKTOR1との「格の違い」を感じさせられた。ツィーターとウーファーの口径を大きくしただけで、こんなに豊かな音が出るのだ。
水量は多く、流れはゆったりと豊かに感じられる。鳥の声の表情も一段と細やかだ。それぞれの音の色彩もより鮮やかになっている。目の前にせせらぎが出現した。
愛の挨拶でもせせらぎと印象はほとんど変わらない。SPEKTOR1でやや不満に感じたバイオリンの音の細さも見事に解消している。なによりも「木質的な響きの再現」が素晴らしい。KOREに通じるこの暖かく自然な再現力こそDALIがこだわる「ウッドファイバー・コーン」の音なのだろう。
コンチェルトでは、弦楽器の響きの良さ、ホールの響きの良さが伝わってくる。演奏の運動(躍動感)も一段と大きくなる。このスピーカーは、音ではなく演奏を聴かせてくれる。
評価:ボーカル
Strangerでは、指打ちの音とボーカルの「暖かさ(温度感)」がPolk audioよりも優れていて、演奏に心が引きつけられる魅力的な音が出た。
The Water is Wideは、アンプまで含めてフルデジタルシステムで鳴らしているとは思えない暖かく有機的な音に、学生時代この曲をレコードやカセットテープで聴いていた時を思い出した。
夏の終わりのハーモニーは、演奏の向こう側の情景が見えるような深みと含みのある鳴り方をする。ボーカルは8本のスピーカーの中で一番魅力的だった。
総評
「ウッドファイバー・コーンの魅力極まれり」

今回聴き比べたスピーカーの中で私は、このSPEKTOR2に一番惹かれる。それは、私が聴きたいと思う1960-1980年時代の音楽に一番良く合うからだろう。
SPEKTOR2のサウンド・テイストは、デジタルが世に出る前、アナログ全盛期の音楽に実に良くマッチする。
第2次世界大戦が終わり、北国に訪れる「春」のように音楽シーンが一気に花開いたJazzやクラシックを聴く時。サザン・オールスターズや中島みゆき、八神純子など日本を代表するポップスシンガーの多くを輩出した、ヤマハ ポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)が行われていた頃の日本のポップス。
音楽が一番輝いていた時代の良さをSPEKTOR2は引き出してくれる。アコースティックな音楽にフォーカスした本物志向のスピーカーだ。

▼ Wharfedale - Diamond220 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の5」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎは、高音の明瞭度が高く細かな音まではっきり聴こえる。低音はバスレフ型のように広がらないが、濁りが少ない。左右のスピーカーを結ぶ線よりもやや前方に音場が広がる。
愛の挨拶は、ピアノの低音の出方が独特で遅れが少ない。バイオリンは、細やかなボーレートや左手の操作まで見えるほど明瞭に鳴る。
コンチェルトは、高域は少し繊細さと透明感が不足気味で弦楽器の分離が少し悪いが、低音の遅れが少なくこの曲をリズミカルに表現する。
評価:ボーカル
Strangerはショートホーン形状の「ツィーターリング?」の威力だろう、金属打楽器や指打ちの音はアタックが明快だ。ボーカルは少し存在感が控えめだが、電子楽器の音は際立っている。
The Water is Wideに特に強い印象はないが、独特な低音ポートの効果で低音の遅れが少なく、音場の濁りも少なかった。
夏の終わりのハーモニーは、やはり低音の遅れが少なく正確な音が出る。ホーン効果でボーカルがとても近く感じられる。
総評
「周りの影響を受けにくいから、使いやすい」

特殊な低音ポートを備えるDIAMOND220の低音は、バスレフ型ほど量は多くないが密閉型よりは良く伸びる。
一見小形同軸2Wayユニットのようなプラスティック成形のツィーター外枠は、ショートホーンの役割を持つはずだ。
背後にバスレフの開口部がなく、ホーン形状のツィーターにより音が前に押し出されるため、DIAMOND220はスピーカー背後の壁の影響を受けにくいだろう。
バイワイヤリングに対応するDIAMOND220は、シングルワイヤリングで繋ぐときは接続が4通り選べ、さらにジャンパー線の交換もできる。
今回は、純正の金色ショート用プレートとスピーカーケーブルの端切れを交換し聞いたが、中高域の透明感や細やかさ、色彩の鮮やかさが簡単に向上した。
▼ Wharfedale - DIAMOND 12.1 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の6」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎは、低域~中高域までバランス良く整った音で鳴るが、直前に聴いた「DALI」2モデルの濃い色彩感の記憶に引っ張られていることもあるのだろう色彩感のみやや薄く感じられた。
愛の挨拶では、通常のバスレフポートを採用するDIAMOND12.1の方がDIAMOND220に比べ低音がより豊かだ。他のバスレフ型スピーカーと同じようにリスニングポジションの背後まで体を包み込むように低音が広がる。バイオリンの音は、せせらぎの評価と同じように色彩がやや薄く感じられた。
コンチェルトでは、弦楽器の分離に少し濁りが感じられるが、音の細やかさや再生周波数帯域は十分に確保できている。価格が高いからだろうか、ツィーターの音は220よりも明らかに良い。
評価:ボーカル
Strangerでは、DIAMOND220同様に電子楽器の再現性に優れているのが印象的で特に低音の量感は素晴らしい。音の分離も悪くない。
The Water is Wideでは、ギターがやや乱雑に演奏されているように感じられることがあったが、解像度は高くレンジは広い。
夏の終わりのハーモニーも前に聴いた2曲と同様の印象だ。
総評
「小さなボディーにつまった工夫。こだわり派のあなたのために」

Wharfedaleは昔からコスパに優れるスピーカーを作ることが得意なブランドだ。DIAMOND12.1にもマイカを混入した振動板を採用し、共振に強いキャビネットを使うなど、様々な高音質化技術が使われる。
試聴は付属のジャンパー・プレートをスピーカーケーブルの端切れに変えて行ったが、聴き比べ「その2」でより詳細にチェックを行った結果、この時の接続「プラス=高域、マイナス=低域」だと音のバランスが良くないことがわかった。正しい接続は「プラスもマイナスも高域」で、そうすることにより「音場の濁りの解消」、「楽器から音が出るタイミングの整合」が格段に良くなった。
それまでは圧倒的にコストパフォーマンスの高いスピーカーとしてお薦めしていたWharfedaleだが、Polk AudioやKlipschなどのライバルが登場した今、Wharfedaleでなければ!というポイントは少なくなったように思われる。しかし、DIAMONDシリーズには、Wharfedaleが考える「より良い音を実現するための様々な技術や材料」が惜しみなく使われ、この価格帯でもバイワイヤリングに対応するなど独自の魅力も少なくない。
今回聴き比べた8モデルの中では、音質以外にも「多様な使いこなしが出来る」ところなどが魅力的に感じられた。
▼ Klipsch - R-50M 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の7」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎは、まずホーンの悪影響をまったく感じさせない音の広がりに驚かされた。
ホーン特有の「押し出し感」が、ドーム型ツィーター搭載モデルに比べ水面を一歩近くに感じさせる。水の粒子一つ一つが見えるような「音の粒子をレンズでクローズアップしている」ような鳴り方だ。鳥の声もクッキリしている。
愛の挨拶は、ホーンの威力で中高音はとてもクッキリと聴こえるが、低音は少し膨らみやや遅れ気味に聴こえる。そういう鳴り方がTANNOYとの類似性を感じさせる。
他のテキスタイルドーム型のスピーカーに比べ、アルミ振動板が少し重いからだろうか、本当に細かな音は少し聴こえにくいように感じられる。コンチェルトも同じ印象で弦の擦過音など「耳に聴こえる音」は明瞭だが、「聴こえるか聴こえないかの僅かな音の変化」は僅かに聴き取り辛い。
低音はホーンの早さに遅れず、弦楽器の分離や音場の立体感広がりに問題を感じさせないのはさすがホーンを作り慣れているKlipschならではと感心させられた。
評価:ボーカル
Strangerでは金属や指打ちのアタックの明瞭さに「ホーン型ならではの魅力」を感じさせる。音を前に押し出す力、エネルギー感が強いのだ。
The Water is Wideでは、ギターの弦をリリースする瞬間の指と弦の動きがよくわかる。ボーカルはもう少し細かく魅力的に鳴るかと思ったが、期待したほどドーム型のスピーカーと変わらなかった。
夏の終わりのハーモニーは、音源までの距離が近く歌手が耳元で歌っているような感じが強い。明瞭度が高いこのスピーカーは、小音量でより大きな魅力を発揮するに違いない。
総評
「Rockが好きなあなたのための"ホーン型"」

Klipsh R-50Mの魅力は「ホーン」に極まる。はっきりと明快な音が心地よい。さらにトラクトリクス形状が採用されたホーンの効果でホーンのネガがほとんど感じられないのも特筆すべきだ。
一般的なドーム型ツィーターを搭載するスピーカーと同じような使い勝手でも指向性が広く、多くのホーン型スピーカーだと片方のスピーカーしか鳴っていないように聴こえるケース、左右のスピーカーに近い位置でも音像は左右のスピーカーを結ぶ中心に再現されるのは立派。
今回試聴に選んだ6曲では「ホーンの魅力を確認しにくい」と考え、番外としてRock(Slide It In)を鳴らしたが、とても魅力的な音で鳴った。Rockや野外ライブはもちろん、音質の悪いソースをもR-50Mは楽しく鳴らしてくれるだろう。
▼Klipsch - RP-500M-2 試聴・2023年 逸品館おすすめスピーカー40機種聴き比べ「その1の8」
評価:インストゥルメンタル
せせらぎでは、圧倒的な水量に驚かされる。リアリティーも高く、目を閉じれば目の前に川が流れているように感じるほどだ。
愛の挨拶ではセラミック振動板の効果だろう、低音の質感が高くなったことで、生演奏を聴いている雰囲気がより強くなる。ピアノも低音の重厚感が増し、バイオリンの高音にそれらしい張りや芯の強さが出る。クラシックを聴いてもホーン型には、独特な魅力がある。
コンチェルトでも弦楽器のアタックの再現性に優れ、「弦楽器の圧力」がきちんと伝わってきた。これは音のエネルギーが拡散するドーム型ツィーターでは感じられにくい部分だ。ハーモニーにやや濁り出たR-50Mに比べ、ホーンの共振がキチンと抑えられたRP-500M2ではそれがはるかに少ない。低音も大きく開けられたホーン形状のバスレフポートの効果で膨らみや遅れが少なく、魅力的にこの曲を鳴らす。
評価:ボーカル
Strangerでも金属が打ち付けられる音がとても生々しく聴こえるし、ボーカルは伴奏からすっと抜けて好ましい。それはアタックの再現性に優れるホーンだからだろう。伴奏の電子楽器の音は、8モデル中トップだ。
The Water is Wideは、ライブを聴いているように自然な鳴り方をする。演奏に聴き入っていると感想を忘れてしまった。
夏の終わりのハーモニーは、イヤホンやヘッドホンで聴いているかのようにボーカルが近接して聴こえるのが印象的だ。ホーンの早い音速に低音が遅れないようにするためのこの広い開口部なのだろう。その独特のポート形状の効果で低音の遅れが少ないが、逆に密度感(低音の塊感)はやや薄いように感じられた。
RP-500M2は、ウッドファイバー・コーンを使う「DALI」ほど色彩は濃くないが、輪郭がきちんと再現され明瞭度の高い音を出す「ホーンらしい音」にそれとは違う魅力が感じられた。
総評
「得意なのはRockだけじゃない、ホーンの魅力」

R-50Mに比べ価格がほぼ2倍のこのスピーカーは、Klipschが「こうあるべき」と考えるホーン型スピーカーの理想像により近い。基本的な音質の特徴はR-50Mと同じだが、それが適合する音楽の範囲が一段と大きくなっている。

試聴テスト後の感想・総評

Polk audioは、汎用性が広く誰が何を聴いても良い音と感じられる音質。
DALI - SPEKTORは、スローなJazzや本格的なクラシックを「これでなければ」という音で鳴らす。
Wharfedaleは、オーディオ・ファンの期待を裏切らない高い性能を持つ。
Klipschはアメリカンな「やる気」のある音楽を、実に力強く楽しく鳴らす。

4つのメーカーのスピーカーはどれを購入しても後悔のない音が出ることは間違いがないが、それぞれに違う味わいを持つから、選択はそれほど難しいとは思わない。ただし、価格の安さを侮ってスピーカーを鳴らすためのプレーヤーとアンプにしっかりとお金を掛けなければ、その本質を引き出すことは出来ないだろう。
今回使ったAIRBOW - HD-AMP1 Specialのようなアンプを奢ってあげれば、どのスピーカーもきっとあなたの想像をはるかに超える素晴らしい音で音楽を奏でてくれることに間違いはない。

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